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4-4.
しおりを挟む俊恵さんは、金色のミディアムヘアで、初対面でもさらりと言葉を交わせる、人慣れした皇太子様だ。年は瑞凪様と同じくらいだろうか。
銀色の手甲、黄土色の装束に狐の毛のマフラー。よく言えば色っぽいイケメン、悪く言えばチャラそうな男だ。
対し、宰相である志成さんは、灰色の短い髪をオールバックにした髭の生えたオジサンで、黒地に白いラインの入った、落ち着いた装束を纏っている。
真面目というよりは少し偏屈そうな感じで、廊下を歩いている途中、瑞凪様に直接「子供を交渉の場に同席させるのはいかがなものかと」と言っているのが聞こえた。
「···我が弟は外交に意欲的でして、ぜひ勉強のためにも自ら同席したいと名乗り出たのです。もし邪魔になるようなことがあれば、退席させます···。」
と、準備していた通りの言葉を並べる瑞凪様。
志成さんは特に返事を返すことも無く、それよりも今はもう宮廷の老朽化に顔を歪ませていた。
会議室では、景郷国の俊恵さん、志成さん、そして騎士隊長の巧さんの3人と向かい合わせに座るが、なぜか俊恵さんは私の目の前に座っている。
「···さて、早速ですが、今回来ていただいた交渉内容を伺いたいのですが、」
「瀬里、君はどこか不思議な香りがするね。」
瑞凪様が交渉内容を問うも、俊恵さんが机に肘をつき私に微笑みかけた。
「え?!あっ!え!!、わ、私、変な臭いしますか?!」
「あはは、そういう意味じゃなくてさ。」
智彗様と志成さんが同時に咳払いをし、俊恵さんを睨みつけた。
「俊恵様、私からお話しますがよろしいですか?」
「いいよ志成。」
それでも尚「面白いね君」と私から目を離さない俊恵さん。
智彗様や瑞凪様のタイプとはまるで違いすぎて新鮮味がある。面白いのは俊恵さんの方だ。
「実は、今我々は、敵国と交戦中でしてねえ。」
「···え?···敵国?」
「ええ、ここより西に位置する西絽《せいろ》という国なのですが、この幌天安は、景郷国と西絽のちょうど中心にありましてねえ。」
志成さんが懐から4つ折りにした地図を出すと、それを広げて目の前にいる瑞凪様に見せた。
「率直に言いまして、我々の友好国になって頂きたいのですよ。」
「···友好国?」
「ええ、我々が西絽に攻め入る際の野営所や武器の保管庫として、領地を貸していただきたいのです。この国は山脈に囲まれていて、身を隠すにも都合がいいですからねえ。」
「えっ?!」
智彗様が驚きの声を上げると、皆の視線が智彗様に集中する。でも志成さんは気に留めず、話を続けた。
「何も武力を貸してほしいと言っているわけではありません。私とてこの国の状況は、それなりに把握しているつもりですからねえ。」
「···しかし、それではこの国が、その西絽に狙われる可能性は十分にあるかと、」
「もちろんその時は我々が幌天安を全力で守る所存ですよ。」
灰色の髭を触りながら瑞凪様に冷笑を浮かべる志成さん。
「代わりといってはなんですが、武器の保管庫にある武器はお好きに使っていただいてけっこうです。武器は武力だけではなく、狩猟なんかにもお使い頂けますしねえ。」
···「頂けますしねえ」って、幌天安を危険に晒しといて、そんな見返りじゃ全く釣り合ってないって!
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