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 翌朝。
 習慣というのは恐ろしいが、出仕する時間に目覚めてしまった。
 当然、クリスティーヌはまだ夢の中だ。

 休むのは難しいが、カヌレ家でのドレスの試着を見終えたら出仕しようと、レイには使いを出し、全ての新聞に目を通しはじめた。

 レイを宰相補佐代わりにこき使っているので、彼には恨まれたが、信用ができ、仕事もできる人物なので傍に置いている。

 使いから帰ってきた従僕が「タルコット卿からロジェ様は休暇を取られますようにとのお返事をいただきました」と手紙を渡された。

「休み?」
「はい。ヴィヴィアン殿下からのお達しでもあるとのことです」
「まだ公爵家にいるくせに」

 タルコット公爵家には、彼の父であるアーサー卿が滞在しているので、レイの独断とは言い切れない。
 レイの父、アーサー・タルコットは、王弟である。

 マノロ殿下の幽閉後、ヴィヴィアン殿下が生死を彷徨い、なんとか一命をとりとめた後、王太子となるべく動き始めたとき、今度は陛下が精神を病んだ。
 未曾有の危機に、アーサーは公爵領へ戻らず、現在はヴィヴィアン殿下とロジェと共に政を行っている。

「旦那様」

 アルバンが少々焦りながらロジェの元へ来た。

「どうした?」
「いつもなら奥様が食堂へいらっしゃる時間なのですが、まだカリナが部屋に呼ばれていないようなのです」
「なんだと!?」

 ロジェは新聞を放り出し、寝室へ駆けた。
 夫婦の寝室は互いの私室の扉からしか入れない。
 それをもどかしく思いながら、慌ただしくノックをして返事も待たずに中に入った。


「すまない、クリスティーヌがいつもの時間に起きてこないと聞いて」
「ロジェ様?」

 まだベッドの上にいたクリスティーヌが驚いた顔をしてロジェを見上げた。
 顔色は悪くはなさそうだが、どことなく疲れたようにも見える。

「ロジェ様、お仕事はどうされたのですか?」
「今日は休みを取った。それより、何か嫌なことでも思い出したか?」
「いえ……何も」
「……そうか」

 話したがらないことを暴くつもりはない。
 ロジェは「着替えたら一緒に食事を」と言って部屋を出た。

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