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4-6.
しおりを挟む世界は広い。
まだ見たことのない景色や生き物が存在し、思いもよらない生活をしている人々が大勢この世界にいる。人生の中で私はどれだけのものと出会うことができるのだろう。
でもそれ以上に人間の可能性は果てしなくでかい。今まで存在し得なかった感染病まで作り出すくらいなのだから。
私は、"私"という意識を持つ個体は、1人しかいないのだと思っていた。秋人が飼育していたドールは意識がないものだから"私"には含まれない。
でも今絶句しながらVRを体験している私の前には、完全に意識を持つ別の"私"という存在があるのだ。
『いやああぁ琉生お兄ちゃぁんっ!!朱南もうダメぇ、ダメなのぉっ♡』
何言ってんだお前、私のが全然駄目だよ。
自分で自分の腰振ってる姿見て正常でいられる方が難しいってものだ。頭皮から油汗が沸き上がり、こめかみへと流れていくのがわかる。(おっさんか)
何から説明すべきか、まずはこの映像のタイトルがヤバいことからだろうか。
この漫画のタイトルも確かにダサくてやばいが、このVRの映像は、『妹の朱南ちゃんをヤってヤって犯《ヤ》りまくれ!!』というちょっと犯罪めいた意味でヤバいタイトルなのだ。
全然ポップな色合いのロゴタイトルじゃない。黒いビキビキのひび割れた岩のようなロゴだ。
5人の"朱南"という私にそっくりな妹キャラを選択し、仮想行為に及ぶというシチュエーションAVだ。
しかもそのキャラを選択すると、次にコスチュームをカスタマイズできるという優れもの。
何で私の顔面は固定なのか···。顔面もカスタマイズできるようにしとけよKAIDOエンターテイメント。お客様サービスセンターに連絡してやろうか。
この映像のクオリティと琉生の妄想力、果たしてどちらが上なのだろう。まだまだ上には上がいるし、下には下がいる。
私は、頭皮の油汗でギトギトになったゴーグルを取ると、なんと目の前には琉生が座っていた。
「ヒッ!!」
「ハアハア、あ、朱南····み、見たのか···?」
いつから見ていたのか····、息も絶え絶えに、瞬きもせず目を血走らせている。
「い、いつからそこにいたの琉生···。いや、あの、首つりはもういいの····?」
「ちょ、ちょっと、遺書を書き忘れて····、てか朱南がソレ見て興奮してるとか、かなりクるんだけどハアハア。」
こないよ?私が私のヤってる姿見て興奮してたら猟奇的な変人だよ??!
「そ、それ、一通り5人とヤると、夢の無双ルートってのができて、5人同時にヤれるようになるんだ!夢の6Pだ!」
私はあんたを殺りたいくらいだよ。
ちょっと今日はもういっぱいいっぱいだ。そう思い部屋に帰ろうとすると、琉生がまた声を上げて泣き出した。
私は琉生の持っていた縄跳びを取り上げ、自分と琉生の間を縄跳びで線引きし、こっちからこっちに入ってきたらムエタイ技で男の機能停止させてやるからと脅し、話を聞くことにした。
「朱南···俺、朱南が好きで好きで、好きで好きで、そして、好きなんだ····。」
「···そ、そうなんだ。」
今度からもうちょっと比喩的な表現だの、ロマンチックな語彙だの上手く使ってこうよ。
「それなのにさ、朱南は俺だけに構ってくれるわけじゃないし、すぐに他のヤツらのとこに行くしさ、」
「う、うん···。一応他の3人ともデートするって約束になってるし···。」
「どうしたら俺だけのもんになるんだろうって、こんなに好きで好きで好きなのに、どうしたら俺で朱南をいっぱいにできるんだろうって、」
「·········」
「そしたらいつの間にか朱南にチヤホヤされたい願望が膨れ上がってさ、」
「う、うん?」
「まあつまり哲学的に言って、独占欲=ハーレムに繋がったんだ····。」
哲学舐めるな。
「そうだとしても妹キャラにした意味は何なの?!別に幼なじみでも同級生でもいいじゃん!!」
「率直に言って妹系を陵辱するのが好きだから。」
「ガフぅッッ"陵辱"のパワーワードやめて?!!吐血しそう!!」
"雌犬"だの"陵辱"だのこんなの言葉のレイプだよ!私は本当に秋人や琉生に心の底から好きだと思われてるの?!
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