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最終章
第13話 決着3
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そうして、放課後になってすぐに。
田口さんは、僕のことを呼んで、窓際の自分の席に僕を手招きしてくる。
成瀬さんはそんな僕らの様子を一瞥してから、他の女子たちと共に、教室から出て行った。
小池君や高橋君も興味深そうに僕らの様子を見てから、席を立って教室から出て行った。
教室に残っている他のクラスメイトたちは少なかった。
僕は笑みを浮かべながら、歩いて、田口さんのほうに向かう。
「何、田口さん?」
「何、じゃねぇだろ、赤崎。作詞の前に、まずはあたしたちのユニット名、考えないと」
「ユニット名……、そうか、ステージで出演するなら、それも考えないといけないよね」
午後の授業中、僕の頭は、昼休みの成瀬さんの甘い囁きでいっぱいだったから、すっかり忘れていたわけではないが、そこまで頭が回っていなかった。
そう、僕と田口さんは、音楽ユニットを組んで、文化祭で体育館のステージに上がって出演するのだ。作詞と歌うのが僕の担当で、作曲とギターでの演奏が田口さんの担当だった。
ただ、作詞と作曲という分担作業を開始するその前に、確かにユニット名だけでも二人で決めておいたほうがいいだろう。
そのほうが、二人が合作しようとしている曲の方向性も見えて、作詞もしやすくなりそうな気がするし。
「何か、良いアイデアはあるか?」
田口さんが、セミロングの金髪を指でいじりながら、にかっと笑って聞いてくる。
僕はうーんと唸ってから、首を横に振った。
「じゃあ、あたしのアイデアを採用することで決定だな」
「いや、ちょっと待って。それはそのアイデアの中身によるのでは……」
「あれぇ、無敵のイエスマンが、ノーと言うのかぁ?」
この意地悪な女子め……!
僕はため息をついて、それから促すように肩をすくめてから、言った。
「とりあえず、言ってみて」
「強制的昼夜逆転」
僕は思わず、おおと言葉を漏らしてしまった。
インパクトがあり、奇をてらうこともない言葉なのにどこはかとなくミステリアスで、素直にかっこいいなと思った。
「強制的昼夜逆転か……」
「そう、そこには、暗にイエスとノーの逆転の意味も込めているのさ」
「イエスとノーの逆転……?」
「そう、お前のイエスをノーに変えたいあたしの願望を込めているんだよ」
笑みを浮かべたまま、田口さんはそう言った。
「それは……、僕の作詞に悪影響を及ぼしかねない……」
「まぁ、待て待て」
田口さんはそう言って、それから曇った春空を窓から見上げながら言った。
「それはあたしの個人的な願望だ。強制的昼夜逆転には、もっと大事な意味を込めているんだよ」
大事な意味?
僕が田口さんの真意を測りかねて首を傾げると、田口さんは視線を曇った春空から僕へと戻して言った。
「人間、誰だってきっと、昼の顔と夜の顔、両方を持っている気がするんだ。昼に太陽に照らされてみんなに見せる顔と、夜にこっそりと独りで鏡の前で自分に見せる顔。まぁ、人格、と言ってもいいかな。二重人格とまでは言わないけどよ、きっと誰しも二面性を持っていると思うんだよ。文化祭は昼に開催されるから、ちょうどいいんだよ。あたしたちの歌で、みんなが夜に独りで抱えているもう一つの顔を強制的にさらけ出させて人生の息苦しさからそのときだけでもみんなを解放させてやるのさ」
僕は、素直に感心してしまった。
そのネーミングセンスも良かったし、そこに込められた大事な意味とやらも良かった。
しかし。
「作詞は、かなり難航しそうだな……」
その大事な意味を込められたユニット名で作詞するなら、僕は、僕自身の夜の顔も歌詞でさらけ出さなければならない気がした。
僕のイエスがノーに逆転するという極端なことではないが、僕が無敵のイエスマンを貫くために深夜まで努力していること。
そういうことも含めて、また、みんなの夜の顔も想像しながら、例えば小池君が成瀬さん本人に隠していた切ない恋心とか、そういうのも込めて、歌詞にしなければならない。
