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2-2.
しおりを挟むいつだったか秋人が父親の秘書と喧嘩をしている場に遭遇したことがある。
すぐに分かった。ああこれは主人公である心陽が秘書に向かって秋人を守る発言をするシーンだと。
だからモブである私は見てみないふりをしようと思いその場を素通りした。
でも秋人はしつこい秘書から逃げようと、素通りした私の後ろを追って来たのだ。
私も慌てて走り、逃げ切れそうな草の茂みに隠れると何故か秋人も私の隣に隠れ始めた。
セレブでも隠れることがあるんだなと思いつつも、私は前に秋人が落としたシャーペンを手渡した。
「はい、ちょうど渡せて良かった。これ、神影君のでしょ?」
「......は?」
「前に渡した時突き返されちゃったから。今日は受け取ってくれるかな。」
「.....ずっと持ってたんですか?捨てればよかったのに。」
「捨てるなんて勿体ないよ。もしかしたら誰かから貰ったものかもしれないし。」
「......そういえば、これはあの秘書に貰ったシャーペンです。」
「え?そうなの?!喧嘩してる感じだったけどほんとは仲良しなんだね。」
その秘書はずっと小さい頃から秋人をお世話してきたらしく、秋人は兄のように慕ってきたが、厳しい家柄のルールを押し付けられ喧嘩になることがあるという。
私が渡したシャーペンを受け取った秋人は秘書と仲直りしたらしく、その日は2人で車に乗り実家に帰っていった。
そんな文具用品の過去は漫画には出てきてないが、次の日から急に秋人が私に話し掛けてくるようになった。
そして体育の授業、二人一組でストレッチをしていた際、私の身体の感触に違和感を持った秋人が保健体育の教科書片手に女体についての説明を私にし出した。
感触が男の身体とは作りが違うだのなんだの、寮の自習室で約3時間の説明を受け、根負けした私は女であることを自らバラす羽目になったのだ。
そして女だとバレてから、秋人は私に甘々なのだ。
「おい!5分遅刻だぞ眼鏡!」
寮の前で私の帰りを待ち構えていたのは不良キャラの琉生だ。
両手を組み鋭い目を吊り上げ仁王立ちしている。
「ごめんね琉生、のんびり歩いて来たら遅くなっちゃった。」
もう放課後だし今は秋人と琉生しかいないし、私は普段の男っぽい口調を作る朱良ではなく、女の朱南で琉生に話し掛けた。
すると琉生は「おう」と小さく呟き少し赤くなった顔を反らした。
「皆藤、朱南に手を出せば刺す。」
「っはあ?!てめぇに言われたないわ!!散々ルール破ってる癖にッ!!」
「え?.....ルール??」
「いや......朱南は気にすんな。。」
それから秋人にじっとりとした目付きで見送られながら、私と琉生は寮内の食堂の隣に併設している休憩室に入っていった。
休憩室には雑誌や漫画が沢山並べられており、テレビやパソコンも何台か置かれている。さすがセレブ御用達の休憩室だ。
「そういや来年お袋の会社から新作のRPGが出るんだよ。」
「え!わた...僕RPG大好き!」
「またサンプル出来たら持ってくるし。」
「ありがとう!!」
これだけ娯楽品のある休憩室なんだから当然他の生徒もちらほらいる。つい女の朱南口調のままで話しそうになってしまった。
琉生とスマブラをやりながら会話するのが私たちのデートとなっている。
琉生の家はお父さんが婿養子で、母方の一家が大手ゲーム会社を経営している。
そのため琉生はまだ世に出回っていないような新作ゲームを持って来てくれたりするのだ。
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