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冬里の肩が僅かにびくつく。老婆が「誰やろ」と言いながらゆっくりと立ち上がろうとする。それを制しながら、「私が見てきますよ」と声をかけ、冬里は玄関口へ向かった。
ノブに触れる。それと同時に、――聞き知った声が耳朶を打った。
「こんにちは。いれてください」
背筋が粟立つような感覚を覚える。声は、加賀のものに他ならなかった。
どうして。どうしてここに。心臓がばくばくと音を立てる。冬里が息を詰まらせる、その隙を縫うように「冬里」と、名前を呼ばれる。
「いれて」
「……加賀くん?」
「そうだよ。冬里。いれて。いれて、いれて」
加賀は――加賀は。冬里は小さく息を詰める。
じっとりとした汗が、背筋に滲む。冬里は小さく息を詰める。老婆の家に入るところを見られていたのだろうか。いや、あの時周囲を見たが加賀の姿は無かった。見晴らしの良い田舎である。人影に気付かない、というようなことは無いだろう。
なら、どうして。――どうして、ここに。
冬里はノブに触れる。老婆が「だぁれ?」と声をかけてくるのがわかった。
一拍、呼吸をして、それから冬里は決意をした。鍵を開けて、扉を開く。
夏日が差し込む玄関に、けれど、人影は無い。――加賀の声は、確かにしたのに。
じわじわ、と足下から違和感が這い上がってくるような気がする。そもそも、最初から、加賀はおかしかった。どうして今まで気付かなかったのだろう。
最初出会った時は子どもの姿だった。次第に、中学生へ変化し、高校生の背格好になり、今は冬里と同じような年齢の姿をしている。
人間が、短期間で、こんな風に成長するはずもない。
ならば加賀は、冬里の妄想が作り出した何かなのか、と思うが、その線も薄いだろう。何せ、先ほどの呼び鈴の音を、老婆も聞いている。
加賀の存在自体が妄想だったなら、きっと、呼び鈴の音は、老婆には聞こえていなかったはずだ。
喉の奥がぐうっと詰まったように苦しくなる。
なら、加賀は。――加賀は、何、なのだろうか。
冬里にだけ姿を見せ、冬里のことをお嫁さん、と呼び、愛おしそうに手で触ってくる、加賀は――。
ノブを持ったまま呆然としていると、老婆がひょこひょことやってきた。そうして、僅かに鼻を鳴らす。
「山のにおいがするね」
「……山の?」
「そう。草木の匂い――、嫌だ、獣でも下りてきたのかね?」
老婆の言う山のにおいが、冬里にはわからない。ただ、それを発している存在が、加賀であることだけは、なんとなく想像がついた。
老婆の家で少し時間を過ごし、それから別れる。帰ろう。ここに居てはいけない。元の家へ、実家へ、帰らなければ。
すぐにでも荷物をまとめて、明日にでも出て行くことにしよう。このままここに居たら、どうなるか、自分でもよくわからなかった。
お盆の期間まで、もうあとは三日を残すばかりである。お盆にはお祭りが始まる。そうなったら。それまでには。
祖母の家の扉、そのノブに触れる。鍵を探し出すように鞄を開くが、気が急いていることもあり、すぐに見つからない。
もう。どうして。そう思った瞬間。
不意に、耳元で、呼び鈴の音が鳴った。
見ると、呼び鈴を押すボタンが、誰かに触られているかのように凹んでいる。冬里の喉が微かに震えた。
見えない何かが、そこに居る。――恐らくは。
「こんにちは。冬里。用事は終わった? いれてください」
静かな声が耳朶を打った。冬里は瞬く。一瞬で、周囲の温度が氷点下にまで下がったような心地を覚える。
もし、今、ここで、鍵を差し込み、扉を開いたら。
それは、内部に加賀を招き入れるのと、同じような行動に取られるのではないだろうか。
喉が震える。どうにかしないといけない、そう思う。そう思うのに、足が動かない。指先が震えている。その手が、そっと誰かに握られた。鍵を鍵穴に差し込み、がちゃり、と回す音がいやに耳につく。
