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しおりを挟む(口づけも、ロジェ様だけがよかった……)
それはさすがに贅沢だろうか。
マノロ殿下との初夜での気持ち悪い口づけが思い出されたが、すぐにかき消した。
嫌な思い出を消すことには慣れている。
純潔をロジェに捧げられるだけ、幸運といえるだろう。
三度の人生、いつどんな風に男性から虐げられてもおかしくはなかったのだから。
ロジェの薄い唇は、思いのほかしっとりしていて、重ねると気持ちがよかった。
何度もついばむように口づけ、クリスティーヌの気持ちを確認するように、顔を離すたびに、目元や頬、額にキスを贈られた。
クリスティーヌの頭を支えている指が、髪の隙間から地肌に触れる。
見つめ合った視線が熱くなり、ロジェが何をしたいのか言わなくてもわかった。
背中を抱く手も、地肌に降れる指も熱く、開いた唇にロジェの舌が滑りこむ。
舌を絡ませると、クリスティーヌの口から吐息が漏れる。
それを聞いたロジェは舌をジュッと吸い上げたあと顔を離した。
「寝室に行く前に伝えておくことがある」
「はい……」
(私は今、とてもいやらしい顔をしている……)
それを見られるのは、少し恥ずかしかった。
「私は実践での閨教育は受けていない」
「……え」
「すまない。やはりそんな男に身をゆだねるのは怖いだろうか? だが私はクリスティーヌ以外の女性に興味がもてなくて……」
またロジェの耳が垂れた。
普段の姿からは想像もできない姿にときめく。
この人はどうしてこんなにも可愛いのだろう。
思わず手を伸ばし、ロジェの首に腕を回して引き寄せ、口づけるぐらいの距離で囁いた。
「私だけだなんて……嬉しいです」
目を見開いたロジェは、かぶりつくように唇を重ねてきた。
上あごも下あごも何度も舐られ、舌は取れそうなほど吸い上げられた。
(知らなかった……私って……独占欲が強かったのね……)
誰も触れたことのないロジェに触れる悦びが、クリスティーヌを興奮させる。
自らねだるように体を寄せると、ロジェは低く呻いて、クリスティーヌの膝の下に手を入れて軽々と抱き上げた。
「湯あみは無しだ。すまない」
クリスティーヌは首を振る。
そんなまどろっこしいことは後でいい。
「ロジェ様、早く私を本当の妻にしてください」
「……ッ、あなたは、少し、私をあおりすぎだ」
怒ったように言うロジェの顔は真っ赤だった。
そんなロジェが愛おしくて――
クリスティーヌは微笑みながら、ロジェのシャツの一番上のボタンを外した。
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