だが、僕はそれらを込めて作詞をすることに、何だかわくわくしてきていたんだ。
こんな気持ち、初めてだった。
そして、尊敬の眼差しを、田口さんに向けながら大きく頷いて言った。
「そのユニット名でいこう! 名前負けしないような歌詞をきっと作ってみせるよ」
僕がそう言うと、田口さんが、無邪気な笑みを浮かべた。
僕に認められて、心底、嬉しそうな笑顔だった。
それはまた、成瀬さんの微笑みとは違う表情だけれど。
同じように、僕をどきっとさせるんだ。
駄目だ、駄目だ。抑えろ、抑えろ。
この二つの恋の可能性を悟られたら、僕は無敵のイエスマンではなくなってしまう。
田口さんは、僕に愛していると言ってくれた。それは、僕にイエスもノーも強要しない言葉だ。
だから、僕が田口さんに、二人に対して同時に恋をしてしまったかもしれないと言ったところで、そんなクズ発言も、許容してくれる可能性はある。
でも、成瀬さんはあのオレンジ色の中でこんなことを言っていた。
「悔しいなぁ、そこまで私は、まだ赤崎君のこと想えていないや」
そんな成瀬さんが、無敵のイエスマン面をしていた僕のクズ発言を聞いたらどうなる?
きっと、軽蔑するに違いない、失望するに違いない。
そう思ってしまう。無敵のイエスマンが、成瀬さんという敵を作ってしまう。
でも、この二つの恋心かもしれない感情は、僕の夜の顔の一部かもしれなくて。
この想いも、歌詞に込めたらどうなるのか……。
「あ……」
田口さんのこぼした声で、僕の思考は遮断された。
田口さんは、窓の外を見ていた。
僕も同じように、窓の外を見て、今になって気づいた。
雨が、降り始めていた。
かなりの勢いだ。
激しい雨音が、街全体に響いている。
「あたし、今日、傘忘れちまったんだ」
そう言った田口さんは、困ったように苦笑していた。
ざーざー
そんな田口さんの言葉をあざ笑うかのように、雨音は響き続ける。
ふと周囲を見回すと、他のクラスメイトたちはもう教室からいなくなっていた。
残っているのは、僕と田口さんの二人だけ。
「ずぶ濡れで帰るのも嫌だから、教室で雨がやむのを待ってる」
それを聞いた僕は、笑みを浮かべて、自分の机に歩いて行って、その上にある通学カバンの中から、折り畳み傘を取り出して、また田口さんの前へと戻って田口さんにそれを差し出した。
「はい、これ」
僕がそう言うと、
「は?」
田口さんが、少し怒った顔で僕を見てそう応えた。
「僕は、雨がやむまでの時間を、歌詞を考える時間に回せるから。だから、雨がやむのを待つのは、僕だけでいい。田口さんは、僕が作詞するまで作曲できないのだから、雨がやむのを待つ時間がもったいないよ。この傘を使って、先に帰って」
僕がそう言うと、田口さんは呆れたように僕に質問してきた。
「お前なぁ、雨が夜までやまなかったらどうするつもりだ?」
「そのときは、そのとき。雨に濡れながら、歌詞を考えて帰るつもりだよ」
僕は笑顔を崩さずに、そう言う。
「あ、今、あたし、良いアイデアが思い浮かんだ」
僕の言葉に不満そうだった田口さんは、そう言って、悪戯っぽく笑う。
金髪を指でいじるのをやめて、僕をじっとその笑顔で見つめる。
「何、もっと良いユニット名を思いついたとか?」
僕は怪訝な表情を浮かべて尋ねると、田口さんはまだ悪戯っぽい笑顔を保ったまま、僕に言った。
「相合傘、しようぜ?」
「いや、周囲に噂されちゃうだろう、それ」
僕は即座に田口さんに突っ込みをいれる。
すると、悪戯っぽい笑みをより深くして、田口さんは僕にあれぇと言ってくる。
「無敵のイエスマンなんだろう、赤崎は?」
僕は一瞬だけ目を閉じてから、言い返した。
「田口さんはカラオケのとき、僕に愛していると言っていなかった? たとえ、報われない一方的な感情だとしても、それでも相手を想い続けることができるとかどうとか」
「でも、お前」
そして、田口さんは、いきなり衝撃的な発言をした。
「あたしに、また、恋したろ?」
一瞬、街中に響いていた雨音が消えた。
そんな気がした。
顔が熱くなるのを感じる。
どうして?
