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 マノロ殿下の暴挙はとどまるところを知らず、狂ったように女性を襲い始めたところで陛下がいよいよ幽閉を決めた。表向きは病気療養とされたが、遅すぎるぐらいだった。王の資質がないことなど、十年以上前からわかっていたのだ。

 クリスティーヌを含め、降嫁する妃たちの伴侶選びが始まったとき、ロジェはすぐさまクリスティーヌの下賜を願った。
 勝算はあった。

 妃たちへのマノロ殿下の暴挙を知っても、彼女たちを保護し、秘密を守れるそれなりの身分のものが妃や愛妾を娶るべきだと訴えたのだ。

 マノロ殿下の暴挙が知れれば王家の恥となる。妃たちの行く末については高位貴族への説明が必要なので、公然の秘密ということにはなるが、それでも面白おかしく吹聴したり、妃たちを虐げたりしない人物が娶るべきだとも進言した。

 その中でもクリスティーヌは一番目の被害者であり、男爵家の庶子という難しい出自であり、すべてを知っても受け入れられるのはロジェぐらいだと訴え、それが承諾された。


 彼女が健やかに過ごしてくれているだけでいい。


 そう思ってはいるが、妻を悲しませるのは本意ではない。
 悲しみの理由がロジェではないのだとしても、夫婦の時間は必要だろう。


(なんの面白みもない私といても、クリスティーヌが喜ぶかはわからないが……一人でいるよりは、気が紛れるだろう。母からもドレスの試着にクリスティーヌを一人で寄こすのかと苦言を呈されていたしな)


 ベルを鳴らし、再びアルバンを呼びつけ、明日の朝クリスティーヌと一緒に食事をとることを伝えると、アルバンはあからさまにホッとした顔をして「それはようございました」と頭を下げた。

 どうやら相当気を使わせてしまっているらしい。
 結婚する気配のなかったロジェの結婚が決まり、一番感情あらわに喜んだのは家族以外ではアルバンだった。

 長らくカヌレ家の家令であったアルバンを引き抜くとき、反対の意見が出るだろうと思っていたら、すんなりと通った。
 むしろこのときアルバンにロジェを頼むと両親がしきりに頼むのを見て、ようやく家族に気を使われてることに気付いたのだから、ロジェは自身のことについてはかなり雑であるといえる。
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