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しおりを挟む「なぜ、カール様が我が家に!?……もしや、タルコット公爵家で私は何か粗相を!? やはりあの高級なシルクのネグリジェですか!? いま、お父様に相談しますのでお待ちいただけますか?」
一週間後。
すっかり回復したアルヤの元にカールがたずねてきた。
カールはタルコット公爵家の護衛だ。
カールが公爵家の偉い人の護衛なのは知っていたが、それがマイナ・タルコット公爵夫人だとは知らなかった。
家名を知ったとき、卒倒しそうになった。
「待って! なんでそうなるの!? 昨日、アルヤさんが会いたいって言ってるって連絡もらったから、デートのお誘いだと思ってウキウキしながら来たのにー!!」
「私が会いたいと言ったのは次の婚約者候補の方ですが……」
「だからそれ、僕だって」
「なぜ?」
「なぜ!? え、そこから!? コレッティ子爵からは何も聞いていないの!?」
「はい……お祖父様とお父様からは何も……」
次はいい男だから安心しろとしか言われなかった。
家名すら聞き忘れていたことに気付き、アルヤはコレッティ子爵家の粗忽さに眩暈がした。
(お祖父様のことを猪突猛進とか言って、私もじゃない……)
「アルヤさん、やっぱり視力よかったんだね」
考え込むアルヤの顔を見つめながら、カールは眼鏡を外すような仕草をしている。
「はい……ご存じでしたか」
「隣の席だったしね。急に眼鏡かけ始めてどうしたのかなって思ってたんだよね。視力悪い人って、こうやるじゃん?」
こう、と言ってカールは目を眇めて見せた。
「そういう仕草が全くなかったのに、なんで眼鏡かけたんだろうって思ってたんだけど……ベルツ子爵令息のせいかー。って……あいつの話はいいや。そろそろ出かけよ?」
カールはアルヤに腕を差し出した。
今までエスコートされないデートしかしてこなかったアルヤは戸惑いながら、そっと手を乗せる。
カールは嬉しそうに頷いて歩き出した。
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