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7-2.嫉妬 ※
しおりを挟む「ひ、は、フィラス、なに、なに……?」
「駄目だよ。エステルは僕と結婚するんだから」
フィラスは呼吸の合間に囁くと、そのままもう一度エステルの口の中を愛撫し始める。上手く呼吸が出来なくて、エステルは必死になって口を離そうとするが、フィラスの手がエステルの顎を固定していて、どうにも出来ない。
唇が離れる度に必死に呼吸をしていると、フィラスが笑った。
「ふふ。キスの時、息を止めるの、癖?」
「な、なん、なんで、フィラス」
「なんで? だって、当然だよ。君は僕のお嫁さんなんだから。他の男と会話して、楽しそうにして――そんなの、駄目だよ」
フィラスの指がぱちん、と鳴った。瞬間、意識がふわふわと淀むように溶けていくような心地がする。自分の体なのに、全く自分の意思では動かせない。
「ねえ、エステル。自分で少しだけ弄ってみてよ」
「え……?」
「気持ち良い所、触るの。出来るでしょう? 僕が沢山、君の体にしたみたいに」
気持ち良い所。紡がれた言葉が頭の中で反響する。エステルは指を動かして、そのまま衣服の前を開いた。普段、隠されていて、日に当たらない場所を、ゆっくりと晒すようにする。
柔らかな胸元にそろ、と手を伸ばして、そのまま先端の縁をなぞるように指先を動かした。自分で動かしているのに、ぞくぞく、と背筋が粟立つような感覚を覚える。
「あ、――あっ、きも、ちい、……っ、ここ、すき……」
「ふふ。知ってるよ。ここ、好きだよね。舌で撫でられるのも、指で触れられるのも、エステルは好きでしょう?」
「ん、んっ、好き、好き……っ」
舌で撫でられた覚えも、指で触れられた覚えも無い、のに、その時の感覚が蘇って、エステルの背筋が軋む。ぐ、と反るようにしてエステルは自身の胸元を指先で愛撫した。やわやわとした力で触れて、そのまま先端を指先でくり、と撫でると、それだけでどうしようもない感覚が腰から頭の先まで抜けていく。
「ひ、あ、っ、すき、好き、ここ、触るの、好き……」
「可愛い。ねえ、僕にも触らせて、エステルの気持ち良い所」
言いながら、フィラスがゆっくりと舌を這わせて、そのままエステルの先端を口の中に含む。舌先で撫でるようにこねられて、エステルは息を飲んだ。
自分で触れるよりも段違いに気持ち良くて、腰が震える。
「あっ、あ、ん、ぅう、きもち、いい、すき、好き……っ」
「ん、ふふ、可愛い、エステル、ねえ、レーヴェって呼んで」
「は、あ、レーヴェ……?」
「うん。ね、僕のこと、僕の名前、エステルだけが知っているんだよ」
フィラス――レーヴェが、嬉しそうに笑う。僕の名前。フィラスは、フィラスではないのか。いや、こんな会話を前にもしたような気がする。――いつ? 覚えが無い。
エステルはレーヴェ、ともう一度名前を呼ぶ。唇で食むように先端を愛撫されて、声が甘く響いた。
「可愛い。……僕の名前はいつまで経っても覚えられないのに、気持ち良いのは覚えちゃうんだね」
「んぅ、あ、……っ、ごめ、なさ、い……?」
「謝らなくて良いよ。大丈夫。何度だって教えてあげる。何十回も、何百回もね。レーヴェだよ、エステル。僕のことをレーヴェと呼んで良いのは、この世界で君だけだ」
フィラスの指がそっとエステルの腹部に触れる。柔らかな皮膚を撫でるように動いて、そのままエステルの下腹部に指が潜り込んだ。既に湿り気を帯びた部分を、撫でるように指が動く。
「あ、……っ、――~~っ……!」
「ふふ。体、どんどん熱くなっていってる。可愛いね、エステルは。凄く凄く敏感で、――僕だけの、エステル」
「あ、あ、きもち、い、い、から、そこ、おかしくなる……っ」
花芽に似た部分を指先が優しく撫でる。それだけでとんでもない快感がエステルの体に叩きつけられて、エステルは息を詰まらせながら喘ぎ声を漏らすことしか出来ない。二本の指で、軽く挟むようにされてちゅこちゅこと動かされると、腰が跳ねそうになる。
「あっ、あっ、や、くる、きちゃう、きもちいいの、くる……っ」
「いいよ、可愛いエステル、大丈夫。気持ち良いところ、沢山刺激されて、イって」
「う、……っ、あ、――っ、……ッ」
ひく、ひく、と喉が震える。太ももがぶるぶると震えて、足先に力がこもった。気持ちよさがぱちん、と弾けるようにして消えて、余韻のように腰がひくつく。フィラスが嬉しそうに可愛い、と囁いて、エステルの唇にキスをした。舌を吸うようにしながら、エステルの下を脱がして、とろけきった部分に触れる。
