私を保護した第二王子が嘘ばかり吐いてくる

うづき

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34-1 これからは全ての時間を ※

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「フェリクス殿下と婚姻を結んだと聞いたよ!」

 昼過ぎ、奏の部屋を訪ねてきて開口一番にステラは言葉を弾ませた。突然の来訪に呆けてしまっている奏の元へ、ステラは足早に近づいてくる。そして手袋に包まれた奏の手をぎゅうっと握り絞め、「素晴らしいことだね!」と高らかに笑う。

「もう本当に、傍から見ていてお二人のことはずっとハラハラしていたからね……本当に嬉しいよ。これから先は是非私のことは義姉上あねうえと呼んで欲しい」

 ステラから零れる言葉は早口で、大分興奮していることがわかる。奏は軽く瞬いた後、ステラと繋がった手の平に力を込めた。

「……ステラ様が居なかったら、多分、こんな風にはなっていないと思うので……なんてお礼を申し上げたら良いか」
義姉上あねうえ、義姉上、だ! お礼は良いから義姉上と呼んで欲しい。私はきょうだいが居ないから、そう呼ばれたくて仕方無いんだ。フェリクス殿下は私のことをステラ様と呼ぶし、こうなったら聖女様にお願いをしてどうにか今から呼んでもらうしか――」

 とんでもない勢いである。よほど姉と呼ばれたくて仕方無いのだろう。考えて見れば、ステラにフェリクスとのことを話した時も『義姉上と呼んで欲しい』というようなことを言っていたように思う。兄弟姉妹関係に対して並々ならぬ羨望があるのかもしれない。
 初めて見るステラの側面に奏は驚きながら、小さく笑う。ここまで頼まれているのに、それを固辞することは出来ない。

 ――それに、奏にとって、ステラは本当に恩人である。ステラが居なければ、奏はどうするかずっと悩んでいただろう。
 そして、いずれ、フェリクスが国の為の結婚をするのを見て、自分の選択に後悔をしながら元の世界に帰っていたのかもしれない。

「……義姉上、ですか?」
「そう……! そうだよ! 聖女様! 国に持ち帰ろうかな」

 早口に紡がれた言葉に奏は笑う。冗談と捨て置くにしては、全然冗談っぽくない雰囲気が滲んでいた。本気でそう思って居るのだとしたら、なんだか逆に嬉しくなってきてしまう。
 奏が小さく笑うと同時に、扉がノックされる音が耳朶を打つ。誰ですか、と声をかけると、「フェリクスだけど」と聞き慣れた声が耳朶を打った。

「ここにステラ様が入り浸っているという話を聞いてね。連れ戻しに来たよ。入っても?」
「入れたら駄目だ!」
「……入るね」

 ステラが奏に耳打ちする。ただ、その声はどうやら確実にフェリクスにも聞こえていたようである。有無を言わさない口調で扉が開いた。フェリクスが奏と、そして奏の手をぎゅうっと握り絞めたままのステラを見て、「何をなさっているのですか?」と相好を緩めた。確実に社交辞令的な笑みであるということがわかる、温度の無い笑顔だ。

「兄上がステラ様のことを探されていましたよ。即刻、今すぐに、奏の傍を離れて兄上の元へ向かって下さい」
「フェリクス殿下はいつも私のことを邪険に扱うね。聖女様を私に取られるとでも思って居るの?」

 ステラが奏に身を寄せてくる。フェリクスは軽く首を振って、「全く」と囁く。

「奏が好きなのは私ですし、私が好きなのも奏です。お引き取りください」
「……言うなあ……、わかったよ。仕方無いな」

 フェリクスの言葉に、ステラは一瞬だけ呆けたような顔をして、それから奏から体を離した。去る直前、奏の耳元で「これからも義姉上と呼んで欲しい。あと、気安く接しても欲しいな」と囁いた。

「私達は家族なのだから」
「……はい、あ、ええと、……が、頑張ってそうします」
「うん。そうして。それじゃあね、奏。また今度……次会うのは婚約のお披露目パーティーの時かな!」

 ステラは弾むような口調で囁くと、室内から出て行く。扉が閉まるのを眺めてから、奏はフェリクスへ視線を向けた。思わず頬が緩んでしまうのを止められそうにない。
 室内の使用人に人払いを頼んだ後、フェリクスは奏の傍に近づいてくる。ふ、と息を零すように表情を和らげて、奏の頬に触れた。