「ねえ。冬里。いれて」
「か、……加賀、くん……」
「駄目だよ。帰ったら。だって、冬里は僕のお嫁さんになるんだから。――約束をしたでしょう?」
誰も見つからなかったら。加賀は言葉を続ける。それは冬里の脳に、反響するように響く。
拒否しなければならない。そう思う。そう思うのに、それなのに、耳元で囁くような、遠くで響くような、距離が掴みづらい声で囁かれると、思考がまっさらになっていくような心地がした。
いれたら、だめだ。――どうして。
おいで、なんて、言ったら、駄目だ。――どうして。
「うちにおいで、って」
「……あ、……」
「ねえ、冬里……いれて。はいっていいよ、って、言って……」
「――加賀、く、ん、……」
唇がわななく。はいって、と、口内からはじき出す声が、ほとんど他人事のように響いて聞こえた。
扉が開く。ノブを回し、ゆっくりと。外からの来客を迎え入れるように。
冬里がほとんどたたらを踏んで、玄関口に膝を突く。すぐに振り返ると、そこには男性が立っていた。
加賀だ。
黒髪に黒い瞳、まるで濡れたような色気を醸し出しているかのような青年は、冬里に向かって柔らかく微笑む。
「冬里。いれてくれて、ありがとう」
「あ……っ、あ、う、うそ、なんで……っ」
「嬉しいな。冬里、冬里から拒否されたら、僕、どうしていいかわからなくなってしまうから」
冬里の言葉にかぶせるように、加賀が言葉を続ける。そうして、嬉しそうに冬里を見つめた。
「良かった。僕、冬里には嫌われたくないよ。だから、もし、気になるところがあったら言ってね。きちんと直すから。姿も、形も、なんでも」
ね、と加賀は冬里の傍に膝を突き、そのままそっと手を伸ばしてきた。冬里の体に、指先が触れる。瞬間、思考が揺さぶられるほどの快感が、冬里の体に走った。
「あ、……あっ……!?」
「可愛い、冬里。大好きだよ。声を聞かせて、顔を見せて。僕だけに」
加賀の唇がそのまま冬里に触れる。ちゅ、ちゅ、と優しく零れ落ちるキスに、冬里の体がひくついた。おかしい。どうして、こんなに感じてしまうのだろうか。
加賀以外の人が肩や腹部に触れても、ここまでの反応はしない。加賀だけだ。加賀の指先が、加賀の唇が、感覚をひどく鋭敏にさせる。
「やっ、あ、やだ、さわらな……いで……」
「どうして? お腹のあたり、くるくるって触られるの、好きでしょう?」
衣服の上から、まさぐるように手の平で腹部を撫でられる。緩急をつけた撫で方だった。どこかを探すように指先でノックされて、それに背骨が震えるほど快感を覚える。
「おか、ひ、おかし、いぃ……っ」
「おかしくなんてないよ。冬里、お腹、ふふ。子宮があるあたり、触られるの、大好きでしょう」
く、と指の腹が下腹部を撫でる。瞬間、太ももがびくびくと痙攣をした。加賀が笑って、そのまま冬里に口づけてくる。玄関口で組み敷くように、逃げられないまま舌を絡め合わせる。冬里の口内全てを愛撫するように動く加賀の舌が、不意にぐ、と喉の奥の方に入って来た。
反射的に喉が痙攣し、えづきそうになる。加賀の舌先からとろりとした液体が喉の奥に落とされていくのがわかった。苦しさしかない行為なのに、僅かな快楽を脳が拾いあげていく。脳の奥がぱちぱちと爆ぜるような感覚があった。
舌が戻り、そのまま冬里の舌を吸う。歯を一つ一つ検分するように舌先が撫でて、上顎をゆっくりと舌の腹で撫でられた。
丹念に口内の愛撫を繰り返し、そうしてようやく、加賀の唇が離れる。そうして、加賀はふ、と息を零したまま、冬里の秘部に押しつけるように膝をくっつけてきた。ぐりぐり、と動くと、嫌らしい水音がそのまま玄関に響く。
「あ、あ、ん、んぅ、それ、ぐりぐりって、しな、しにゃ、いで……っ」
「どうして? 気持ち良さそうなのに」
