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しおりを挟む唇をついばみながら、宝物のようにベッドへ降ろされた。
まだ日が高く、天蓋のカーテンを閉めても全て見えてしまうぐらいの明るさだ。
「恥ずかしい?」
もじもじしていたら、ロジェが聞いてくれた。
素直に頷くと、ロジェは眼鏡を外してサイドチェストの上に置き、引き出しから液体の入った瓶を三本取り出した。
「眼鏡を外したから、それほど見えない……これで恥ずかしさは薄れただろうか?」
正直に言えばあまり変わらないが、とりあえず頷いておいた。
「クリスティーヌはこちらを。避妊薬だ。どちらか一方が飲めば問題ないとされているが、念のため二人で飲んでおこう」
「……準備してたんですね」
「もちろん」
閨は契約に入ってないと思い、油断したまま隣で寝ていた自分に呆れる。
それと同時に、したいと思われていたことが嬉しくなってしまった。
「怖くなったか?」
「いいえ……うれし、い?」
「ん?」
ロジェは避妊薬を一気に飲み干して首を傾げた。
「わたし……あの、すごく、独占欲が強かったみたいで……」
言ってから赤くなる頬を隠すように避妊薬を飲んだ。
甘いような苦いような味が口に広がる。
ロジェが持っている、残りの一本の液体は避妊薬とは違う色をしていた。
ほう、とロジェが大きく息を吐きだしたので見上げると、目に手を当てて俯いていた。
「どうかされましたか? ご気分でも?」
「クリスティーヌに拒否されないことを目標に話を進めていたから、あなたの今の様子から、私に求められて嬉しいと思ってくれたのではないかという結論に達してしまい、湧きあがる興奮を禁じ得ない」
「よかった。避妊薬でご気分が悪くなられたとかではないんですね?」
ほっとしながらロジェの手を取ると、またロジェがうなり出した。
この銀の狼はうなるのがお好きらしい。
「ひどくしたくない。あまり冷静にはなれないかもしれないが、興奮しすぎも困る」
「冷静になられたら怖いですよ……私の体を見ても……がっかりしないでくださいね?」
「クリスティーヌのすべてが可愛いだけだが?」
「ありがとうございます……でも、とても貧相なので恥ずかしいんです」
「そんなこと、私が思うと?」
「……それは……その……それより! そちらの瓶は何ですか?」
「あぁこれか。これはクリスティーヌの体の負担を減らそうと考えて、初めての女性が痛くないようにするためのものだな」
「そんな便利なものがあるんですねぇ」
「色々調べていたらいきついてな。しかるべき薬屋が作っているものだから安心していい」
「わかりました」
ロジェの配慮が嬉しくて、笑いながら頷いたらロジェが苦々しい顔をした。
「本当はこんなものに頼らずとも、あなたをよくしてあげたいのだが、こればかりは思うようにいくかどうか……それに、どうもうちの家系は少々モノが大きいらしくて。小柄なクリスティーヌを傷つけたくないんだ」
「はい。ご配慮いただいたこと、とても嬉しく思います」
「そうか」
ロジェはようやく安心したらしく、瓶を枕の横に置いてクリスティーヌをコロンと仰向けに転がした。
「不快だったり痛かったりしたらすぐに知らせて欲しい」
クリスティーヌは何も言わずに頷いた。
何か言えば、今のロジェは三言ぐらい返してくる。
いくら待っても続きが始まらなそうなので、そっと目を閉じた。
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