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7-2.
しおりを挟む息を整える智彗様が、瑞凪様を見て言った。
「淇帒国から友好国になってほしいと申し出がありました!」
「···は?」
「え?淇帒国?」
「はい、昔交渉を持ちかけられ、うちの鉱山を持って行った隣国です!」
淇帒国とは幌天安の南東に位置する隣国で、別大陸に輸入する武器を作るため、鉱山がほしいと交渉をもちかけてきたらしい。海に面している淇帒国は、代わりに海から生成される塩と動物の毛皮を各数トン置いて行ったのだとか。
「···なぜ今になって友好国に?昔の交渉時にそんな話は出なかった。あの国は、やり方が綺麗ではないから、何か良からぬことを企んでいるのかも、な。」
「ええ、きっと何か裏があるに違いありません!」
いつにも増して慎重な2人。でもここまで他国のことを疑うのは初めてかもしれない。
「その淇帒国とは他にも何かあったの?やり方が綺麗じゃないって、どういうこと?」
「···この国は山脈に囲まれているが、淇帒国はうちの領土である山から、勝手に木々を伐採したという過去があるのだ。」
「ええ?!その事実は問い詰めなかったの?!」
「···それを見ていたのは、うちの検問所の兵士だけで、それでは証拠にならないと言われてな。」
「私たちも親を亡くして間もなかったので、戦になるのを避けるために深くは追及できなかったのです。」
確かにそんな国に友好国を求められたら、すぐにでもお断りしたい気分だろう。勝手に木々を盗んでおきながら今さら友好国に、なんて都合が良すぎる。
「でも瑞凪、淇帒国は少し前に、亜怜音大陸の一国と貿易を始めたそうなんですよ!」
「な···!亜怜音と?!」
「はい!!」
珍しく眼鏡の奥の目をキラキラと輝かせる瑞凪様。反対に座る智彗様を見れば、彼も同じように目を輝かせている。きっと亜怜音の本が手に入るかもしれないと考えているのだろう。
さっきまで神妙そうだったのに、とにかく本となると目がない2人。
でももし亜怜音大陸の言語辞典があれば、智彗様と瑞凪様は、この世界の言語をマスターすることになる。言語だけでなく歴史や文化の本も手に入れば、2人が歩く百科事典と言われる日も遠くはない。
それに上手く淇帒国と友好関係が結べれば、"知の聖地"が大陸を越えて伝わることになるかもしれない。
私はこの国の勇者として派遣されたのだ。ここで別大陸との繋がりを逃すわけにはいかない!
「智彗様!瑞凪様!3人でその淇帒国に復讐してやりましょう!!」
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