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しおりを挟むいつもならここで私は変態たちに見つかり、彼らの失態を存分に晒されながらも、プロポーズされるというのがオチだが、そんなミステリアスエンドを私が4度も繰り返すわけがない。
悪役庶民とマッパに見つかる前に、私はこの部屋からずらかることにした。
部屋を出ると、ずっと自分の鼻が死んでいたせいか、やたら空気の澄んだ良い香りがした。
脱獄囚が脱獄に成功し、嬉しさのあまり雄叫びを上げるのが頷ける。
このまま走って走って、実家まで走って帰りたい気持ちでいっぱいだ。
私は自分の気持ちに正直になった。
本当に実家まで走って走って走ったのだ。
因みに学園から実家までは距離にして200㎏、車で約3時間半。それを私は自分の足で走って帰ろうとしたのだ。
でも途中で力尽きた。鹿やら熊が出そうな森の中で、私は寝そべり、意味もなく鼻歌を歌った。
周りには沢山の蝶や鳥、小動物、カモシカなんかが集まってきて、泣きながら私は昆虫や鳥類、哺乳類たちに変態の実態を知ってしまった苦しさ(?)を吐き出した。
あんなに優しくてイケメンで、ずっと私を大事にしてくれていたのに、それもこれも全部私がいけないんだ。いや、なんかもう、私は関係ない気もするし。
でも森の生物たちは、私が餌をくれると思って寄って来ただけで、すぐにいなくなってしまった。
とりあえず実家のバアヤに連絡し、森の中までレクサスで迎えに来てもらった。
バアヤは、「こんな山中、お一人でよくぞご無事で!!」とマジ泣きしていたが、私はある計画を沸々と煮えたぎらせていた。
────そもそも私が男装女子だったという設定は必要だったのか。
そう、必要だったから私は男子校で男装していたのだ。やっぱり私は、BLを間近でみたい腐女子なのだ。
腐っても女子、なのだ。
実家に帰ると、バアヤたちに、飴やサキイカを両手いっぱいにもらったが、私はそのまま研究室へと急いだ。
飴は個包装だからいいとして、サキイカとか丸出しのまま渡すのは勘弁してほしい。
研究室に籠ると、私は鞄からノートを取り出し、ある薬の開発計画を綴ったページを開いた。
授業ではいつも隣に秋人がいるとはいえ、授業中や自室で少しずつ作り方の手順を書き出し、製造方法をまとめていったのだ。
こうなったらこの薬を今から作り、奴らに飲ませて、思う存分楽しませてもらうしかない。
私のBL魂舐めんなよ。前世どころか、こんな漫画の中の世界でもダメンズウォーカーで終わらせるのは絶対に嫌だ!!
しばらく研究室に閉じこもっていると、バアヤたちが代わる代わる来て、
「朱ちゃん、冷める前にお風呂入んさい」とか「とんかつ揚げたてだから早よ食べんさい」などと言われ、「バアちゃんね、夜なべして寝袋編んだんだわ。」と手作りの寝袋を研究室の前に置いて行ってくれた。
バアヤたちはうちの実家に48人いて、今にもアイドルグループが作れそうだ。
そこから2日経ち、海外から帰って来たパパとママに呼ばれ、私は目の下にクマを作り、応接室に来ていた。
「朱南、調子はどうだい?なかなか上手くいっているようじゃないか!」
「朱南ちゃん、あなたママと違って貧相な身体の割になかなかやるわね!」
と身に覚えのないことを口々に言われる始末。
「は?」と不思議な声で返せば、机の上に置いてある資料を見せられた。
「神影財閥に、KAIDOエンターテイメント、そして蓮見商事と3社の御曹司からプロポーズされたんですって?!」
「凄いな朱南!モテモテじゃないか!!」
···は?
へ??
「御三家から正式に婚約の申し出があったんだよ。」
彼らのフットワーク、軽すぎだろう。外堀りから固める作戦ですか。
────てか、あれって本当にプロポーズだったんだ。
いくら思い出そうとしても、皆のプロポーズの言葉が思い出せない。
その資料にはどこまで書いてあるのだろう。ちゃんと変態の実態と、マニュアル操作方はついているのか?
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