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しおりを挟む「クリスティーヌ……クリス……体は辛くないか?」
ロジェの腕の中でうとうとしていたら、心配そうな声が聞こえて、クリスティーヌはもう何度目かわからない笑みを浮かべた。
「大丈夫です。少し、違和感は残っていますが」
「そうか。気を失ったのかと、心配になって」
「ロジェ様は心配性だったんですね」
ロジェはとても優しかった。
自分本位で動くようなことは、ただの一度もなかった。
「……これが愛……」
ロジェに話しかけられる前まで眠りの入り口にいたせいか、普段なら口にしないようなことを言ってしまった。
「そうだな、私も初めて知った」
真面目な顔で頷くロジェが可笑しくて、クスクス笑いながら答えた。
「……うれしい」
「あなたは私をあおる天才だな」
「そうでしょうか」
ロジェは隣でうずくまるクリスティーヌの髪をしきりに撫でている。
「そうやって、私が寝ているときも髪を撫でてくださっていましたね」
「知ってたのか」
「すみません。実は撫でてもらうのが嬉しくて、寝たふりをしてました」
「……そんな可愛らしいこと言われると、もう一度抱きたくなってしまう」
「いいですよ?」
「いや、ダメだ。初めての女性に何度もするなど、それでは獣だろう」
クリスティーヌを大切にしたいというロジェは、甘やかしたくてたまらないのだと、行為の最中も言っていた。
クリスティーヌが「大切にしてもらうことに慣れてないんです」と答えれば、ロジェは痛ましいという顔をして唇を噛んだ。
本当は、一周目も、二周目も。
ずっと、ただのクリスティーヌとして愛されたかった。
「誰かの身代わりでもなく、価値があるからでもなく、そのままの私を見て欲しかった」
泣き叫ぶように言ったクリスティーヌを、ロジェは真綿にくるむように抱いた。
何度もキスをして、何度も愛おしいと囁かれ、何度も何度も、ゆっくりとクリスティーヌをいたわりながら痛くないように優しく動いてくれた。
ロジェを見ていれば、男性にとって忍耐の必要な緩慢な動きであることは、クリスティーヌにも理解できた。
最後の最後に、ほんの少し強く腰を押し付けられただけ。
ロジェが果てるまで続いた、もどかしくて愛おしい行為は、クリスティーヌのこれまでの人生を洗い流すような素晴らしいものになった。
「幸せに……なってもいいのでしょうか……」
「まだそんなことを言ってるのか」
「慣れてないから」
「そうか、では、私がこれから存分にわからせるから」
だから安心して、素直に私からの愛を感じてくれ――
ロジェの体温に包まれる心地よさに、とうとう抗えなくなったクリスティーヌは、大好きなロジェの低い声に耳を澄ませながら瞼を閉じた。
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