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本編

二夜ー1 髪を洗うだけですから

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次にグランから呼ばれたのは1週間後だった。

「久しぶり。調子はどう?」

両開きの扉を開けながら声を掛けると、金色の瞳は伏せられ深いため息が返ってきた。

「それが……トモルにしてもらったように、お茶を飲んだり、肩を揉んだり、布をあてたりすると、眠気が来るようにはなったんだが。ーーなかなかあの日みたいに深い眠りまでいかないな」

そう話しながら迎え入れてくれたグランはソファにエスコートしてくれる。
並んで腰掛けると、グランはふかふかのソファに沈み込んでいった。

「眠気が来るなら、ちょっとだけよくなってる感じ? でも、ぐっすり眠れないのはつらいね」

「疲れもとれなくて……温かい布をあてるようになってから目は痛まなくなったが、頭痛は治らなくてな。トモルが来てくれた日と翌日は調子が良かったんだが」

「それもう薬飲んだ方がいいんじゃない?」

「体質的に薬が効かないんだ」

「そういえば、そんなこと言ってたね」

ハーブティーに何か仕込んだんじゃないかと疑われた時、確か毒も薬も効かないと言っていた。
毒が効かないのは良いことだけど、薬も効果がないなら良し悪しだ。

でも、アロマオイルやハーブティーで眠気が来るなら、気持ちがもっとリラックス出来れば眠れるようになるんじゃないか。

「なら、今日はお風呂に入ろうか。ーーお風呂あるんだったよね?」

前回きた時、お風呂とトイレがあると言ってきたのを思い出してきくと、キッチン扉とは逆の壁に2つ並んだドアの片方を指さされた。

「そこのドアの先が浴室だが。……性的な行為は駄目なんじゃなかったのか?」

「そんなんじゃないって。俺は入らないし。この前のあったかい布と同じ香りのお風呂に浸かりながら肩揉んだり、髪洗うだけだよ」

カバンから取り出した入浴剤を見せながら、説明するとグランは興味を惹かれたらしい。

「あの香りの風呂か……」

「ゆっくり身体を温めて、心も体もリラックス……気を緩めようよ。ね?」

再度誘うと、了承して浴室へ案内してくれた。

併設された脱衣所と浴室は曇りのないガラス戸で仕切られていた。

「脱いでるところお風呂から丸見えじゃん」

「私以外にここに入る者はいないからな」

「それなら気にしなくていい、のかな?」

どうでもいい話をしながら、濡れてもいいようにTシャツと短パンに着替えていると、隣に立つグランにガン見された。

「え、なに。どうしたの?」

「いや、何でもない……一緒に入らないと言っていたのに脱ぎ始めるからどうしたのかと」

「あぁ、ごめん。説明してなかったね。髪洗ったり、肩揉んだりすると濡れちゃうから着替えたんだ」

「そ、そうか……」

「準備するけど、お湯溜まるまでグランはソファで休んでる?」

入浴剤やシャンプーセットが入っビニールバッグを手に訊くと、首を横に振られた。

「いや、邪魔じゃなければ一緒にいさせてくれ」

「もちろん、邪魔じゃないよ」

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