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3-6.
しおりを挟むでも聞いてよ秋人!今の私には、そんなウサギやクマにしたような嫉妬は全くないよ?!むしろちょっと安心してるくらいだよ。
そのドールの顔面さえ私じゃなければ、心の底から安心できたはずなのに···。
「でもね朱南···、本当はあなたに触れたいし、あなたに触れられたいし、」
「···いやいやいや、わ、私が触れようとしたら秋人、気絶したし。」
「あなたに触れたり、触れられることを考えるだけで俺はもう、我慢が効かなくなるんです···。」
「っ···」
が、我慢て····何の我慢···?
「もっとあなたの肌のきめ細かさを堪能したい···毛穴の隅々まで舐め回したい···!」
ああ、秋人が"毛穴すっきりパック"なら良かったのに····いつでも毛穴の黒ずみがすっきり取れるだろうに····。
違う!今はそんな悠長なことを言ってる場合ではない!!それは死ぬ気で我慢すべきだよ秋人!!
「わ、私なんてこちらにお住まいのドール様の足元にも及ばないよ!」
「あなたに触れられそうになる度に、あなたを俺の雌犬にすることばかりが頭を過るんです!」
「グフッッ!!ヒューヒュー····
"雌犬"のワード、凄い過呼吸になるんだけど!!」
私は自分の胸を掴み、必死に空気を吸い込んで呼吸を繰り返した。でもなぜか私よりも呼吸困難に陥っているのは秋人の方だった。
「朱南···どうか朱南っ、あなたを雌犬にすることばかりを考えている俺を嫌いにならないで下さいっ!!」
「いやなるよ?!!馬鹿じゃん!!」
嫌いにはなるし、憐れな目で見るし、蔑むし···。私、そんな秋人に雌犬として蔑まれてるかと思うと虫酸が走るよ?
「馬鹿でも何でもいいです!俺はあなたを無理に雌犬にしようとは決して思いません!!ただ朱南ドールを雌犬にして楽しむことはどうか許していただきたいっ!!」
「何開き直ってんの?!!!御曹司が何言っても許されると思ったら大間違いだからね?!!」
それから秋人は、ドールに出していた銀の皿を私に差し出し、「とりあえずきのこの山を食べて落ち着いてほしい、俺の話を聞いてほしい!」と言ってきた。
私は前に秋人からもらっていた防犯ストラップを見せ、「もし秋人が私に何かしてきたら、このストラップの紐を引いてALSOK呼ぶからね」と脅し、仕方なく秋人の話を聞くことにした。
ラブドールの隣に座って。
「俺は、女性に対する免疫がありません···。中学からずっと男子校だから当たり前ですが、」
「·········」
「朱南という、もうどうにかしちゃいたいくらいに可愛い女性に出会って、俺はあなたに夢中になりました。でも、はっきり言ってあなたは俺たちに気を持たせすぎなんです。」
「え、ええっ?!」
「高校の終わり頃から、どんどん朱南を独占したい気持ちが抑えられなくなり、俺のあなたに対する欲求が、健全な欲求から次第に遠退いていきました。」
秋人が銀の皿から一つ、きのこの山を取り食べた。このタイミングで食べようと思う気持ちが理解できない。
「つまり、独占欲=飼育に繋がったのです。」
「話を割愛しすぎでしょ!!何で脈絡もなく"飼育"に繋がるの?!?!」
「朱南を監禁して誰の目にも触れさせず、俺の可愛いペットにすれば一生2人で暮らしていけます。」
「·········」
お金の問題をなんなくクリアしている御曹司が言うと、本当にやりそうで凄い説得力がある。
うちの親も平気で「どーぞどーぞ飼育して下さい♪」とか言いそうだし。
「···俺たちもう大学2年なんですよ?この約4年間、俺は朱南のことが天地がひっくり返ったと思うほど好きで好きでたまりませんでした。」
「で、でも私···そんな、秋人に告白されたことなんてなかったし····」
「朱南だって知っているでしょう。俺たち4人が牽制し合っていること。」
「···ぅ·····」
「しかも4人だけじゃない、あなたに夢中になりかけた男が今まで何人いたと思ってるんです??そいつらを蹴散らすために合コン斡旋同好会まで立ち上げたんですから。」
「ええーーーッ?!!秋人が主犯だったのーーー?!!!」
ならお前が合コン行けよ。行って女の免疫つけてこいよ。
···つまり、私がさっさと4人から誰か1人を選ばなかったことがド変態に繋がった原因だと??
確かに···4人には女であることを散々守っておいてもらいながら、私が誰も選ばずにきたのは残酷なことかもしれない···。
私が俯いていると、秋人が大きく深呼吸をして言った。
「我が神影家なら一色家の研究職を存分に活かすことが出来ます。朱南···どうか俺と、結婚して下さい!」
私がラブドールと並んで座る中、秋人がなんとも真剣な目でプロポーズをしてきた。
私は驚きのあまり、隣のラブドールを見てドールに助けを求めようとしたが、秋人があまりにも真っ直ぐに私の目を見つめてくるのでごまかせなくなった。
どうしてこの状況でプロポーズなの秋人。
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