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5-2.
しおりを挟む私をおちょくっていた2人はうどん同好会に所属しているらしい。
うどん同好会もそば同好会も、セレブ校らしからぬ同好会だ。むしろ合体したらどうだろう。
「朱良····最近ちゃんと食べてるか?ちょっとやつれ気味だぞお前。」
「ははっ···」
蓮見先輩が「じゃあ俺は急ぐから」と競歩並みの早さで行ってしまった。
「蓮見先輩、カッコいいよなあ~!どんなに忙しくても疲れを一切見せないし、ああいう男が社長に相応しい人間なんだろうな~。」
「こないだのそば同好会とのバトルを収めてくれたのも蓮見先輩の力だしな。俺、蓮見先輩だったら抱かれてもいいかもしんない~」
「マジで?!!じゃあとっとと抱かれといでよ!!」
私は「いきなり部屋におしかけて全裸でうろつけば、すぐに抱かれるんじゃない?!」と、とりとめのないアドバイスを2人に伝えておいた。
ただ、蓮見先輩はイケメンだからいいとして、うどん同好会の2人の顔面偏差値がもうちょい高ければ最高なんだけどな。2人とも伸びたうどんのような顔をしているから。
全裸徘徊を勧めておきながら、今さら2人の顔面が気になり始めた私。
やっぱりイケメンにはイケメンをあてがっていきたい。
大学の廊下には人だかり。
蓮見先輩が同級生の男たちに囲まれている。
「吉光ぅ、先週の政治学のレポート助かったわ!」
「蓮見先輩!また太極拳大会の助っ人頼みたいんです!!」
「蓮見さん!学祭のポスターの下書きこんな感じでいいですか?!」
誠実で頼りがいのある蓮見先輩は、毎日こんな具合に男たちの中に埋もれている。
教授の研究論文を手伝ったこともあるんだとか。
高校時代にやっていた生徒会長の印象が色濃く残っているのだろう。
「セーンパイっ。何見てんの?」
ボーっと蓮見先輩が男たちに囲まれている姿を眺めていた私に、心陽君が後ろから覗き込んできた。
「あ、おはよう心陽君。」
「おはようセンパイ。」
英語のロゴやニコちゃんマークがところどころに描かれている大きなパーカーに、膝にダメージの入った細身のジーンズを履いている心陽君。
「今日もお召し物がざわついてるね。」
「センパイこそ、僕昨日の格好見たよ?めっちゃ可愛いかったし!」
「は、ははっ···そりゃどうも。」
私が「じゃあね」と教室に入ろうとすると、心陽君が後ろからギュッと腰回りに抱きついてきた。
「ちょっ!!」
「センパイ···僕、昨日センパイにラインしたんだよ?何で未読スルーなの??」
え、ウソ。
知らない知らない。
私は鞄からスマホを取り出し、ライン画面を開くと目を凝らして確認した。
すると、琉生、秋人、広告、広告、広告の下に、心陽君からのメッセージが入っていることに気がついた。
『朱南ちゃんの今日のカッコかあいいね。』
凄いどうでもいいメッセージの上に、あまりにも普通すぎて目立ってない。というか他2名のメッセージが悪目立ちしてるせいだ。
心陽君は大学に入ってからというもの、私への敬語がなくなったのと、2人の時は「朱南ちゃん」と呼ぶようになった。
高校の時は、女に馴れてる感じが前世のダメンズを彷彿とさせていたが、今となってみれば弟みたいで可愛い。
「あーごめんね心陽君、昨日はちょっと、色々あって···」
「てかセンパイ、昨日神影先輩と皆藤先輩の部屋にいなかった?」
「え?!な、何で知ってるの?!!」
心陽君が後ろから私の耳元でそっと囁く。
「何してたの、僕のラインにも気づけないような凄いこと?」
息を吹きかけるように話されて、私はゾクリとした悪寒を背筋に走らせた。
「ち、違うし、」
「ねえどうなの。あいつらと何してたの。」
あかん。心陽君の息がちょっと荒い気がする。
何してたのって、私は冷めた目で2人の哀れな姿を静観してたにすぎないよ。
そんなあなたが興奮するようなことはないとも言い切れないけど、ほぼないよ。
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