太閤様がブラック企業に就職してみたら~逆転生 令和版太閤記~

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就活

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※以下作中では秀吉=近藤 について、””近藤”表記で統一します。
※言葉遣いについてはイメージです。時代考証については大目に見てください。


「ふむふむ、こやつは就活、とやらをしていたようだの。」

400年前の人間が現代へ蘇れば言葉も通じず、社会へ順応できずパニックに陥るだろうがそこはファンタジーのご都合主義。近藤の肉体にインプットされていた記憶はそのままメモリーとして引き出せる仕組みのようだ。


「就活、とはいわば士官先を探す修練のようなものか。儂にも経験があるのう。最初は松下様、その後二転三転して最後は信長様にお仕えした。苛烈な方であったが、たくさんのことを教えていただいたのう・・・それにしても、50回も士官を断られるとは。就活、とやらは大変なんじゃな。」

ポケットの中の手帳を見た近藤は、翌日も面接の予定が入っていることに気がつく。

「明日は・・・”居酒屋 Yoshi”の面接のようじゃの。就活とやら、腕が鳴るのう。」

そうつぶやくと秀吉は就寝の準備に入った。


---翌朝---

「ふう、やはり朝は早起きに限るのう。朝起きたときの爽やかさは、400年前となんら変わらんのう。」
そういうと秀吉は身支度を始める。スーツを着るのはもちろん初めてだが、近藤の体が覚えているのでそこは問題ない。

ネクタイを締めた秀吉は、かつて甲冑を身につけて走り回っていた頃と同じ高揚感があふれてくるのを感じる。

指定された店舗へ到着した秀吉は、店の入り口を眺める。夜は騒々しいのだろうが、昼間は人気を感じない。

引き戸を開け、中へ入る。

「近藤 翔琉と申す者じゃ。就活、にやってきたが、誰ぞおらぬか」

戦場の号令と錯覚するような、よく通る声だ。

しばらく待つと、奥から一つの人影が現れる。

「面接の人ね、はいはい。そういえばそんなのもあったかな。その辺に座ってよ。」

無礼な態度に近藤はむっとしたが、まずは職を得なければならないことを思い一瞬反論しかけた言葉をスッと飲み込んだ。この手の我慢は、足軽だった頃からお手の物だ。どれだけ理不尽なことを言われても、大局的な観点を意識し、必要な我慢と判断した場合は顔色一つ変えずその場その場で最善の振る舞いをするのが秀吉である。
かつて渡り合った戦国の英雄達と比べれば、居酒屋の店長など小物だ。赤子を相手にする程度のおおらかな気持ちで、にこやかに対応した。


「お初にお目にかかります。とよ・・・近藤と申します。こたびは面接、の場を設けていただき感謝に耐えませぬ。」

近藤の言葉に、店長の今井は首をかしげる。

「ずいぶん変わった言葉遣いをするんだね。まあ、うちは言葉遣いのなってない若いバイトが中心だし、あんたみたいなのでもいてくれるだけで全然助かるよ。なんでこの店を選んだの?」

近藤は答える。
「家から近いというのが一つじゃな。職場との往復に時間を費やすのは愚かじゃろう。」
しごく合理的な考え方だ。

「他にもあるぞ。居酒屋とは飲み、そして食べるところであろう。こうした場には昔から様々な者が集まる。世の動きを知り、皆の考えに触れるにはこういう場所が最適なのじゃ。こうした場を盛り上げるのも、昔から得意じゃしな。」

「へえ、いまどき変わった人もいるもんだね。自分で言うのもなんだけど、はっきり言ってうちはブラックだ。大手の系列ではあるものの、お世辞にも楽とは言えない来る新人来る新人、すぐ止めちゃうんだよね。」

「ブラック?なんじゃそれは。」

近藤は尋ねる。



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