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3-2.
しおりを挟むでも一番怖いのは電話だ。
秋人は高校の頃から、朝のモーニングコールと、寝る前のおやすみコールを欠かさずかけてきていた。
高校の頃は、毎日同じ時間に授業が始まるから良かったが、今は2限から始まる授業もあれば、お昼からの時だってある。
それなのに、大学に入っても変わらず7時半にモーニングコール、22時におやすみコール。
あまりにウザくなって、それを無視した時はほんとヤバかった。
朝9時に目が覚めると、なんと着信履歴が2405回。
目を疑った。秋人が2405回、着信ボタンをタップしていたことを考えると、スマホ画面の手汗汚れが半端じゃないと思う。
何かあったのかと慌てて電話をかけると、いつもの優しい秋人の声で、こう言った。
「朱南にはずっと俺がついてますから、安心して。」
とても2405回かけてきたとは思えない柔らかい口調で、自分の腕に鳥肌が立ったのを覚えている。
でもそれより怖かったのはその後。
「っあ、ご、ごめんね、秋人....わ、私昨日早くに寝ちゃってたみたいで....気付かなくて....」
「ああ、大丈夫。朱南の声が聞けただけで俺は満足ですから。」
「っ!」
思わず部屋の扉を見た。
秋人の声が、部屋の外から聞こえたのだ。
ど、どうしよう....
今秋人は、部屋のすぐ外にいる....。
気付いていないふりしてこのまま電話を切るべきか.....うん、扉を開けて部屋に入ってこられても怖いから、気付いていないふりしよう....
でもスマホから聞こえた秋人の言葉は、さらに恐怖を煽るものだった。
「昨日の夜から誰もこの部屋には来ていないから、安心して。」
────安心できない。
安心できないって、ALSOKに言っといて秋人。
それから私は適当に、「体調が悪いから今日は休む」と言い残し、電話を切った。
しばらく怖くて部屋から出れなくて、ようやく出る気になったのがお昼過ぎ。
覗き穴を確認して、そっとドアの隙間から覗くと誰もいないことに安心して、思い切りドアを開いた。
するとドアの横に、大量の薬と栄養剤、胃に優しそうなレトルト食品が入った段ボールが置かれていた。
ホラーだ。
何となくそれを食べると秋人に呪われそうな気がして、私は他の友達や知り合いに適当に配った。
─────·······
「高梨先生、身の危険を感じます。助けて下さい。」
私は高梨先生に相談した。
彼は高校の保険医だから、外のカフェで待ち合わせをして、開口一番に助けを求めた。
「神影秋人って高校時代は朱南ちゃんの手ぇ握ったりしとらんかったか?」
「....はい、手とか、あとよく肩を触られたりとか。」
「今はどうなん?今でも身体触られたりするん??」
「.....そういえば、最近はないかも...。何だろう。触られてた頃の方が全然気持ち悪くなかった気がします。」
「朱南ちゃん、"引いてダメなら押してみろ"作戦でいってみ!」
「は??」
「つまり、朱南ちゃんから積極的に触ってみるんや!」
「........」
"押してダメなら引いてみろ"という言葉を裏返しにしたものを、私がストーカーに実行してみろと言ってるのだろうか。
それって、ただの自爆じゃない??
「もし何かされたらいつものムエタイで蹴り飛ばせばええやろ??ま、頑張って。」
一応いとこの癖に、凄い他人事だな。
まあ、そういう私に無関心なところが、相談しやすい理由だったりするんだけど。
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