どうして、それを見抜いているんだ、このギャルは。
僕は訳が分からなくて、熱くなった自分の顔をできるだけ見られないように俯いて、ちょっと語気を強めて言った。
「田口さんは、強気だね。そんなこと僕は口にしたことないのに、自分が僕に好意を寄せられているなんて、平気で言えちゃうんだから」
「強気も平気も何も、事実を言ってるだけだぞ、あたしは」
田口さんは平然とそう言い放つ。
「だって、あのとき、小池の家まで行った帰り道、オレンジ色に染められたあたしの笑顔を見たお前は、確実にどきっとした表情をしていたからな。それで、すぐにピンときた」
「それだけで決めつけるのは、時期尚早じゃないかな」
僕は俯いたまま、何とかこの状況を切り抜けようとする。
でも。
僕はふと考え直す。
僕が怯えているのは、成瀬さんに、僕が田口さんと成瀬さんの二人に同時に恋をしてしまったかもしれないことを悟られる……、いや、もう認めよう。
かもしれない、じゃない。
成瀬さんの優しく見守るような微笑み。
田口さんの無邪気な笑顔。
その二つの表情が僕の目の網膜に焼きついて離れないこれは。この現象は。
恋、だ。
そして、二人に恋をしてしまったことを、成瀬さんに悟られることが怖かった。
だって、まだ成瀬さんからは愛しているという言葉は聞いていないから。
でも、田口さんは違う。
僕を愛していると言っていた。
だから、二人に恋をしてしまったというクズ発言も、田口さんなら許容してくれる気がしていた。
たとえ、報われなくても、僕を想い続けられるなんてことをカラオケのときに言っていたくらいだから。
打ち明けてしまう……か?
「そして、お前、成瀬のことも好きだろう?」
え?
僕は愕然として、顔を上げる。
田口さんは、僕のことを呼んで、窓際の自分の席に僕を手招きしてくる。
成瀬さんはそんな僕らの様子を一瞥してから、他の女子たちと共に、教室から出て行った。
小池君や高橋君も興味深そうに僕らの様子を見てから、席を立って教室から出て行った。
教室に残っている他のクラスメイトたちは少なかった。
僕は笑みを浮かべながら、歩いて、田口さんのほうに向かう。
「何、田口さん?」
「何、じゃねぇだろ、赤崎。作詞の前に、まずはあたしたちのユニット名、考えないと」
「ユニット名……、そうか、ステージで出演するなら、それも考えないといけないよね」
午後の授業中、僕の頭は、昼休みの成瀬さんの甘い囁きでいっぱいだったから、すっかり忘れていたわけではないが、そこまで頭が回っていなかった。
そう、僕と田口さんは、音楽ユニットを組んで、文化祭で体育館のステージに上がって出演するのだ。作詞と歌うのが僕の担当で、作曲とギターでの演奏が田口さんの担当だった。
ただ、作詞と作曲という分担作業を開始するその前に、確かにユニット名だけでも二人で決めておいたほうがいいだろう。
そのほうが、二人が合作しようとしている曲の方向性も見えて、作詞もしやすくなりそうな気がするし。
「何か、良いアイデアはあるか?」
田口さんが、セミロングの金髪を指でいじりながら、にかっと笑って聞いてくる。
僕はうーんと唸ってから、首を横に振った。
「じゃあ、あたしのアイデアを採用することで決定だな」
「いや、ちょっと待って。それはそのアイデアの中身によるのでは……」
「あれぇ、無敵のイエスマンが、ノーと言うのかぁ?」
この意地悪な女子め……!
