長命種の愛は重ため

うづき

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4-2.催眠 ※

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「ん、……え?」
「かわいいエステル。大好きだよ。お礼をしてくれる、と言っていたでしょう。今、貰うね」

 鎖骨を撫でていた指先が、ゆっくりと胸元に降りて、そのまま肋骨を辿る。へそ周りをくすぐられると、エステルは我慢出来ずに吐息を零す。

「くすぐったいよ、フィラス」
「あれ……?」

 くすくすと笑い声を零すと、フィラスが仄かに戸惑ったような声を上げた。エステルを見つめる白金色の瞳が揺れて、直ぐにとろけるように甘くなる。エステルの口元をすり、と指先が撫でた。

「口を開けて、エステル」
「ん……はい……」

 呼応するように、エステルが口を開ける。フィラスが微笑んで、いいこだね、と優しく声をかけた。唇を撫でていた指先が、エステルの口内に触れる。舌先を撫でるように指が動き、上顎を掠めるようにされると、ぞわ、とした感覚が背筋を駆け上っていくのがわかった。

「ん、ふ、ふぃらす……?」
「かかりが甘いのかなあ。でも、こういうのも時々は良いね。エステル、可愛い。僕以外の誰かと結婚をする、だなんて言わないで。ここから出て行くだなんて、言わないで。僕をずうっと起こしに来てくれるんでしょう?」

 口内を弄ぶように動いていた指先が、ゆっくりと離れる。そのまま、フィラスがそっと唇を近づけて、そのままキスをしてきた。エステルはなされるがまま、フィラスの行動を受け入れる。
 舌先が絡まって、内部の唾液をかき乱すように動く。吸われると、瞬間、腰がびくりと跳ねた。フィラスが笑って、「きもちいい?」と囁く。エステルは息を零しながら静かに頷いた。

「ん、うん、きもち、いい……きす、きもちいい」
「良かった。僕も、エステルとキスするの、好きだよ。沢山しようね」

 ちゅ、ちゅ、と唇を重ねあわせながら、フィラスが笑う。もう一度、柔らかな舌がそっと押し入って来て、それを受け入れるようにエステルは舌を動かした。
 フィラスの舌が動く度に、一瞬だけ呼吸が止まりそうになるほどの感覚を覚える。顔に熱が上ってくるのがわかった。きっと、エステルの顔は端から見てもわかるくらい、真っ赤になっているはずだ。

 フィラスが唇を離して、エステルの額に自身の額を押し当ててくる。触れあった部分が、熱を持っていて、あつい。エステルがフィラス、と名前を呼ぶと同時に、フィラスがぎゅうっとエステルを抱きしめた。

「可愛い、ああ、もう、すごく、……すごく、可愛い。好きだよ、エステル。大好き」
「フィラス……」
「うん。――ああ、キスだけじゃ足りない。ねえ、君の深い所に触れたい。君と一緒に熱を分かち合いたい、……」

 フィラスはエステルを抱き上げると、そのままベッドに向かう。手慣れた動作だった。普段から――ずっと前から、そうしているように、エステルを優しく寝かせ、その上からベッドに手を突く。

「ああ、でも、――奥に触れるのは、駄目、だね。まだ……、したら、駄目だ。だって、僕達は夫婦ではないんだから」

 言いながら、フィラスはくすくすと喉を鳴らして笑った。エステルの体を撫でるように手を動かし、そのまま腹部に触れる。へそ周りを辿るように動く指先によってもたらされる感覚が、じんと甘く走る。

「ん、……あっ……、フィラス……?」
「可愛い。大好きだよ、エステル。君の奥に触れるのは許されないけれど、それ以外の所には――触れても良いかな」

 なんて、とフィラスは笑う。

「答えてくれるはずないのにね」

 フィラスの手が衣服を優しく開ける。開かれた場所が、外気に触れて少しだけ寒い。肩が震えると同時に、フィラスの手が柔らかくエステルの胸を揉んだ。手の平全体を使って、こねるようにされると、エステルの唇から吐息が零れていく。

「ふ、……っ」
「可愛い。エステル、こうやって優しく触られるの、好きでしょう? だって、触れる度に腰がひく、ひくって動いてる」
「ん、ん、すき……」
「ふふ。ここも、……優しく触れてあげる」

 外気に触れて、そして柔らかく胸を揉まれて、僅かにツンと立った部分に、フィラスの指が触れる。こねるように指の腹で動かされて、そうかと思えば焦らすように周囲を触れるか触れないかの距離でくすぐられる。与えられる刺激に、エステルの体が敏感に反応をする。

「ふぃらす、……っ、ふれ、てぇ……」
「うん、……優しく、ゆっくり、ね」

 触れて欲しくて、エステルは首を振る。フィラスが僅かに息を詰まらせて、ゆっくりと胸に触れた。軽く弾かれるようにされたり、摘ままれてくりくりとされるだけで、体が震えそうになるほど気持ちが良くなる。浅い呼吸を繰り返しながら、エステルはフィラスの腕に触れた。男性らしい、均整の取れた美しい腕だ。

