今日は何の日？~俺たちは毎日、記念日を過ごしている~

十月

四日『天使の日』

　急なトラブルと残業のせいでくたくただった。シャワーから出てくれば、部屋にはやさしい出汁の香り。信周は胸いっぱいに香りを吸い込んだ。とたんにお腹がぐぐーっと鳴る。
　
「お疲れ様、ノブくん」

　にこにこと笑って駆け寄ってきた晴日が、信周の胸にそっと顔を押し付け背中に腕を回した。信周もぎゅっと晴日を抱きしめる。
　
　――ああ、天使だ。俺の天使。

　ふわふわと柔らかい感触がゆっくりと信周を癒していく。
　
「ねぇ、おじや作ったの。食べて」
「ありがと、ハル。めっちゃいい匂い」

　何てことない卵のおじや。今夜は何だか特別に優しい味がする。