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4-2.
しおりを挟む琉生は3人の悪党を蹴散らした後、心陽に熱いディープキスをかまし、その場でヤってしまうのだ。(結局やるんか)
『好きだ好きだ好きだ心陽!』
『あああ~~~ッッるいィィ』
いいぞどんどんやれもっとヤれ!!ハアハア。
高校時代、私がどんなに頑張って2人をくっつけようとしたことか!!心陽君と琉生を体育館倉庫に誘きだして閉じ込めたこともあったし、心陽君が不良にレイプされるよう仕向けたこともあった。
でも全部失敗に終わり、今日まで心陽君と琉生は不仲····いやもう今では無関心に近いくらい関わりのない関係になってしまっている。
この際秋人でも蓮見先輩でも犬でも猫でもいいから心陽とヤったって下さい。
かなり脱線してしまったが、とにかく漫画の中の琉生は顔面も中身もイケメンなのだ。
でも今私の後ろにいる琉生は、これ。
「···朱南···、やっぱ俺って、ダメ人間だよな···。」
さっきまで先生に向かって威勢を放っていたはずの琉生が、私のトレーナーの裾をキュッと掴み、掠れた声で呟いた。
「俺、何でこの世に生まれてきたんだろ···何で母さんは俺なんか生んだんだろ···。」
「········」
「俺なんか生きてる価値なんもないのにな···。」
深海よりも深い溜め息をつき、死に迫る顔を地面に向けながら私の後ろをトボトボとついてくる琉生。
なんか叱られた子供みたいだ。
「俺、明日首つって死のうかなー···。」
いや、悲観的なリーマンみたいだ。
あんなにやんちゃな琉生の中身は実は繊細で、こうして自分で問題を起こしておきながら勝手にネガティブ思考に陥るのだ。
「朱南···なあ、俺···明日、死ぬかもしんない。俺1人にされたらさ、明日勝手に死んでるかもしれないよ····。」
「な、なに言ってるの!」
いつもそう言って死なないじゃん!!それに何で"明日"なの?今日でも全然ありだと思うよ私。
「···さっきさ、秋人と2人で何してたの···。」
「え」
「···失神した秋人に付き添って保健室に行ったよな?でも俺知ってんだよ、保健室から2人してどっかに消えたの。なあ、どこ行ってたんだ···。」
「うっ」
秋人の部屋に行っていたのはいいとしても、じゃあそこで何してたのって聞かれたら何て言えばいいのだろう。
プロポーズされていましたと?ラブドールと2人で。
絶対に琉生は秋人の部屋に殴り込みに行くだろう。しかもラブドールを見た琉生は二次災害を起こすに違いない。なんせ私にそっくり、私そのものの姿形をしているのだから。
そして散々暴れた後は、またネガティブになるというこの悪循環。燃費がいいのか悪いのか分からない。
「···ちょっと秋人の着替えを取りに行こうとしただけだよ。そしたら失神してた秋人が起きてきちゃって。」
「ふーん···。」
嘘は言っていない。みなまで言わなければいいだけのこと。
それよりまだ今の授業が終わるまで20分ほどある。このネガティブ人間をどうすべきか。
「とりあえず次の授業まで食堂にでもいよっか。」
「朱南···俺、死ぬ準備したいから、一旦部屋に戻る···。」
「は?」
「明日の死ぬ準備に取りかからないと····早く、天井に人の体重がかかっても大丈夫そうな部品とりつけてさ、そこにロープひっかけて、首つる準備しないと····。」
ああ、準備に時間かかるから"明日"死ぬのね。なるほど。
「って何言ってんの!!そんな人間を支えきれるほどの部品を部屋の天井にとりつけるよりも、屋上の柵や木にロープひっかけた方が早いじゃん!」
「···じゃあ俺、今から寮の裏庭にある木で首つるから。ね、俺明日じゃなく今日にするから。死に急ぐから···。」
「········」
「···俺朱南に会えて良かった···。じゃあ俺、行くから、部屋にロープ取り行くから···。ね?」
「う、うん。」
私は琉生を一切止めることなく、「じゃあね」と軽く手を振る仕草をした。でも琉生は私のトレーナーの裾を離す様子はない。
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