「あ、あ、や、んん……っ」
思考が煙る。先ほどまではこの場から逃げ出すことばかり考えていたのに、今は加賀に抱かれたくて仕方が無い。思考を加賀との行為に対する欲だけが占めていく。加賀は冬里の下を脱がせると、そのまま秘部に手で触れてきた。先ほどよりも柔らかに指先が触れ、快感に固まるそこを、柔らかく解すように動く。腰が震え、ほとんど無意識的に動く。足の先が突っぱねるような感覚があった。
「い、イって、る、イっちゃ、あ、あ、なんで……なんでぇっ……」
「どうしてだろうね。ふふ。敏感な体。僕に触られただけで、こんなに簡単にイっちゃうなんて」
ぬちぬち、と強く音を立てるように触られて、冬里は首を振った。絶え間なく続く快楽の余波が、いつまでたっても無くならない。
「んっ、んぐ、あ、あ、ん、ぅう――ッ」
「可愛い。冬里の愛液が、とろとろって溢れてくる。ねえ、――はやく、中にいれてほしい?」
「ん、ん、あ、ほ、ほし……っ、ほしい……っ」
浮かされた思考で、必死になって縋るように言葉を続ける。加賀が笑った。そうして、「駄目だよ」と囁く。
「今は、駄目……、でも、もう少し経ったら、冬里の希望通りにしてあげるから。沢山、沢山、中に出して――僕との子ども、孕んでね」
耳元で言葉を続け、加賀は冬里の耳元に唇を寄せた。耳の形を撫でるように舐められて、冬里の腰がひくひくと震える。
今欲しい。今、今、今。必死になって訴えようとするが、冬里の体を愛撫する指先が、冬里に意味のある言葉を言わせない。
「イく、イく、また……っ、またぁ、イっちゃ、あ、あ、や、ら、やだ、ひ、う、――ん、ンぅう……っ」
「可愛い。ねえ、冬里、冬里、沢山、気持ち良くなってね。沢山イかせてあげる。それこそ、気を失うくらい。そうしたら、冬里、もう僕から逃げようなんて、思わないでしょ?」
指先が秘部の、敏感な部分をこねるように動く。自身の中が収縮するような感じさえする快楽の最中で、冬里は加賀によって何度目かわからない回数、イった。
ノブに触れる。それと同時に、――聞き知った声が耳朶を打った。
「こんにちは。いれてください」
背筋が粟立つような感覚を覚える。声は、加賀のものに他ならなかった。
どうして。どうしてここに。心臓がばくばくと音を立てる。冬里が息を詰まらせる、その隙を縫うように「冬里」と、名前を呼ばれる。
「いれて」
「……加賀くん?」
「そうだよ。冬里。いれて。いれて、いれて」
加賀は――加賀は。冬里は小さく息を詰める。
じっとりとした汗が、背筋に滲む。冬里は小さく息を詰める。老婆の家に入るところを見られていたのだろうか。いや、あの時周囲を見たが加賀の姿は無かった。見晴らしの良い田舎である。人影に気付かない、というようなことは無いだろう。
なら、どうして。――どうして、ここに。
冬里はノブに触れる。老婆が「だぁれ?」と声をかけてくるのがわかった。
一拍、呼吸をして、それから冬里は決意をした。鍵を開けて、扉を開く。
夏日が差し込む玄関に、けれど、人影は無い。――加賀の声は、確かにしたのに。
じわじわ、と足下から違和感が這い上がってくるような気がする。そもそも、最初から、加賀はおかしかった。どうして今まで気付かなかったのだろう。
最初出会った時は子どもの姿だった。次第に、中学生へ変化し、高校生の背格好になり、今は冬里と同じような年齢の姿をしている。
人間が、短期間で、こんな風に成長するはずもない。
ならば加賀は、冬里の妄想が作り出した何かなのか、と思うが、その線も薄いだろう。何せ、先ほどの呼び鈴の音を、老婆も聞いている。
加賀の存在自体が妄想だったなら、きっと、呼び鈴の音は、老婆には聞こえていなかったはずだ。
喉の奥がぐうっと詰まったように苦しくなる。
なら、加賀は。――加賀は、何、なのだろうか。
