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第一章 病弱皇女と血のつながった他人
プロローグ
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オールスティン帝国。
そこは大陸一栄えている国であり、豊かな国であり、圧倒的軍事力を持っていた。
その国においてその女は唯一の皇女であった。
長く美しいプラチナブロンドと皇族特有の黄金の瞳を持つ帝国一の美姫と呼ばれたその女は帝国一の悪女と罵られ、断頭台へと登っている。
そんな状況下にありつつもその女は強い眼差しで前を見据えている。
「何か言い残すことはあるか」
「お兄様……いえ、皇太子殿下。そうですね…では、一つだけ」
「言ってみろ」
皇太子……かつて第三王子であった男は表情のない皇女に対して僅かに怒りを滲ませる。
「わたくしは間違いを犯したとは一切思っていません」
「っ!?よくも、よくも!!そのようなことが言えるな!!お前の数々の悪行を忘れたとは言わせない!!」
「ロウェル様……」
皇女の婚約者であった男は激昂し、その腕には婚約者ではない可愛らしい少女が涙目が縋り、男の名前を呼ぶ。ロウェルと呼ばれた男は可憐な少女を力強く抱きしめる。
皇女はそんな茶番劇を無表情ながらもどこか呆れた目で見つめる。
「貴方方がわたくしから地位も、名誉も、わたくしがわたくしたるものを何もかもを奪おうとも、わたくしの考え、心だけは決して奪わせはしない。
そこにいる節操しのその女も、
愚かな皇太子も、
婚約者がいるにも関わらず他の女に手を出した公爵子息も、
容赦なく女に暴力を振るう騎士も、
己の職務を全うしない帝国の影も、
今ここいる誰もがわたくしの命までも奪おうとする。だからこそ、だからこそ、わたくしは自身の生き様を、考えを、誇りを、奪わせはしない。命さえもわたくしから奪うのです。これ以上、わたくしから何を奪うのですか」
皇女は静かに語りかけるように言う。決して大きくないその声は大きくないからこそ人々の心へと入っていく。
男は、否、男たちは皇女の言葉に反論しようとも出来なかった。
「そして、宣言いたしましょう!
貴方方が帝国にいる限り、この国に未来はない!!」
皇女は初めて声を張り上げ、その直後……
「その女の首を刎ねろ!!!!」
皇女は首を刎ねられ死んだ。
皇女が最後に見たのは男たちの酷い形相と少女の歪んだ笑みであった。
皇女は知らない。
皇女の死に涙するものがいたことを。
皇女の死が終わりではなく、始まりであることを。
ここから帝国は衰退の一途を辿ることとなることを。
死した皇女はそれを知らない。
_____________________
こそこそ話
この物語はハッピーエンドです。
ノーバットエンド。
ヒント:題名
そこは大陸一栄えている国であり、豊かな国であり、圧倒的軍事力を持っていた。
その国においてその女は唯一の皇女であった。
長く美しいプラチナブロンドと皇族特有の黄金の瞳を持つ帝国一の美姫と呼ばれたその女は帝国一の悪女と罵られ、断頭台へと登っている。
そんな状況下にありつつもその女は強い眼差しで前を見据えている。
「何か言い残すことはあるか」
「お兄様……いえ、皇太子殿下。そうですね…では、一つだけ」
「言ってみろ」
皇太子……かつて第三王子であった男は表情のない皇女に対して僅かに怒りを滲ませる。
「わたくしは間違いを犯したとは一切思っていません」
「っ!?よくも、よくも!!そのようなことが言えるな!!お前の数々の悪行を忘れたとは言わせない!!」
「ロウェル様……」
皇女の婚約者であった男は激昂し、その腕には婚約者ではない可愛らしい少女が涙目が縋り、男の名前を呼ぶ。ロウェルと呼ばれた男は可憐な少女を力強く抱きしめる。
皇女はそんな茶番劇を無表情ながらもどこか呆れた目で見つめる。
「貴方方がわたくしから地位も、名誉も、わたくしがわたくしたるものを何もかもを奪おうとも、わたくしの考え、心だけは決して奪わせはしない。
そこにいる節操しのその女も、
愚かな皇太子も、
婚約者がいるにも関わらず他の女に手を出した公爵子息も、
容赦なく女に暴力を振るう騎士も、
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今ここいる誰もがわたくしの命までも奪おうとする。だからこそ、だからこそ、わたくしは自身の生き様を、考えを、誇りを、奪わせはしない。命さえもわたくしから奪うのです。これ以上、わたくしから何を奪うのですか」
皇女は静かに語りかけるように言う。決して大きくないその声は大きくないからこそ人々の心へと入っていく。
男は、否、男たちは皇女の言葉に反論しようとも出来なかった。
「そして、宣言いたしましょう!
貴方方が帝国にいる限り、この国に未来はない!!」
皇女は初めて声を張り上げ、その直後……
「その女の首を刎ねろ!!!!」
皇女は首を刎ねられ死んだ。
皇女が最後に見たのは男たちの酷い形相と少女の歪んだ笑みであった。
皇女は知らない。
皇女の死に涙するものがいたことを。
皇女の死が終わりではなく、始まりであることを。
ここから帝国は衰退の一途を辿ることとなることを。
死した皇女はそれを知らない。
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こそこそ話
この物語はハッピーエンドです。
ノーバットエンド。
ヒント:題名
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