「なに。何か面白いことでもあった?」
「いや、……愛されていることに自覚が出来たようで何よりだなあって」

 奏の言葉にフェリクスが瞬く。「だってそうでしょ?」と首を傾げながら続けられた言葉に、奏は頷いて返した。
 フェリクスの傍に近づいて、そっと抱きしめる。僅かに息を詰まらせる音が頭上から聞こえて、程なくしてフェリクスの手が奏の背に回った。

「褒賞を貰うことになった時、傍に居たい人が居るって言ったらフェリクス、全然自分のことだと思ってくれなかったから」
「あれは――、……」
「私の好意というかそういうの全然伝わってなかったんだなあって」
「……伝わっていたよ。僕かもしれない、とも思った。けれどそれ以上に、僕じゃないかもしれない、という恐怖が上回ったんだ」

 フェリクスは囁いて、それから首を振る。

「いや、恐怖というより、確信めいた気持ちだった。僕じゃない。僕は選ばれることはないだろう、と」

 それは、多分、フェリクスの奥底にずっとある気持ちなのだろうな、と奏は思う。
 幼い頃に毒を盛られて、生死の境を彷徨ったこと。そして、その上で虹彩が変化してしまったことや、当時の婚約者から毒を盛られたことを理由に婚約破棄されたこと。それら一つ一つの思い出が、フェリクスの「自分は選ばれない」という感情の根底を築いてしまっていたのかもしれない。

「……未だに、時々信じられない時がある。自分に都合が良すぎるから。朝起きたら、奏は居なくて、僕は元の生活に戻っているんじゃないかって」

 震えた声音だった。――奏がアレウスの元へ、公的な謁見のために呼び出されてから、二週間ほど経つ。
 アレウスの計らいにより、フェリクスと奏は名実共に婚約関係を結ぶことになり、その上で次の季節には婚約披露のパーティーを行うことになった。
 奏の聖女としての価値は高まり、いくつかの貴族から領地に存在する禁足地に関する相談の連絡が来ているようである。それもあって、今後、聖女である奏を自身の懐に入れようとする存在は多くなってくるはずなので、それの防止策として――というのもおかしいが、フェリクスとの婚約は早い内に発表した方が良いだろうということになった。

 日々の諸事雑務に加えて、唐突に婚約披露のパーティーに関する仕事が入って来たので、フェリクスはいつも忙しそうにしている。奏もいくつか手伝いをしたが、貴族へ招待の手紙を送ったり、パーティーの飾り付けなどに関する仕事もあり、中々に日々大変である。

 そんな忙しさの中でも尚、フェリクスはずっと不安を抱いていたのだろう。朝起きたら奏が居なくなっているかもしれない恐怖を抱きながら、眠りにつくのはどれほど心に負担をかけているのだろうか。
 奏はそっと息を零す。一瞬、――一瞬、頭を、打開策めいたものが過った。起きるときに不安なら、寝る時一緒に居たら良いんじゃ無いか、なんて、そんな考えである。

 でもそれを奏から言い出すと、なんだか、少しはしたなさがあるというか、恥ずかしいというか。羞恥心と、フェリクスの不安を取り除きたい気持ちを天秤にかけて、直ぐに奏は決心する。
 奏が恥ずかしいだけなのだから、それを我慢すれば済む。こんな選択は、天秤にかける必要すら無い。

「……これは! フェリクスの不安を解消するための! 提案なんですけれど!」
「何? ふ。あは。どうしたの急に。声大きいし、顔赤いし」
「か、からかわないでください……」
「ごめん」

 フェリクスが笑いながら眼差しを細める。甘い感情がそのまま虹彩に滲んでいるのがわかるようだった。愛おしい相手を眺める瞳で、奏をじっと見つめて、その頬に唇を重ねてくる。
 フェリクスは、奏の赤く染まった頬に、楽しげにキスを何度か落とした後、「提案って?」と囁いた。

「……寝る時が怖いなら、一緒に寝ませんか? そうしたら、寝るときも起きるときも一緒なので、不安も少しは軽くなるかなあと」
「えっ。……良いの?」
「もちろん、大丈夫です! フェリクスの部屋に行けば良いですか?」
「ううん、部屋はここで。夜に出歩かせるわけにはいかないからね。仕事が終わったら向かうよ。本当に良いの?」
「良いです、起きて待ってますね」

