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10-2.冗談と本気 ※
しおりを挟む「ひ、あっ、……う」
「ふふ。可愛い。顔、真っ赤で、……涙も出てて。エステル、大好きだよ」
フィラスはエステルの涙を掬うようにして舐めて、エステルの手をようやく離した。解放されたのだから、すぐにフィラスを突き飛ばして逃げるべきだろう。そう思うのに、エステルの体は思うように動かない。
呼吸するのにすら、体がひくつく。フィラスが嬉しそうに目を細めた。
「可愛い。沢山開発した甲斐があったなあ」
「……は、……っ」
「エステル、大好きだよ。ね、ふふ、ここも沢山解さないといけないね」
フィラスの指が動いて、エステルの下腹部に触れる。そのまま、フィラスは器用にエステルの下を脱がせると、下着の上から濡れた部分をなぞるように指を動かした。
「ひ、あ、や、やだ、フィラス、なんで、なんでっ……?」
「どうして? 好きな人と触れあいたいのに理由って必要ある?」
「すき、な、人……?」
「そうだよ。エステル。君が僕のことを起こしにきてくれるようになってから、僕はずうっと、君のことが大好き」
言葉を、あまり、理解出来ない。フィラスがエステルの下腹部に顔を寄せた。下着の上から、なぞるように舌を動かされて、エステルはびく、と肩をふるわせる。
何を――何をして、いるのだろう。
「何、なに、やめて、フィラス、き、きたない、から……っ」
「汚くないよ。エステルの体で、汚い場所なんて、どこもない」
下着の上からじゅう、と吸い付かれて、エステルは小さく悲鳴を上げる。必死になって腰をよじろうとするが、フィラスの手が腰を掴んでいて、自由に動かすことが出来ない。
下着の表面をずらすようにして、フィラスがエステルの秘部に触れる。形を辿るように舌を動かされて、エステルは息を詰まらせた。
目の前で起こっていることの処理が、一切出来ていない。何がどうして、こんな、何で。そんな言葉ばかりが頭を巡って、それ以上先に思考が進まない。
好きな人? 誰が? ――私が? フィラスの?
ちゅう、と花芽に似た部分を、フィラスの口が吸う。舌先でゆっくりと愛撫されて、エステルの足先に力がこもる。
「ふ。あは、可愛い。ここ、ぷっくりして、……興奮してるんだね、エステルも」
「――っ、やめ、やめ、て……っ」
「止めない。ねえ、エステル、君は自分の命が僕より短くて、すぐに死んでしまう、というようなことを言うけれど、――もうそんなこと、気にしなくて良いんだよ」
「何、な、ひ、っ、あ、あっ、や、んっ」
フィラスが舌先を窄めて、エステルの内部に触れる。その間、親指で緩く周囲をなぞるように花芽を愛撫されて、エステルは肩を震わせた。
「これからはずうっと一緒だよ、エステル」
舌先がエステルの内部をゆっくりと舐め上げる。零れる蜜を吸うようにして、フィラスはエステルの秘部を優しく愛撫する。
波のように襲い来る快楽が、また破裂しそうな程に大きくなっていく。ちゅ、じゅちゅ、と淫猥な音が室内に響いて、その度にエステルは呼吸が上手に出来なくなる。心地よさと、それ以上の、どうしようもないくらいの、快楽によって。
「ひ、あ、ま、って、おねが、かお、離して、イ、く、イく、からぁっ、お願い、お願い……っ」
「やだ。ねえ、僕の目の前でイってよ」
必死になって懇願するが、フィラスは聞く耳を持たない。好きな人の目の前で、みっともないくらい体を震わせて、蜜をこぼし、達するなんて、どうしようもなく恥ずかしい。
どうしてこんなことになっているのだろう。――どうして? わからない。エステルの言葉にフィラスが怒っているのは確かなのだろう。エステルがフィラスの未来を案じるような事を口にするのが、彼にとって苛立ちの種となっていることは、なんとなく理解出来る。
けれど、でも、だって。
少ししか生きられないエステルにとっては、フィラスの幸福を願うことしか、出来ないのに。
「あっ、あ、ひ、すわな、いでっ、イ、っちゃ、う、来る、来て、る、ぁ、っ、んぅっ」
少しだけ性急さを増した愛撫にエステルの足がぴん、と突っぱねる。思考の隅で何かが弾けるような音がして、先ほどよりも深い快楽が身をずたずたにする。
「あっ、あっ、イ、っ、く、イく、イうぅ……っ」
腰が跳ねる。背筋が反れて、エステルの視界が一瞬だけ白くなる。それが終わった後も、絶え間なく快楽の余波は続いていて、エステルは必死に呼吸しながらフィラスの頭を叩いた。
「も、や、だ、やめて、ごめん、ごめんなさい……」
「どうして謝るの? ごめん、じゃなくて、傍に居る、って言ってよ、ねえ、エステル」
フィラスがエステルの肩口に顔を寄せて、くすくすと喉を鳴らす。指先が濡れそぼった部分を撫でて、ゆっくりと内部に入り込んだ。
異物感――は、感じない。腹の内部を撫でるように動く指先によって、甘くて切ない感覚がエステルの中に生じる。
「あ、や、まって、まって、なんで、ごめん……っ、ごめ、んなさい。もういわな、怒らないで……」
「ふふ。可愛い。ずうっとこうしたかった。やっぱり沢山反応が返ってくると嬉しいね。ねえ、エステル。君はいずれ僕のことを捨てよう、とか思っているのかもしれないけれど、そんなこと、許さないよ」
指先が奥の方までなぞって、ちゅぽ、と引き抜かれる。蜜に濡れた部分を擽るように指が動いて、ゆっくりとまた指が差し込まれた。
「ここに、僕と君の子どもを作ろうか。ねえ、孕んでよ、エステル」
「は――、あっ、え……?」
「エステル。エステルはね、もう僕以外とは過ごせないんだよ。君が他の誰かと過ごそうと思っても、もう君は他の誰かと同じ時間を過ごすことは出来ない」
どういう意味なのだろうか。わからない。涙に濡れた顔で、エステルはフィラスを見つめる。肩口に額を押し当てて、くすくすと喉を鳴らしながら笑い、フィラスは「ねえ、エステル」と笑みを浮かべた。
ぞっとするほど、美しい笑い顔だった。
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