僕はため息をついて、それから促すように肩をすくめてから、言った。
「とりあえず、言ってみて」
「強制的昼夜逆転」
僕は思わず、おおと言葉を漏らしてしまった。
インパクトがあり、奇をてらうこともない言葉なのにどこはかとなくミステリアスで、素直にかっこいいなと思った。
「強制的昼夜逆転か……」
「そう、そこには、暗にイエスとノーの逆転の意味も込めているのさ」
「イエスとノーの逆転……?」
「そう、お前のイエスをノーに変えたいあたしの願望を込めているんだよ」
笑みを浮かべたまま、田口さんはそう言った。
「それは……、僕の作詞に悪影響を及ぼしかねない……」
「まぁ、待て待て」
田口さんはそう言って、それから曇った春空を窓から見上げながら言った。
「それはあたしの個人的な願望だ。強制的昼夜逆転には、もっと大事な意味を込めているんだよ」
大事な意味?
僕が田口さんの真意を測りかねて首を傾げると、田口さんは視線を曇った春空から僕へと戻して言った。
「人間、誰だってきっと、昼の顔と夜の顔、両方を持っている気がするんだ。昼に太陽に照らされてみんなに見せる顔と、夜にこっそりと独りで鏡の前で自分に見せる顔。まぁ、人格、と言ってもいいかな。二重人格とまでは言わないけどよ、きっと誰しも二面性を持っていると思うんだよ。文化祭は昼に開催されるから、ちょうどいいんだよ。あたしたちの歌で、みんなが夜に独りで抱えているもう一つの顔を強制的にさらけ出させて人生の息苦しさからそのときだけでもみんなを解放させてやるのさ」
僕は、素直に感心してしまった。
そのネーミングセンスも良かったし、そこに込められた大事な意味とやらも良かった。
しかし。
「作詞は、かなり難航しそうだな……」
その大事な意味を込められたユニット名で作詞するなら、僕は、僕自身の夜の顔も歌詞でさらけ出さなければならない気がした。
僕のイエスがノーに逆転するという極端なことではないが、僕が無敵のイエスマンを貫くために深夜まで努力していること。
そういうことも含めて、また、みんなの夜の顔も想像しながら、例えば小池君が成瀬さん本人に隠していた切ない恋心とか、そういうのも込めて、歌詞にしなければならない。
だが、僕はそれらを込めて作詞をすることに、何だかわくわくしてきていたんだ。
こんな気持ち、初めてだった。
そして、尊敬の眼差しを、田口さんに向けながら大きく頷いて言った。
「そのユニット名でいこう! 名前負けしないような歌詞をきっと作ってみせるよ」
僕がそう言うと、田口さんが、無邪気な笑みを浮かべた。
僕に認められて、心底、嬉しそうな笑顔だった。
それはまた、成瀬さんの微笑みとは違う表情だけれど。
同じように、僕をどきっとさせるんだ。
駄目だ、駄目だ。抑えろ、抑えろ。
この二つの恋の可能性を悟られたら、僕は無敵のイエスマンではなくなってしまう。
田口さんは、僕に愛していると言ってくれた。それは、僕にイエスもノーも強要しない言葉だ。
だから、僕が田口さんに、二人に対して同時に恋をしてしまったかもしれないと言ったところで、そんなクズ発言も、許容してくれる可能性はある。
でも、成瀬さんはあのオレンジ色の中でこんなことを言っていた。
「悔しいなぁ、そこまで私は、まだ赤崎君のこと想えていないや」
そんな成瀬さんが、無敵のイエスマン面をしていた僕のクズ発言を聞いたらどうなる?