 頷いて返すと、フェリクスは嬉しそうに微笑んだ。甘くとろけるような笑顔で、奏のことを抱きしめてくる。

「ありがとう。じゃあ今日からお邪魔しようかな。夜を楽しみにしているよ」

 奏の額に口づけを落とし、フェリクスは一度だけ強く奏を抱きしめた後、ゆっくりと体を離す。

「それじゃあ、僕もそろそろ行かないと。奏はゆっくり過ごしていて。また後で」
「はい。また後で」

 奏は頷いて返す。フェリクスは嬉しそうに目元を赤らめて、踵を返して部屋から出て行ってしまう。
 入れ替わりに、人払いを命じられていた使用人――ステリアが戻ってきて、奏の様子を見て楽しげに表情を緩ませた。

「お飲み物のご用意をいたしましょうか。何を飲まれますか?」
「……落ち着くようなものがあるとありがたいです……」

 少し顔が熱い。なんだか、大変な約束をしてしまった気もするが、もうしてしまったものは仕方無いし、それにきっと、今の状況を何度やり直したとしても、奏は同じ選択をするだろう。
 恥ずかしさとか、そういったものよりも、フェリクスの方が大事だ。とは言っても、口に出した言葉の大胆さに気付いていないわけでもないので、鼓動が少しばかり早くなってしまうのは、もうどうしようもない。

(夜……)

 一緒に眠る時、平静で居られるだろうか。また顔を赤くして、フェリクスにからかわれることになるかもしれないな、なんて思いながら、奏は来賓用のソファーに腰を据えた。


 時刻が過ぎ、夜の帳がそろそろと外を染め始めた頃、軽いノックの音が響いた。
 室内に居たステリアが応対する。程なく扉が開いて、フェリクスが入って来た。

「奏。こんばんは」

 奏を見ると同時に、フェリクスは甘い感情を隠そうともしないまま、表情に乗せる。その表情を見ると、とんでもなく愛されていることがまじまじと理解できるので、奏としてはなんだか少しばかり恥ずかしい。
 フェリクスは対応してくれたステリアに人払いを命じると、室内に入ってくる。普段の服装と比べると、寝る前の服装ということもあってか今日の衣服はゆったりとしたものだ。隙がある、というと語弊を招くかもしれないが、親しい間柄の相手にのみ見せる姿であるということは、恐らく間違いようがないだろう。

「こんばんは、早かったですね。もう少し遅くなるのかなって思ってました」

 奏は読んでいた本を閉じる。フェリクスの業務量について、奏は完全に理解しているとは言いがたいが、それにしたって今日は早い。
 ソファーから腰を浮かして、フェリクスの方へ向かう。

「それはまあ、頑張って仕事を早めに終わらせてきたんだよ。折角だしね。一緒に寝る初日から、深夜になってしまったら嫌だし。なんなら明日の朝の分も出来る限り終わらせてきたよ」
「それは……大変だったのでは……」
「少しね」

 フェリクスは囁くと、奏の肩口に額を寄せてきた。そのまま軽くこすりつけるようにぐりぐりと頭が動く。甘えたような行動に、奏は笑った。

「ふふ。頑張りましたね」
「……うん、頑張ったでしょ。奏は? 何をしていたの?」
「本を読んでいました。少しずつ難解な本にも挑戦出来るようになったんですよ! それに、手を使わずとも読めるようになってきて」

 奏は胸を張る。今までは、文字を読む時に指を紙面に滑らせて読んでいた。そうすると、書かれている文字が脳裏に浮かび上がり、簡単に読書を進めることが出来たのだ。
 だが今は、もちろん指は使うが、少しずつ控えめにしていっている。この世界で暮らすと決めた以上、指で触れないと文字が読めない、という状況は打開すべきだと考えたからだ。

「へえ。流石だね。――そうだ、ねえ、奏。ルーデンヴァールの文字ではなく、奏の世界の文字で、奏とはどうやって書くの?」
「私の世界の文字ですか? 手をお借りしても?」
「うん。どうぞ」

 フェリクスが手の平を奏に対して向ける。その手の平に、指文字で奏、と書いてみせると、フェリクスは一瞬だけ呆けたような顔をした。
 軽く眉根を寄せ、「……難しいね」と囁く。ルーデンヴァールには漢字なんて概念はもちろん無いので、奏という文字はフェリクスにとってしたらとんでもなくへんてこな文字に思えたのかもしれない。

「そうですね。難しいかも」
「……でも、覚えたい。今度紙に書いてくれる? 練習をするから」
「そんな。そこまでしなくても良いのに」
「僕がしたいんだよ。それだけだ。奏の文字を覚えたい」

 囁くように言葉を続け、フェリクスは少し躊躇うように視線を揺らした。間を置いて、「今日、来る前に、体の検査をしたよ」とだけ囁く。
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