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しおりを挟むどうやらクリスティーヌは宰相という最強のカードを手に入れて幸せになれそうだ――という報告がコレッティ子爵家に入り、祖父はやっと落ち着いてくれた。
少しだけアルヤのことも目に入るようになり、家の中にいても辛さが減ってきた。
婚約者とは仲良くやってるか、と祖父に聞かれるのは本当に困るけれど、曖昧な返事をしてごまかしている。
いずれゴットロープとの婚約は駄目になるだろう。
(もうお祖父様の心は悲しみに暮れていないし、私の婚約が駄目になっても、それほど悲しませることはないだろう……)
幼いころから可愛がってくれた祖父の愛情を疑うわけではないが、自分への関心がクリスティーヌより薄いのは事実だ。
でも今は、そんなことを嘆き悲しむ暇があるなら執筆がしたい。
そう考えるようになってからは、祖父のことも割り切れるようになった。
父は忙しすぎて、アルヤのことは気にかけているけれど母のことがもっと心配という状態だった。
父がアルヤを気にしているように感じたときは、アルヤのほうから「私は大丈夫です。お母様が早く戻ってきて下さるといいですね」と伝えるようにしていた。
(とはいえ、ゴットロープ様との婚約が破棄されたら、次の婚約なんてろくなものにはならないし、それならいっそ修道院に行くほうが平和よね……)
できれば執筆作業が続けられるような、甘めの修道院がいい。
少し調べておく必要があるだろう。
(ついでにお城の絵が載ってる書籍と、古典的なドレスの仕様が載ってる書籍も読んでおきたいな)
小説を書くには資料が必要だ。
執筆を始めてみると、知らないことが多いことに気付く。
(修道院て図書館はあるのかな?)
昼休みも図書館へ通い、修道院のことが詳しく載っている本に出会い、入りたい修道院も定まってきた。
(人生のプランが見えてきたわ……)
誰かに何かを期待するより、自分の足で立てる道を探したい。
やはり修道院の蔵書量は少なく、偏っていることがわかった。
持ち込みたい本をピックアップしたり、その合間に執筆したりとアルヤは忙しく過ごしていた。
(実はカール君が影だとわかって、ヒロインが動揺するっていう場面を思いついたのよね!!)
物語は終盤にさしかかっていた。
『転』の部分は、ヒロインのピンチをカールが助けてくれるというありきたりなものになったが、初めての執筆なのでそれ以上は欲張らないことにしたら、その後の展開もするする書けた。
助けてくれた謎の男に恋をしたが、その彼は王家の影だとわかる――
ただの令息ではなかった人と、平凡なヒロインが結ばれるのは難しい。
(バレたのが、いかにもな黒装束だったっていうのは、ちょっと安っぽいかしら? でも……誰に読ませるわけでもない私の趣味のお話だし、いいわよねぇ?)
図書館での調べ物を終えたアルヤは教室へ向かった。
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