冬里にだけ姿を見せ、冬里のことをお嫁さん、と呼び、愛おしそうに手で触ってくる、加賀は――。
ノブを持ったまま呆然としていると、老婆がひょこひょことやってきた。そうして、僅かに鼻を鳴らす。
「山のにおいがするね」
「……山の?」
「そう。草木の匂い――、嫌だ、獣でも下りてきたのかね?」
老婆の言う山のにおいが、冬里にはわからない。ただ、それを発している存在が、加賀であることだけは、なんとなく想像がついた。
老婆の家で少し時間を過ごし、それから別れる。帰ろう。ここに居てはいけない。元の家へ、実家へ、帰らなければ。
すぐにでも荷物をまとめて、明日にでも出て行くことにしよう。このままここに居たら、どうなるか、自分でもよくわからなかった。
お盆の期間まで、もうあとは三日を残すばかりである。お盆にはお祭りが始まる。そうなったら。それまでには。
祖母の家の扉、そのノブに触れる。鍵を探し出すように鞄を開くが、気が急いていることもあり、すぐに見つからない。
もう。どうして。そう思った瞬間。
不意に、耳元で、呼び鈴の音が鳴った。
見ると、呼び鈴を押すボタンが、誰かに触られているかのように凹んでいる。冬里の喉が微かに震えた。
見えない何かが、そこに居る。――恐らくは。
「こんにちは。冬里。用事は終わった? いれてください」
静かな声が耳朶を打った。冬里は瞬く。一瞬で、周囲の温度が氷点下にまで下がったような心地を覚える。
もし、今、ここで、鍵を差し込み、扉を開いたら。
それは、内部に加賀を招き入れるのと、同じような行動に取られるのではないだろうか。
喉が震える。どうにかしないといけない、そう思う。そう思うのに、足が動かない。指先が震えている。その手が、そっと誰かに握られた。鍵を鍵穴に差し込み、がちゃり、と回す音がいやに耳につく。
「ねえ。冬里。いれて」
「か、……加賀、くん……」
「駄目だよ。帰ったら。だって、冬里は僕のお嫁さんになるんだから。――約束をしたでしょう?」
誰も見つからなかったら。加賀は言葉を続ける。それは冬里の脳に、反響するように響く。
拒否しなければならない。そう思う。そう思うのに、それなのに、耳元で囁くような、遠くで響くような、距離が掴みづらい声で囁かれると、思考がまっさらになっていくような心地がした。
いれたら、だめだ。――どうして。
おいで、なんて、言ったら、駄目だ。――どうして。
「うちにおいで、って」
「……あ、……」
「ねえ、冬里……いれて。はいっていいよ、って、言って……」
「――加賀、く、ん、……」
唇がわななく。はいって、と、口内からはじき出す声が、ほとんど他人事のように響いて聞こえた。
扉が開く。ノブを回し、ゆっくりと。外からの来客を迎え入れるように。
冬里がほとんどたたらを踏んで、玄関口に膝を突く。すぐに振り返ると、そこには男性が立っていた。
加賀だ。
黒髪に黒い瞳、まるで濡れたような色気を醸し出しているかのような青年は、冬里に向かって柔らかく微笑む。
「冬里。いれてくれて、ありがとう」
「あ……っ、あ、う、うそ、なんで……っ」
「嬉しいな。冬里、冬里から拒否されたら、僕、どうしていいかわからなくなってしまうから」
冬里の言葉にかぶせるように、加賀が言葉を続ける。そうして、嬉しそうに冬里を見つめた。
「良かった。僕、冬里には嫌われたくないよ。だから、もし、気になるところがあったら言ってね。きちんと直すから。姿も、形も、なんでも」
ね、と加賀は冬里の傍に膝を突き、そのままそっと手を伸ばしてきた。冬里の体に、指先が触れる。瞬間、思考が揺さぶられるほどの快感が、冬里の体に走った。
「あ、……あっ……!?」
「可愛い、冬里。大好きだよ。声を聞かせて、顔を見せて。僕だけに」
加賀の唇がそのまま冬里に触れる。ちゅ、ちゅ、と優しく零れ落ちるキスに、冬里の体がひくついた。おかしい。どうして、こんなに感じてしまうのだろうか。
