転生したらBL漫画の男装女子でしたが、皆さん私に気にせずヨロシクやっちゃって下さい

由汰のらん

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1-1.Prolog

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 中、高、大学までの一貫校。
高校から入学した私に周りは無関心だった。


「途中から入って来た凡人に話し掛けられるのは迷惑です。」


 ただ彼が落としたシャーペンを拾って渡しただけなのに、私は訳も分からず眼鏡の奥から睨まれた。

 結局彼にはシャーペンを受け取ってはもらえず、他のクラスメイトも必要以上に私に話しかけてはこない。


 でも私は、不思議とその扱いが嫌じゃなかった。

 男子校であるこの学園で、男装している女が男子たちから空気のように扱われる。

 非常に楽だ。進展のないストーリー、大いにけっこう。


 でも2年生の3学期になった今、私の安息の日々は脅かされつつあった。



 
 「......朱良あきら、今日この後2人でお茶でもどうでしょう?シェ.ロエベのカフェはいつも人気の場所だから事前に予約を入れておいたんです。」


 眼鏡を掛け前分けの黒髪をかきあげた神影秋人みかげしゅうとが、風紀委員室の椅子に座る私の肩に触れて囁いた。


 背後から耳元で眼鏡と敬語口調のイケメンに囁かれてなびかない女はいないだろう。


 でもこの私、一門朱良いちかどあきらは残念なことに男として今を生きている。

 それにBLは見ているからこそいい、いや見ているだけがいいのだ。


 「おい朱良~!!まだ風紀の仕事片付かねーのかよ??帰ったら一緒にスマブラしよーぜ?」


 風紀委員室のドアもノックせず入って来たのは赤い短髪の男、皆藤琉生かいどうるいだ。

 横には二本の剃り込みをキめており、リング状のピアスが片耳に4つもついている。


「....なんだ貴様ノックもせずに。そもそも不良風情がここに来ること自体おかしいでしょう。」

「はあ?眼鏡は黙っとけよ!!その二重人格、動画配信して公開処刑してやんぞ?!!」


 秋人は確かに二重人格かもしれないが本性が一体どれなのかは私もよく知らない。

 彼は今の私には優しく接してくれるが、最初出会った時は寄せ付けないオーラで私のことも"貴様"と呼んでいた。


 それに比べ琉生は裏表なくそのまま一直線にドアもノックせずに向かってくる。

 琉生とはゲーム友達というのは今の在り方で、出会った頃は喧嘩友達だった。


 喧嘩ってのは口喧嘩じゃなく拳と拳の喧嘩のこと。




 
 トントン


「.....朱良、入るぞ。少しこの試算表を見てもらいたいんだが、良かったら今からテラスにでも行かないか?」


 今ノックをして入って来たのはこの学園の生徒会長である蓮見吉光はすみよしみつ

 綺麗な焦げ茶の髪に背が高く冷静沈着、いつも無表情ではあるがさすがこの学園の生徒会を担っているだけあり頼もしい存在、のはずだ。


「......何だお前たち、何でこんなとこにいる?」

「俺は風紀委員の一員だが??生徒会長の癖に何しにきたんです?」

「生徒会長に向かって相変わらず偉そうだな神影は。」

「何でもいいからさっさと帰ろうぜ朱良~。」


 さて、この物語が始まってからまだ一度も私は言葉を発していない。

 3人に色々言われて誰の誘いに乗ればいいのか分からないのだ。


 大体私が誘われるなんてシナリオはこの物語にあっただろうか?

 .....私はモブの一人に過ぎないのだからこんなメインキャラに話し掛けられることすらないはずだ。



 .....いや、そういえば一人だけ"私"に話し掛ける男がいた。


「朱良センパイ!今日も無事生きてます?!」


 バンッと豪快にドアを開け入って来た4人目の男、斎藤心陽さいとうこはるが丸い瞳を輝かせ私を見た。

 私とさほど変わらない身長に金色のふわりとした髪、白い肌に中性的な顔立ち、加えこの中で一番年下。

 女の私よりもずっと可愛い容姿の持ち主だ。


 彼、心陽は純粋で一生懸命、誰にでも人懐っこくまさに物語の主人公のような存在だ。


 風紀委員長でありながら物語とは全く無関係の私だが、心陽はそんなモブにも度々挨拶をしている場面があの漫画に描かれていたはず。


「一年が気安くこんなとこ来てんじゃねぇよ。さっさと帰ってあやとりでもしてろ!」

「引きこもりの皆藤先輩に言われたくないですよ!大体今日は僕朱良先輩に勉強教えてもらう約束してんだし!」


 そんな約束した覚えはない。


 本来、私の知っている漫画の中では主人公である心陽こはるとメインキャラの琉生るいがカップルになるという設定だったはずだ。


 それが何カップル同士で言い争いしてんだ。










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