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7.一緒にお茶を
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ドレスをロジェに見てもらっていたところ、途中でロジェはエディットに別室へ連れていかれてしまった。
さきほど少々不穏な、仕置きが必要という発言があったからロジェが心配だ。
クリスティーヌに関わることで叱られるようなことがあるのだとすれば申し訳ない。
(カヌレ伯爵家でこんなにもよくしていただけるのは、ロジェ様が娶ってくださったお陰だもの)
クリスティーヌは背が低い。
黒髪黒目だけでなく、この身長のせいで愛妾にされたことは皆が知っていることだ。
二度のループのときよりは多少見られる程度には育ったが、女性らしさに欠ける貧相な体をしている。
(そんな私が着ても、ドレスに着られてしまうような、情けないことにならないのは本当にすごい)
ハイブランドのドレスは、何度着ても気おくれしてしまうが、やはり一流の技というのは素晴らしい。
足りない胸元を幾重ものレースが縁取り、くびれのない腰をスカートの膨らみが隠してくれる。
それなのに、ちっとも重くないのだ。羽をまとっているのかと錯覚してしまう。
ロジェと一緒にこの部屋を訪れたレイモンドは、ミシェルのドレスをしきりに褒めたあと、クリスティーヌのことまで何度も可愛い似合ってると言ってくれた。
心遣いはありがたいと思うけれど、どう返事をしていいかわからない。悩んだあげく、無難に「ありがとうございます」としか答えられなかった。
ドレスが素晴らしいのであって、クリスティーヌが素晴らしいわけではない。それでも選んでくれたエディットや、デザイナーやお針子のお陰でドレスに着られてしまうようなことにならずに済んだのだということを、きちんと伝えなければと思うのに。
どういうわけかレイモンドを前にすると、自分を卑下するような言葉を避けてしまう。
(不思議な方だわ……本当に似合っていると思いたくなってくる)
言葉に詰まるクリスティーヌを気にする様子もなく、レイモンドは「ロジェの口の足りなさは勘弁してやって?」と笑った。
大きな体なのに威圧感がないのは、こんな風にさりげない気づかいをしてくれるからかもしれない。
ロジェの口数の少なさに、ほっとすることはあっても、足りないなどと思ったことはないのだけれど。
「ロジェ様にはいつも、よくしていただいてます」
「そうか?」
レイモンドは苦笑して、なぜかクリスティーヌの頭をポンポンと弾むように撫でた。
それを見たミシェルまでもが同じことをするので困ってしまう。
二人とも背が高く、なんとも色っぽいお似合いの夫婦で気取ったところがない。
その二人が、子猫を見たときのような顔でクリスティーヌを見ている。
「ミシェル、お前はやるな」
「なんでよ!?」
「俺はロジェがいないときしかできないだろ?」
「ロジェ様が見てたらできないようなことは、最初からしない方がいいと思うわ」
「確かに」
なんだかお色気夫婦が可愛らしくいちゃいちゃしはじめた。
だから私が撫でるの、と言い出したミシェルをレイモンドが可愛いとばかりに抱きしめている。
そんな二人を微笑ましいなぁと思いながら眺めていると、客室の豪華な扉が勢いよく開いた。
さきほど少々不穏な、仕置きが必要という発言があったからロジェが心配だ。
クリスティーヌに関わることで叱られるようなことがあるのだとすれば申し訳ない。
(カヌレ伯爵家でこんなにもよくしていただけるのは、ロジェ様が娶ってくださったお陰だもの)
クリスティーヌは背が低い。
黒髪黒目だけでなく、この身長のせいで愛妾にされたことは皆が知っていることだ。
二度のループのときよりは多少見られる程度には育ったが、女性らしさに欠ける貧相な体をしている。
(そんな私が着ても、ドレスに着られてしまうような、情けないことにならないのは本当にすごい)
ハイブランドのドレスは、何度着ても気おくれしてしまうが、やはり一流の技というのは素晴らしい。
足りない胸元を幾重ものレースが縁取り、くびれのない腰をスカートの膨らみが隠してくれる。
それなのに、ちっとも重くないのだ。羽をまとっているのかと錯覚してしまう。
ロジェと一緒にこの部屋を訪れたレイモンドは、ミシェルのドレスをしきりに褒めたあと、クリスティーヌのことまで何度も可愛い似合ってると言ってくれた。
心遣いはありがたいと思うけれど、どう返事をしていいかわからない。悩んだあげく、無難に「ありがとうございます」としか答えられなかった。
ドレスが素晴らしいのであって、クリスティーヌが素晴らしいわけではない。それでも選んでくれたエディットや、デザイナーやお針子のお陰でドレスに着られてしまうようなことにならずに済んだのだということを、きちんと伝えなければと思うのに。
どういうわけかレイモンドを前にすると、自分を卑下するような言葉を避けてしまう。
(不思議な方だわ……本当に似合っていると思いたくなってくる)
言葉に詰まるクリスティーヌを気にする様子もなく、レイモンドは「ロジェの口の足りなさは勘弁してやって?」と笑った。
大きな体なのに威圧感がないのは、こんな風にさりげない気づかいをしてくれるからかもしれない。
ロジェの口数の少なさに、ほっとすることはあっても、足りないなどと思ったことはないのだけれど。
「ロジェ様にはいつも、よくしていただいてます」
「そうか?」
レイモンドは苦笑して、なぜかクリスティーヌの頭をポンポンと弾むように撫でた。
それを見たミシェルまでもが同じことをするので困ってしまう。
二人とも背が高く、なんとも色っぽいお似合いの夫婦で気取ったところがない。
その二人が、子猫を見たときのような顔でクリスティーヌを見ている。
「ミシェル、お前はやるな」
「なんでよ!?」
「俺はロジェがいないときしかできないだろ?」
「ロジェ様が見てたらできないようなことは、最初からしない方がいいと思うわ」
「確かに」
なんだかお色気夫婦が可愛らしくいちゃいちゃしはじめた。
だから私が撫でるの、と言い出したミシェルをレイモンドが可愛いとばかりに抱きしめている。
そんな二人を微笑ましいなぁと思いながら眺めていると、客室の豪華な扉が勢いよく開いた。
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