36 / 42
7-6.
しおりを挟む「···茂倫さん、武器生成術の書は、"禁書"に指定されています。"禁書"というものがどういうものかを理解した上でおっしゃられているんですよね?」
粋凪を演じているはずの智彗様が、さすがに生成術の書を話に持ち出されてか、割って入ってきた。
「ええ勿論です!代わりにこちらから週に1度、1梁(=1t)の海産物を運ばせて頂きますよ?その禁書を欲しいとは言っておりません!貸して頂けるだけでけっこうですから!」
こちらのほしいものは聞かず、勝手に押し付けるというやり口は、志成さんと少し似ている。今日海産物を持ってきたのも、取引材料のアピールをするためだろう。
「申し訳ありませんが、"禁書"をお見せする訳にはいきません。あれはとても大事なものですから。」
はっきりと、茂倫さんの方を見据えそう伝えた智彗様。小さなままだが、初めて皇帝陛下としての威厳が垣間見えた気がする。(失礼)
元々淇帒国は好戦的ではないが、もし攻め入られたとしても、今なら景郷国と剱東溟という立派な後ろ盾がある。そのことも視野に入れた上で、智彗様は拒否したのだろう。
しかし茂倫さんが当然引き下がる事は無い。むしろ食いつきがよくなってしまった。
「では海水から作った塩もお付けしますよ!昔送った塩はすでに無くなっているでしょうから。」
「すみません。"禁書"は皇族しか使えない貴重な財産です。どうかお引き取りを。」
「ではこうしましょう!!そちらが望むものをできる限り手配するというのは?!」
おお!茂倫さんからその言葉を引き出すなんて、凄いよ智彗様!!でもさすがに禁書だけは、何にも代えられないだろうけれど。
「私たちが望むものは、当然書物です。まだこの地にはない書物に限りますが。」
「と言いますと?」
「別大陸の書物です。特に亜怜音大陸のものはまだうちにはありませんから。」
「ふむ。ですが違う言語のものなのに読めるんですか?」
「この大陸用に訳された、言語辞典が欲しいのです。」
「そんな辞典、存在しますかね?亜怜音は元々この大陸から一番遠いので、他国でも貿易をしているというのは聞いたことがありませんよ?」
「···では淇帒国の貿易商ではどのように亜怜音大陸とやり取りをされているのでしょうか?」
「勿論、うちの貿易商には通訳がおりますので!」
「ではその通訳の方に、ぜひ辞典を作って頂きたいのです。」
ええ!!言語辞典を作ってもらうの?!というか、禁書を貸すつもりなの智彗様?!!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
12
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる