それは、檸檬の様な。/お茶のような。

IKUMI

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4.古茶詩文2:青山空と

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 知らずホッとして目を閉じた光太は--……違和感いわかんを感じ、閉じた目をすぐさま開く。

 背中に、地面の感触があった。
 あれほどうるさかった風の音は止み、代わりとばかりに耳をくすぐるのは、柔らかな下草だ。

 いつの間にやら光太は、草原のど真ん中で大の字になって寝ころんでいた。

「ッ!?」

 ギョッとして、思わずガバリと跳ね起きる。

 ついさっきまで、高い高い場所から落ちていた。
 地面なんて見えていなかったし、着地した衝撃もなかった。
 ものすごいスピードでうんと高い場所から落ちて、無傷。そんなことがあり得ないことくらい、光太だって知っている。

「ケースケッ、ユーゴッ、みんな!」

 なによりも、しっかり握りしめていたはずの手のひらがなにも握っていないことに愕然がくぜんとして叫んだ光太は、けれど。

「お~う、ここだぁ」

「後ろにいるよぉ」

 少し離れた場所でムクリと起きあがったふたつの影に心底安堵して、泣きそうになった。

「あ~、ひどい目にあった。コウちゃん、ケースケ、怪我はない?」

「「ない」」

「ならよかった。他のみんなは? ちゃんと全員いる?」

 ひぃふぅみぃ、と人数を数えながら、ユーゴがなんでもないことのように問う。
 なんでもなくはないだろうに、ユーゴはいつもと変わらない。
 さりげなく光太とケースケを自分の側へと引き寄せて、ぎゅうぅうッと手をつないできたけど。
 ユーゴはよく、『暴走防止ぼうそうぼうし』とか言って手をつないでくるから、いつもと同じといえば、いつもと同じなので、とりあえず握り返しておく。

「えーと。金堂発見。木もっちゃんと大内先生……に、女子ふたり。うん、ちゃんと全員いるぞ」

 三人の中で一番背の高いケースケが背伸びをし、ぐるりと周囲を確認する。
 光太とユーゴも周囲を見回したが、残念ながら身長の関係か、低木の影になっている人影は、どれが誰なのかまではわからなかった。
 そんな場合ではないとわかっていても、なんかちょっと悔しい。

「--……え? え? どうなってるの? え? なに? ここどこぉ?」

 先生を呼びに行ってくれた女の子のうちのひとり--喜多山きたやま花楓かえでが、体を起こしかけた姿勢のまま、混乱した様子の声をあげる。

 さもありなん。
 周囲ははるか彼方まで続く大草原だ。
 混乱する気持ちはよくわかる。

 よくわかるけど、カエデの疑問は光太の疑問でもある。

「どこって、どこだろう。大内先生わかる?」

 わからないなら聞けばいい。
 よろよろと立ちあがり、ちょうど近くまでやってきていた大内先生を見上げ、光太はコテンと首を傾げてみせる。

 大人ならもしかして、と思ったのだけれど。

「いや……これはちょっと……見たことのない景色というかなんというか…………」

 やっぱり大人でも、訳がわからないのがいまの状況らしい。
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