加賀以外の人が肩や腹部に触れても、ここまでの反応はしない。加賀だけだ。加賀の指先が、加賀の唇が、感覚をひどく鋭敏にさせる。
「やっ、あ、やだ、さわらな……いで……」
「どうして? お腹のあたり、くるくるって触られるの、好きでしょう?」
衣服の上から、まさぐるように手の平で腹部を撫でられる。緩急をつけた撫で方だった。どこかを探すように指先でノックされて、それに背骨が震えるほど快感を覚える。
「おか、ひ、おかし、いぃ……っ」
「おかしくなんてないよ。冬里、お腹、ふふ。子宮があるあたり、触られるの、大好きでしょう」
く、と指の腹が下腹部を撫でる。瞬間、太ももがびくびくと痙攣をした。加賀が笑って、そのまま冬里に口づけてくる。玄関口で組み敷くように、逃げられないまま舌を絡め合わせる。冬里の口内全てを愛撫するように動く加賀の舌が、不意にぐ、と喉の奥の方に入って来た。
反射的に喉が痙攣し、えづきそうになる。加賀の舌先からとろりとした液体が喉の奥に落とされていくのがわかった。苦しさしかない行為なのに、僅かな快楽を脳が拾いあげていく。脳の奥がぱちぱちと爆ぜるような感覚があった。
舌が戻り、そのまま冬里の舌を吸う。歯を一つ一つ検分するように舌先が撫でて、上顎をゆっくりと舌の腹で撫でられた。
丹念に口内の愛撫を繰り返し、そうしてようやく、加賀の唇が離れる。そうして、加賀はふ、と息を零したまま、冬里の秘部に押しつけるように膝をくっつけてきた。ぐりぐり、と動くと、嫌らしい水音がそのまま玄関に響く。
「あ、あ、ん、んぅ、それ、ぐりぐりって、しな、しにゃ、いで……っ」
「どうして? 気持ち良さそうなのに」
「あ、あ、や、んん……っ」
思考が煙る。先ほどまではこの場から逃げ出すことばかり考えていたのに、今は加賀に抱かれたくて仕方が無い。思考を加賀との行為に対する欲だけが占めていく。加賀は冬里の下を脱がせると、そのまま秘部に手で触れてきた。先ほどよりも柔らかに指先が触れ、快感に固まるそこを、柔らかく解すように動く。腰が震え、ほとんど無意識的に動く。足の先が突っぱねるような感覚があった。
「い、イって、る、イっちゃ、あ、あ、なんで……なんでぇっ……」
「どうしてだろうね。ふふ。敏感な体。僕に触られただけで、こんなに簡単にイっちゃうなんて」
ぬちぬち、と強く音を立てるように触られて、冬里は首を振った。絶え間なく続く快楽の余波が、いつまでたっても無くならない。
「んっ、んぐ、あ、あ、ん、ぅう――ッ」
「可愛い。冬里の愛液が、とろとろって溢れてくる。ねえ、――はやく、中にいれてほしい?」
「ん、ん、あ、ほ、ほし……っ、ほしい……っ」
浮かされた思考で、必死になって縋るように言葉を続ける。加賀が笑った。そうして、「駄目だよ」と囁く。
「今は、駄目……、でも、もう少し経ったら、冬里の希望通りにしてあげるから。沢山、沢山、中に出して――僕との子ども、孕んでね」
耳元で言葉を続け、加賀は冬里の耳元に唇を寄せた。耳の形を撫でるように舐められて、冬里の腰がひくひくと震える。
今欲しい。今、今、今。必死になって訴えようとするが、冬里の体を愛撫する指先が、冬里に意味のある言葉を言わせない。
「イく、イく、また……っ、またぁ、イっちゃ、あ、あ、や、ら、やだ、ひ、う、――ん、ンぅう……っ」
「可愛い。ねえ、冬里、冬里、沢山、気持ち良くなってね。沢山イかせてあげる。それこそ、気を失うくらい。そうしたら、冬里、もう僕から逃げようなんて、思わないでしょ?」
指先が秘部の、敏感な部分をこねるように動く。自身の中が収縮するような感じさえする快楽の最中で、冬里は加賀によって何度目かわからない回数、イった。
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