【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

佐倉えび

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 開発に一年かかったスズランの香水が徐々に売れ始めた。
 まずは市井のお店に下ろしてみたところ、珍しさも手伝って売れ行きが伸びているらしい。
 既に貴族向けに販売されているドクダミ化粧水と一緒に、香水も貴族向けの商品に取り掛かることになった。
 こちらは更に美しい瓶を仕入れて商品化する。

 白と緑と青のグラデーションが美しい瓶に入った、試作品一号の『ベルタ』を手にした父は、経済的な苦労などを義母に謝罪すると言っていた。
 由緒正しいコレッティ子爵の令嬢だった義母は、新興貴族の父との結婚を恥ずかしいと思っていた節があった。こんな家に嫁がなければならなかった己の身がどれほど惨めであったかを嘆かれたこともある。

(だから不仲の原因は、お父様の浮気だけのせいでもなさそうなのよね……)

 父が義母にベルタを贈った次の日、朝食の席に遅れて二人がやってきて、その雰囲気を見た義兄は思春期の潔癖さを発揮して顔をしかめていた。

(さすがに緩いバルト男爵家とはいえ、七歳の小娘に夫婦の話を詳細に漏らすような使用人はいないよねぇ)

 そう思いながら朝食を終え、私室に戻ったときのこと。

「お嬢様、旦那様たちは、それはそれは睦まじく朝まで過ごされたようですよ。部屋付きのメイドが言ってました」

(カリナーーーーー!!)

 叫びたい気持ちを堪えて、クリスティーヌは顔を真っ赤にして頷いた。

「そ、そう……」
「良かったですね。気にされていましたもんねぇ」
「お二人がぎこちないのは、私が生まれたせいだから」
「断じてお嬢様のせいではありませんが」
「うん……カリナはそう言うだろうけど、でもそれは、絶対に言っては駄目」
「承知しました」
「でも、ありがとう。カリナの協力が無ければ無理だったから」
「お力になれたのであれば嬉しいです」
「なったよ。これからもよろしくね?」
「はい」

 カリナの手を取り、クリスティーヌは首をコテンと傾げた。
 カリナは「うっ」と小さく呻いてから、コクコク頷いていた。


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