三度目の正直!~今度こそ寿命まで生きます~

翠の目

文字の大きさ
上 下
1 / 10
第一章 病弱皇女と血のつながった他人

プロローグ

しおりを挟む
オールスティン帝国。
そこは大陸一栄えている国であり、豊かな国であり、圧倒的軍事力を持っていた。

その国においてその女は唯一の皇女であった。

長く美しいプラチナブロンドと皇族特有の黄金の瞳を持つ帝国一の美姫と呼ばれたその女は帝国一の悪女と罵られ、断頭台へと登っている。
そんな状況下にありつつもその女は強い眼差しで前を見据えている。

「何か言い残すことはあるか」

「お兄様……いえ、皇太子殿下。そうですね…では、一つだけ」

「言ってみろ」

皇太子……かつて第三王子であった男は表情のない皇女に対して僅かに怒りを滲ませる。

「わたくしは間違いを犯したとは一切思っていません」

「っ!?よくも、よくも!!そのようなことが言えるな!!お前の数々の悪行を忘れたとは言わせない!!」

「ロウェル様……」

皇女の婚約者であった男は激昂し、その腕には婚約者ではない可愛らしい少女が涙目が縋り、男の名前を呼ぶ。ロウェルと呼ばれた男は可憐な少女を力強く抱きしめる。

皇女はそんな茶番劇を無表情ながらもどこか呆れた目で見つめる。

「貴方方がわたくしから地位も、名誉も、わたくしがわたくしたるものを何もかもを奪おうとも、わたくしの考え、心だけは決して奪わせはしない。

そこにいる節操しのその女も、

愚かな皇太子も、

婚約者がいるにも関わらず他の女に手を出した公爵子息も、

容赦なく女に暴力を振るう騎士も、

己の職務を全うしない帝国の影も、

今ここいる誰もがわたくしの命までも奪おうとする。だからこそ、だからこそ、わたくしは自身の生き様を、考えを、誇りを、奪わせはしない。命さえもわたくしから奪うのです。これ以上、わたくしから何を奪うのですか」

皇女は静かに語りかけるように言う。決して大きくないその声は大きくないからこそ人々の心へと入っていく。

男は、否、男たちは皇女の言葉に反論しようとも出来なかった。

「そして、宣言いたしましょう!

貴方方が帝国にいる限り、この国に未来はない!!」

皇女は初めて声を張り上げ、その直後……

「その女の首を刎ねろ!!!!」

皇女は首を刎ねられ死んだ。



皇女が最後に見たのは男たちの酷い形相と少女の歪んだ笑みであった。







皇女は知らない。

皇女の死に涙するものがいたことを。

皇女の死が終わりではなく、始まりであることを。


ここから帝国は衰退の一途を辿ることとなることを。



死した皇女はそれを知らない。


_____________________

こそこそ話

この物語はハッピーエンドです。
ノーバットエンド。

ヒント:題名


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~

春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。 かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。 私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。 それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。 だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。 どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか? ※本編十七話、番外編四話の短いお話です。 ※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結) ※カクヨムにも掲載しています。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

所(世界)変われば品(常識)変わる

章槻雅希
恋愛
前世の記憶を持って転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢。王太子の婚約者であり、ヒロインが彼のルートでハッピーエンドを迎えれば身の破滅が待っている。修道院送りという名の道中での襲撃暗殺END。 それを避けるために周囲の環境を整え家族と婚約者とその家族という理解者も得ていよいよゲームスタート。 予想通り、ヒロインも転生者だった。しかもお花畑乙女ゲーム脳。でも地頭は悪くなさそう? ならば、ヒロインに現実を突きつけましょう。思い込みを矯正すれば多分有能な女官になれそうですし。 完結まで予約投稿済み。 全21話。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

処理中です...