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7-3.
しおりを挟むというか話が全然進まないからさっさと全員席につけ。でも皆ウロウロしていて、全然座ろうとしない。
それどころか、タンスの下から二段目をじっと見つめる秋人が、「無地系ばっかだな」と、あたかも下着が入っているのを見透かしているかのような発言をしたり、
トイレに行くと言った蓮見先輩は、トイレに入って10分は経つ。
心陽君は、鍋を作る(フリをする)私の後ろから、「エプロンすればいいのに」とか、「包丁使ってる時に後ろから抱きつきたい」とちょっかいをかけに来る始末。
参ったな···蓮見先輩がトイレから出てこないまま鍋食べるわけにもいかないし。
(勝手に3人がハッスルしてたら、1人だけ正常な先輩がポリスにコールしかねない)
と、ついにしびれを切らした私は、トイレのドアを叩いて、「先輩、私もトイレ行きたいんですけど」と言うと、ようやくハアハア言いながら出てきた蓮見先輩。
すかさず鍋を机のコンロに移動させ、「皆、先食べてて」と自然を装おい、にっこり笑ってトイレに入った。
トイレは玄関のすぐ隣にある。
ここで1分待ち、そのまま流れるように玄関から出ていけば完璧だ。
さて、誰が一番に媚薬の効果を発揮してくれるか。誰が最初に鍋を食べたか見えない分、楽しみも倍になるってもんだ。
ここまで山あり谷あり、本当に長かった。
何年BLへの思いを募らせてきたことか。
─────····そして、1分が経過した。
私はそっとトイレのドアに耳を当てるも、物音がしない。
皆セレブなだけあって、食器の音を鳴らさず、美しく鍋を食べているのだろうか?
ドアをゆっくり開け、隙間から外を見てみる。
────すぐに何かの気配を察知する私。
ハッとし、今度はドアの隙間から顔を出して見てみると、
なんと4人が4人とも、
トイレのドアと壁に耳を当てていた─────
『変態の創世と進化』序章 -完-。
違う違う、序章でもないし、完結もしていない。無駄に話が続くのは百も承知だ。
「ちょっと!!何してんの皆っ?!!!」
「見て分かんないの?皆で朱南ちゃんのトイレの音聞いてたんだよ!」
「信じられないし、もう何も信じられない。そういう都合のいい時だけ一致団結しないで!」
糞にもクズにも敵わぬ変態共だ。
私は再び皆を部屋に促し、座布団に座らせた。でも私がどこに座るのかとヤキモキしているようで、変に隙間を空けだす4人。
合コンにありがちな光景だ。
1人女子がトイレに席を立つと、すかさずその席を狙っていた男が動く。そしてそれを見た女がウズウズと、私たちも席替えしたい、あの男私の隣に来い!と、不自然に隙間を空けだすのだ。
まあ実際、狙ってる男は来ない場合が多いのだけど。
私は、部屋から出やすい手前あたりに座ると、隣には秋人と蓮見先輩がいて、嬉しそうに私に鍋をよそってくれた。
2人からそれぞれ器によそって貰い、2人共普通に私の前に置くもんだから、1つ器が足りない状態になった。
「いや、私、2つも食べないから、これは秋人が自分で食べなよ。」
と秋人に突き返せば、眼鏡の奥に光るものが見えたので、私はすぐに、その器に豚の睾丸を二つ入れて渡した。
「ほら秋人、これ食べなよ。これ伝説のドラゴンボウルっていう食材で、七つ食べると願いごとが叶うらしいよ?」
すると皆が一斉に鍋から豚の睾丸を探し始め、見事、鍋から睾丸がなくなった。
皆の器に睾丸が入ったところで、ようやく箸を取り始めた4人。
でも秋人がぶつくさと呪文のような、お祈りのような言葉を呟き始めた。
「神よ、朱南が誠心誠意、心を込めて作った鍋をお与え下さり感謝致します。」
確かに誠心誠意、心を込めて作らせてもらいました。
「朱南の手作り、まさかここにきてやっと食うことができるなんてっ」
琉生が涙を流すまいと、歯を食い縛り身体を震わせ始める。
4人ともが泣きそうな顔で「いただきます」をしている姿を見たら、少し胸がズキンと痛んでしまった。
なんてことはなかった。
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