 フィラスの片手が、ゆるゆると下に降りていく。下着の上から指先が割れ目をなぞり、エステルは息を詰まらせた。覚えのない快楽が、背筋を腰から頭まで一気に登り詰める。

「あ……っ、あ、ん、ひぅ、……っ」
「濡れてる。キスと、胸で、沢山気持ち良くなったんだね。……可愛い。大好きだよ」

 下着の上から優しく境を撫でていた指先が、しっとりと濡れていく。くちくちと、水音が鳴って、それが酷く耳に触る。
 敏感な部分がふっくらと膨らんで、それが濡れた下着とこすれて、なんともいえないもどかしさが生じた。

「あ、あっ……、フィラス、……っ」
「可愛い。優しく触れるね」

 焦らすように、緩慢な速度でエステルの下着が取り払われる。糸を引きながら取り払われたそれを、フィラスはベッドから落とすようにして、そのままエステルの下腹部に顔を寄せた。白金の瞳が欲望に濡れている。舌先がそっと動いて、エステルの濡れた部分に触れた。生ぬるい温度のそれが、優しくエステルの敏感な部分を撫でるように動く。

「ん、っ、ふ、フィラス、あ、っ……っ」
「ちゅ、ふふ、蜜が溢れてくる。可愛い、感じやすくて……、えっちな体だね。最初の頃とは、ぜんぜん、違う。ねえ、エステルも興奮しているの?」
「はあ、っ、あ、あ……」

 鼻から抜けるような甘い声を零して、エステルは瞬く。最初の頃。とは、一体、どういうことなのだろう。全くわからない。覚えがない。ただ、煙の満ちた脳内は、直ぐに考えることを放棄する。だって、エステルはフィラスが好きで、だから――こうやって、えっちなことをするのだって、したくなかった、とは言えない。幼い頃に結婚してあげる、と言ってから、成長するにつれて、フィラスへの恋心は胸の奥にしまい込んだ。けれど、無くなったわけではないのだ。

 どこまでも神に愛された形をした、神の隣人が、エステルの体を愛撫しながら嬉しそうにしている。その光景がとんでもなく淫猥で、だからこそ、エステルの体は敏感に反応を示す。

「ん、ん、ふぃらす、すきぃ……」
「うん、僕も大好きだよ。エステル。ずっと一緒、だよね?」
「うん、ずっと、一緒……、一緒だよ、一緒……っ、ん……っ」

 敏感な部分を舌先でくすぐられて、エステルは息を詰まらせる。ぬるま湯の中に居るような心地よさがずっと続いている。ひく、ひく、と内ももが震えるのが自分にもわかった。表面を撫でるように舐めていた舌先が、すぼむような形になって、エステルの内部に触れる。

「んっ、……っ」
「逃げないで、エステル」
「あ、っ、あ、……」

 一瞬腰が逃げかけて、フィラスの言葉によって硬直したように動かなくなる。エステルは首を振った。舌先で内部を撫でながら、敏感な部分を指の腹で優しく擦られる。それだけでも、頭がびりびりするくらいの快楽を覚えるのに、フィラスの視線が――あまりにも優しくて、甘いから、エステルは何も出来なくなってしまう。

「内もも、痙攣してる。びくびく、って。そろそろイきそうなんだね」
「……ひ、……あっ、ん、んぅ、イき、そ、……っ」
「いいよ、イって。可愛い声、聞かせて、エステル」
「あ……っ、あ、あっ……!」

 ダメ押しのように太ももを撫でられて、エステルの体がびくん、と一度跳ねるように動く。それと同時に、背筋を駆け上るような快楽があって、エステルは息を詰まらせた。はあ、はあ、と荒い呼吸を繰り返す。

「ん、ちゅ、ふふ、かわいい、大好き、……好きだよ、エステル」
「……っ、ふ、あ、……はあっ、……」

 フィラスが口元を軽く拭う。そうしてからエステルの額にキスを落とした。熱を発散したばかりの体をぎゅうっと抱きしめて、そのまま横になる。抱きしめられているエステルはなすがままだ。

「はあ、可愛い。大好きだよ、エステル。――エステル、ずうっと一緒だよ……、ずっと、ずっと」
「フィラス……?」
「ふふ。ねえ、エステル。二人きりの時はレーヴェって呼んでよ。……お願い」
「……レーヴェ……?」
「そう。ありがとう。エステルはいいこだね。ごめんね。それなのに、僕は……、君の好意と優しさにつけ込んで、こんなことをしているだなんて知ったら、どうするんだろう。なんて、今更かなあ」

 ごめんね、とフィラスが続ける。エステルは倦怠感の残った体で、フィラスの言葉をぼんやりと受け止める。

「悪い大人で」

 静かな声は、悔恨のような感情を滲ませている。すり、とエステルの頭をフィラスが撫でた。柔らかな笑い声と共に、指を弾く音が聞こえて、エステルの思考は睡魔に犯される。
 眠ってしまいそうだ。――抗いがたい眠気に、エステルはぎゅうっと瞼を閉じた。

「エステル。僕のエステル。君の、――エステルの、レーヴェ」

 囁く声は子守歌のようで、エステルはすぐ、意識を手放した。
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