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6-2.
しおりを挟む確かにこのまま3人に付き合っていれば、胃潰瘍にもなるし、こっちも情緒不安定になりかねない。
でも高校時代に、私が女であることを守ってもらった恩がある。もちろん今だって彼らは守ってくれている。
「朱南ちゃんてさ、なんだかんだ、イケメンにチヤホヤされるのが好きなんじゃない?」
「そ、そんなことは!」
大いにある、あるよ。
前世では100%イケメンと呼べる男とは付き合ったことがなかった。ギリギリ60%ぐらいのイケメンがいいとこ。
しかも、秋人たちのような変態はいなかったとはいえ、誰も私のことなんて一番には考えてくれていなかった。
追いかけるばかりの恋で、変態とはいえ、イケメンに追いかけられるのは全然悪くない。(本当か?)
「···僕は正直、朱南ちゃんが先輩たちに変態行為されてるの······我慢ならないよ···。」
「こ、心陽君···」
「ねえ、もうあの3人から離れてよ···。じゃないと僕····」
そう言って、心陽君が私の服の裾を掴み、ぐっと彼の方に引き寄せた。
私はつま先がもつれかけたけど、すぐに心陽君が背中に手を回し、支えてくれる。というか軽く抱き締められた。
「じゃないと僕、何するかわかんないからね?」
「えっ」
心陽君の吐息が首筋にかかって、私は急に恥ずかしくなった。
ずっと心陽君とはいい友達でいられそうだと思っていたけど、初めて心陽君を男として意識してしまったかもしれない。
というと、恋する一人の女子のようで聞こえはいいが、あの3人が酷すぎるため心陽君がやたらカッコよくみえてしまう、「泥中の蓮」「はきだめのツル」状態になっている。
「忠告はしたから、ね?」
弾くようなリップ音を私の首筋に鳴らし、「またね」と離れていった心陽君。
ヤバい·····。
私、今ちょっと、心陽君に「好き」という感情が芽生えてしまったかもしれない···。
私ってほんとゲンキンな奴だ。ちょっと前まで、心陽君は絶対に婚約者には選ばないって思っていたのに。。
部屋に帰っても私は、寝ることもできず、ぼーっと夜中まで過ごしてしまった。
翌朝、スマホをみれば、昨日秋人からきていたメッセージ以外にきているのは心陽君からのものだけで、普通に「おはよう( ・ω・)ノ」とだけ入っている。
自己主張しない、そのありふれた一言がなぜかとても嬉しく思えた。
今日も心陽君に会えるだろうか?····いや、朝からメッセージをくれるくらいだから絶対に会いにきてくれるだろう。
今日は2限から授業だ。
今から心陽君の部屋に会いにいってみようか?でも1年生は授業が1限からだから迷惑かもしれない···。
ウズウズとあれこれ考えながらも、結局心陽君を訪ねることなく授業に向かった。
寮の前ではオズオズと気まずそうにしている秋人が目についたけど、そこから秋人が私の後をついてきたかどうかはよく覚えていない。
お昼には学食に琉生がいて、気まずそうに、私の前に焼きそばパンだけを置いていってしまった。
授業の帰り、蓮見先輩が相変わらず男に囲まれているのが目について、その輪の中から軽く私に向かって頭を下げたような気がした。
「パパ」の存在そんなに怖いか。
こんなに平穏な日は久々かもしれない。
でも、その日は特に心陽君が私に会いにくることなく、校内や寮内で彼を見ることもなかった。
この、会えずにモヤモヤとした感情は、すでに心陽君に恋してしまっている証拠なのだろうか。
不必要に休憩室に行ったり、裏庭をうろうろしたりと、心陽君に遭遇できる確率を自ら上げにいった。
前世以来、人に恋するなんてことがなかった私はすっかり恋の仕方を忘れてしまっているようで、中校生のように、待ち伏せすることしかできないチキンになっていた。
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