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十二月
三十日『地下鉄記念日』
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地下鉄の駅で晴日はそわそわと改札を出てくる人波を見つめていた。ずっと遠距離だった高校生のころを思い出す。当時大学生だった信周が帰省するたびに、晴日はこうして駅まで迎えに来ていたのだ。
やがて晴日がぱっと笑顔になった。手を振る先には今年の業務を終えた信周が。「お待たせ」と言った信周がふっと笑った。
「なに、ノブくん?」
「大学生のころ思い出した。ハル、いつも駅で待っててくれたよな」
「えっ、俺もちょうどそのときのこと思い出してた」
懐かしそうにくすくす笑う信周の前で、晴日は目を丸くする。
「ハルちっとも変わってないなあ」
ちょっと照れ臭くなって俯いてスヌードを口の上まで引き上げた晴日を、信周が優しく見つめている。ちっとも変わらないのは信周だって同じだ。晴日が信周を大好きなのも、信周が晴日を何よりも大切に思っていることも、これからもきっとずっと変わらない。
「よし、じゃ行こっか」
「うん」
信周が差し出した手を、晴日がぎゅっと握った。二人はこれから遅い夕食を食べに行く。
やがて晴日がぱっと笑顔になった。手を振る先には今年の業務を終えた信周が。「お待たせ」と言った信周がふっと笑った。
「なに、ノブくん?」
「大学生のころ思い出した。ハル、いつも駅で待っててくれたよな」
「えっ、俺もちょうどそのときのこと思い出してた」
懐かしそうにくすくす笑う信周の前で、晴日は目を丸くする。
「ハルちっとも変わってないなあ」
ちょっと照れ臭くなって俯いてスヌードを口の上まで引き上げた晴日を、信周が優しく見つめている。ちっとも変わらないのは信周だって同じだ。晴日が信周を大好きなのも、信周が晴日を何よりも大切に思っていることも、これからもきっとずっと変わらない。
「よし、じゃ行こっか」
「うん」
信周が差し出した手を、晴日がぎゅっと握った。二人はこれから遅い夕食を食べに行く。
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