きっと、軽蔑するに違いない、失望するに違いない。
そう思ってしまう。無敵のイエスマンが、成瀬さんという敵を作ってしまう。
でも、この二つの恋心かもしれない感情は、僕の夜の顔の一部かもしれなくて。
この想いも、歌詞に込めたらどうなるのか……。
「あ……」
田口さんのこぼした声で、僕の思考は遮断された。
田口さんは、窓の外を見ていた。
僕も同じように、窓の外を見て、今になって気づいた。
雨が、降り始めていた。
かなりの勢いだ。
激しい雨音が、街全体に響いている。
「あたし、今日、傘忘れちまったんだ」
そう言った田口さんは、困ったように苦笑していた。
ざーざー
そんな田口さんの言葉をあざ笑うかのように、雨音は響き続ける。
ふと周囲を見回すと、他のクラスメイトたちはもう教室からいなくなっていた。
残っているのは、僕と田口さんの二人だけ。
「ずぶ濡れで帰るのも嫌だから、教室で雨がやむのを待ってる」
それを聞いた僕は、笑みを浮かべて、自分の机に歩いて行って、その上にある通学カバンの中から、折り畳み傘を取り出して、また田口さんの前へと戻って田口さんにそれを差し出した。
「はい、これ」
僕がそう言うと、
「は?」
田口さんが、少し怒った顔で僕を見てそう応えた。
「僕は、雨がやむまでの時間を、歌詞を考える時間に回せるから。だから、雨がやむのを待つのは、僕だけでいい。田口さんは、僕が作詞するまで作曲できないのだから、雨がやむのを待つ時間がもったいないよ。この傘を使って、先に帰って」
僕がそう言うと、田口さんは呆れたように僕に質問してきた。
「お前なぁ、雨が夜までやまなかったらどうするつもりだ?」
「そのときは、そのとき。雨に濡れながら、歌詞を考えて帰るつもりだよ」
僕は笑顔を崩さずに、そう言う。
「あ、今、あたし、良いアイデアが思い浮かんだ」
僕の言葉に不満そうだった田口さんは、そう言って、悪戯っぽく笑う。
金髪を指でいじるのをやめて、僕をじっとその笑顔で見つめる。
「何、もっと良いユニット名を思いついたとか?」
僕は怪訝な表情を浮かべて尋ねると、田口さんはまだ悪戯っぽい笑顔を保ったまま、僕に言った。
「相合傘、しようぜ?」
「いや、周囲に噂されちゃうだろう、それ」
僕は即座に田口さんに突っ込みをいれる。
すると、悪戯っぽい笑みをより深くして、田口さんは僕にあれぇと言ってくる。
「無敵のイエスマンなんだろう、赤崎は?」
僕は一瞬だけ目を閉じてから、言い返した。
「田口さんはカラオケのとき、僕に愛していると言っていなかった? たとえ、報われない一方的な感情だとしても、それでも相手を想い続けることができるとかどうとか」
「でも、お前」
そして、田口さんは、いきなり衝撃的な発言をした。
「あたしに、また、恋したろ?」
一瞬、街中に響いていた雨音が消えた。
そんな気がした。
顔が熱くなるのを感じる。
どうして?
どうして、それを見抜いているんだ、このギャルは。
僕は訳が分からなくて、熱くなった自分の顔をできるだけ見られないように俯いて、ちょっと語気を強めて言った。
「田口さんは、強気だね。そんなこと僕は口にしたことないのに、自分が僕に好意を寄せられているなんて、平気で言えちゃうんだから」
「強気も平気も何も、事実を言ってるだけだぞ、あたしは」
田口さんは平然とそう言い放つ。
「だって、あのとき、小池の家まで行った帰り道、オレンジ色に染められたあたしの笑顔を見たお前は、確実にどきっとした表情をしていたからな。それで、すぐにピンときた」
「それだけで決めつけるのは、時期尚早じゃないかな」
僕は俯いたまま、何とかこの状況を切り抜けようとする。
でも。
僕はふと考え直す。
僕が怯えているのは、成瀬さんに、僕が田口さんと成瀬さんの二人に同時に恋をしてしまったかもしれないことを悟られる……、いや、もう認めよう。
かもしれない、じゃない。
成瀬さんの優しく見守るような微笑み。
田口さんの無邪気な笑顔。
その二つの表情が僕の目の網膜に焼きついて離れないこれは。この現象は。
恋、だ。
そして、二人に恋をしてしまったことを、成瀬さんに悟られることが怖かった。
だって、まだ成瀬さんからは愛しているという言葉は聞いていないから。
でも、田口さんは違う。
僕を愛していると言っていた。
だから、二人に恋をしてしまったというクズ発言も、田口さんなら許容してくれる気がしていた。
たとえ、報われなくても、僕を想い続けられるなんてことをカラオケのときに言っていたくらいだから。
打ち明けてしまう……か?
「そして、お前、成瀬のことも好きだろう?」
え?
僕は愕然として、顔を上げる。
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