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しおりを挟む書庫には壁面に沿って木の棚が並べられてはいるものの、きちんと棚に入っている本は少ない。なぜならほとんどが和装本で、棚に並べても本の柔らかさで傾いてしまうからだろう。
それと、智彗様と瑞凪様の性格も···。2人はとにかく自分たちが本を読めればどんな状態でもお構い無し。
すでに2人は床に座り込み、本がところ狭しと積まれた中で、本に読みふけっている。
皇帝が床に座るって···。せめて読むためのテーブルや椅子ぐらい用意すればいいのに。
私も何冊かとって中を開いてみた。
字は読めないが、挿絵を見る限り、色々なジャンルの本があると思う。
植物、動物、絵画、書道、絵本のように挿し絵が沢山描かれている幼児書、衣類、料理、建築、地図等々。
「智彗様と瑞凪様はどんな書物でも読むの?」
智彗様に近付き聞いてみると、彼は文字がビッシリと詰まったハードカバーの大きなを本読んでいた。
「はい!空想物語でも歴史でも実用書でも!私たちは文字であれば何でも読みます!」
「···因みに今智彗様が読んでいるのは、何?」
「これは法律の書です!とても分厚く、大きいのが難点なんですけどね。」
さすが、法律だけあって本の作りは綺麗だが、智彗様の半分はあるのではないかと思う大きさだ。今にも小さな智彗様が本に挟まれてしまいそう。
瑞凪様のところまで行くと、なんと彼はミミズの這ったような文字の本を読んでいた。
「え、ええっ?!瑞凪様!!それもこの世界の文字なんですか?!」
「···これは、他の大陸の文字だ。」
「他の大陸??」
「···この世界は4つの大陸に分断されている。海を渡った向こうに、別の大陸がある。」
「ええっ?じゃあ瑞凪様って違う大陸の文字が読めるんですか?!」
「····ああ、3つの大陸の文字なら読める。あと1つの大陸は、分からない。その大陸の書だけ、ないから。」
大陸ごとに言語や文字が異なるらしい。
因みに智彗様も3つの大陸の文字が読めるらしい。3つの大陸とは昔、お祖父さんが武器輸入の際に言語辞典を手に入れていたのだとか。
他国の皇族も別大陸の言葉や文字が理解できるのかと聞いたら、別大陸と取引している国の貿易商であれば通訳がいるとのことだが、皇族で理解できる人物は恐らくいないだろうとのことだった。そもそも戦に忙しい皇族に、多言語を学ぶ時間はないらしい。
別大陸の辞典まであるなら、もうこの書庫は財産の宝庫と云っても過言ではない。
「···そういえば、私って何で智彗様たちと言葉が通じてるんだろう。文字はさっぱり読めないのに。」
「それは勾玉の力だと思います。勾玉には異世界の言語を変換する力があると『派遣の書』に記されていましたから。」
···文字も読めたら、図書館に帰った時、中国古書の整理が楽そうなのにな。
いや、今は図書館の中国古書整理よりも、この書庫の整理の方が先だ。
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