つぷり、と指が中に入ってきた。
「あっ、……?! い、いた、い……っ」
「痛い? そっか、ごめんね。少し待って」
言いながらフィラスが指を鳴らす。瞬間、僅かな異物感が一瞬にして消え失せた。何の魔法を使ったのかはわからないが、エステルの痛覚を遮断するような魔法を使ったのだろう。
内部をゆっくりとこねるように動く指に、エステルは浅く息を吐く。お腹の内側を撫でられるような、なんともいえない感覚の中に、じわ、と快楽の余波のようなものがあった。
く、と内部を押されたと思うと、ちゅぽ、と中から引き抜いて、ひくつく部分を優しく撫でるように指が動く。焦らすように、そしてゆっくりと内部を解すような動きに、エステルは声を漏らす。
「ん、ふ、うっ、あ、あ、……っ」
「ふふ。可愛い。でも、エステル、沢山声を出したら、誰かが見に来るかもね。隣の部屋に居る――誰か、とか」
「隣の、へや……?」
「そう。あんまり壁は厚くないみたいだから。エステルが気持ち良い声出してたら、誰かに聞こえてしまうかもしれない」
エステルが小さく息を詰まらせる。それと同時に、ちゅぷ、と内部に指が入ってきて、ゆっくりと内部をこねられる。そのまま、親指で花芽をすりすりと優しく撫でられると、暴力的なまでの快楽がエステルの体を襲う。
「あ、……っあ、や、こえ、でちゃ、うぅ……っ」
「ね。エステル。声を出さないようにする方法を教えてあげようか」
「ん、んっ、なに、ぃ……?」
「キスしたら良いんだよ。ね。ねえ、エステル、キスして、って言って。そうしたら僕は喜んで君の口を塞ぐよ。誰にも声が聞こえないようにする」
フィラスは楽しげに笑う。エステルは、フィラスを見つめた。エステルの言葉を待ち望むように、こちらを見つめる白金色の瞳が、爛々と輝いているのがわかる。
獰猛な獣のような――そんな、欲を一切隠そうともしない瞳。エステルは必死に呼吸する。断続的に与えられる甘い刺激から、逃れるように目を潤ませた。
「レーヴェ、キス、して、キスしてほしい、おねが、い……っ」
「うん。エステル。キスしてあげる」
支配欲に濡れた瞳が嬉しそうに細くなる。フィラスが触れるだけのキスをして、回数を重ねる内に、それが深いものになる。
上手く呼吸が出来ない。喉の奥から零れ落ちる声は、二人の口内の中で溶けていく。反応を探るように動いていた指先が、エステルの気持ち良い所を確実に探し当てて、そこをゆっくりとこね回す。与えられる快楽が過剰で、エステルは必死になってフィラスの舌に助けを求める。
「んっ、ん、んぅ、レーヴェ、レーヴェ……」
「エステル。大好きだよ、大好き……、中、すっごくうねってる。指にきゅうきゅうって吸い付いてきて……可愛い、僕の指、離したくない、って言っているみたい」
とろとろ、と内部から蜜が漏れて行くのがわかる。気持ちよさに頭が真っ白になりそうで、エステルはフィラスの体にぎゅうっと手を回した。それと同時に、体のどこかで快楽が弾けるようにして、エステルの喉から甘い声が零れていった。
フィラスに回した手に力を込めて、エステルは体を震わせる。波のように余韻が訪れては、体がひく、ひくと動くのがわかった。
フィラスが唇を離して、エステルの中から指を優しく抜く。蜜によって濡れた手を舌先で舐めるようにして、フィラスは笑った。
「可愛い。エステル。もう駄目だよ、他の男と会話したり、楽しそうにしたら」
「ひ、……あっ、し、ない、レーヴェ、だけ、だから」
「僕だけ?」
「好き、なの、レーヴェ、だけ……だから」
「――うん。ふふ。可愛い。僕も、大好きだよ。好きなのは、エステルだけ。一生、ずーっと一緒に二人で生きていこうね」
フィラスが手を拭いて、エステルの額を撫でる。汗の滲んだそこを撫でられていると、睡魔が襲ってくるのがわかった。
エステルがうとうとし始めると、フィラスも同じように欠伸を零す。そうしてから、彼は軽く指を鳴らした。エステルの体を伝う汗が、太ももを濡らす体液が、まるで拭われるように消えていく。脱いだ服を着せられて、元通りになったベッドに、フィラスが当然のように体を横たえた。
「エステル。おやすみ。明日も僕を起こしてね」
「……レーヴェ」
「うん。エステル。大好きだよ」
フィラスが笑う。そっと体を寄せられて、エステルはほとんど気を失うようにして、眠りについた。
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