2 / 2
就活
しおりを挟む
※以下作中では秀吉=近藤 について、””近藤”表記で統一します。
※言葉遣いについてはイメージです。時代考証については大目に見てください。
「ふむふむ、こやつは就活、とやらをしていたようだの。」
400年前の人間が現代へ蘇れば言葉も通じず、社会へ順応できずパニックに陥るだろうがそこはファンタジーのご都合主義。近藤の肉体にインプットされていた記憶はそのままメモリーとして引き出せる仕組みのようだ。
「就活、とはいわば士官先を探す修練のようなものか。儂にも経験があるのう。最初は松下様、その後二転三転して最後は信長様にお仕えした。苛烈な方であったが、たくさんのことを教えていただいたのう・・・それにしても、50回も士官を断られるとは。就活、とやらは大変なんじゃな。」
ポケットの中の手帳を見た近藤は、翌日も面接の予定が入っていることに気がつく。
「明日は・・・”居酒屋 Yoshi”の面接のようじゃの。就活とやら、腕が鳴るのう。」
そうつぶやくと秀吉は就寝の準備に入った。
---翌朝---
「ふう、やはり朝は早起きに限るのう。朝起きたときの爽やかさは、400年前となんら変わらんのう。」
そういうと秀吉は身支度を始める。スーツを着るのはもちろん初めてだが、近藤の体が覚えているのでそこは問題ない。
ネクタイを締めた秀吉は、かつて甲冑を身につけて走り回っていた頃と同じ高揚感があふれてくるのを感じる。
指定された店舗へ到着した秀吉は、店の入り口を眺める。夜は騒々しいのだろうが、昼間は人気を感じない。
引き戸を開け、中へ入る。
「近藤 翔琉と申す者じゃ。就活、にやってきたが、誰ぞおらぬか」
戦場の号令と錯覚するような、よく通る声だ。
しばらく待つと、奥から一つの人影が現れる。
「面接の人ね、はいはい。そういえばそんなのもあったかな。その辺に座ってよ。」
無礼な態度に近藤はむっとしたが、まずは職を得なければならないことを思い一瞬反論しかけた言葉をスッと飲み込んだ。この手の我慢は、足軽だった頃からお手の物だ。どれだけ理不尽なことを言われても、大局的な観点を意識し、必要な我慢と判断した場合は顔色一つ変えずその場その場で最善の振る舞いをするのが秀吉である。
かつて渡り合った戦国の英雄達と比べれば、居酒屋の店長など小物だ。赤子を相手にする程度のおおらかな気持ちで、にこやかに対応した。
「お初にお目にかかります。とよ・・・近藤と申します。こたびは面接、の場を設けていただき感謝に耐えませぬ。」
近藤の言葉に、店長の今井は首をかしげる。
「ずいぶん変わった言葉遣いをするんだね。まあ、うちは言葉遣いのなってない若いバイトが中心だし、あんたみたいなのでもいてくれるだけで全然助かるよ。なんでこの店を選んだの?」
近藤は答える。
「家から近いというのが一つじゃな。職場との往復に時間を費やすのは愚かじゃろう。」
しごく合理的な考え方だ。
「他にもあるぞ。居酒屋とは飲み、そして食べるところであろう。こうした場には昔から様々な者が集まる。世の動きを知り、皆の考えに触れるにはこういう場所が最適なのじゃ。こうした場を盛り上げるのも、昔から得意じゃしな。」
「へえ、いまどき変わった人もいるもんだね。自分で言うのもなんだけど、はっきり言ってうちはブラックだ。大手の系列ではあるものの、お世辞にも楽とは言えない来る新人来る新人、すぐ止めちゃうんだよね。」
「ブラック?なんじゃそれは。」
近藤は尋ねる。
※言葉遣いについてはイメージです。時代考証については大目に見てください。
「ふむふむ、こやつは就活、とやらをしていたようだの。」
400年前の人間が現代へ蘇れば言葉も通じず、社会へ順応できずパニックに陥るだろうがそこはファンタジーのご都合主義。近藤の肉体にインプットされていた記憶はそのままメモリーとして引き出せる仕組みのようだ。
「就活、とはいわば士官先を探す修練のようなものか。儂にも経験があるのう。最初は松下様、その後二転三転して最後は信長様にお仕えした。苛烈な方であったが、たくさんのことを教えていただいたのう・・・それにしても、50回も士官を断られるとは。就活、とやらは大変なんじゃな。」
ポケットの中の手帳を見た近藤は、翌日も面接の予定が入っていることに気がつく。
「明日は・・・”居酒屋 Yoshi”の面接のようじゃの。就活とやら、腕が鳴るのう。」
そうつぶやくと秀吉は就寝の準備に入った。
---翌朝---
「ふう、やはり朝は早起きに限るのう。朝起きたときの爽やかさは、400年前となんら変わらんのう。」
そういうと秀吉は身支度を始める。スーツを着るのはもちろん初めてだが、近藤の体が覚えているのでそこは問題ない。
ネクタイを締めた秀吉は、かつて甲冑を身につけて走り回っていた頃と同じ高揚感があふれてくるのを感じる。
指定された店舗へ到着した秀吉は、店の入り口を眺める。夜は騒々しいのだろうが、昼間は人気を感じない。
引き戸を開け、中へ入る。
「近藤 翔琉と申す者じゃ。就活、にやってきたが、誰ぞおらぬか」
戦場の号令と錯覚するような、よく通る声だ。
しばらく待つと、奥から一つの人影が現れる。
「面接の人ね、はいはい。そういえばそんなのもあったかな。その辺に座ってよ。」
無礼な態度に近藤はむっとしたが、まずは職を得なければならないことを思い一瞬反論しかけた言葉をスッと飲み込んだ。この手の我慢は、足軽だった頃からお手の物だ。どれだけ理不尽なことを言われても、大局的な観点を意識し、必要な我慢と判断した場合は顔色一つ変えずその場その場で最善の振る舞いをするのが秀吉である。
かつて渡り合った戦国の英雄達と比べれば、居酒屋の店長など小物だ。赤子を相手にする程度のおおらかな気持ちで、にこやかに対応した。
「お初にお目にかかります。とよ・・・近藤と申します。こたびは面接、の場を設けていただき感謝に耐えませぬ。」
近藤の言葉に、店長の今井は首をかしげる。
「ずいぶん変わった言葉遣いをするんだね。まあ、うちは言葉遣いのなってない若いバイトが中心だし、あんたみたいなのでもいてくれるだけで全然助かるよ。なんでこの店を選んだの?」
近藤は答える。
「家から近いというのが一つじゃな。職場との往復に時間を費やすのは愚かじゃろう。」
しごく合理的な考え方だ。
「他にもあるぞ。居酒屋とは飲み、そして食べるところであろう。こうした場には昔から様々な者が集まる。世の動きを知り、皆の考えに触れるにはこういう場所が最適なのじゃ。こうした場を盛り上げるのも、昔から得意じゃしな。」
「へえ、いまどき変わった人もいるもんだね。自分で言うのもなんだけど、はっきり言ってうちはブラックだ。大手の系列ではあるものの、お世辞にも楽とは言えない来る新人来る新人、すぐ止めちゃうんだよね。」
「ブラック?なんじゃそれは。」
近藤は尋ねる。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

猿の内政官の息子 ~小田原征伐~
橋本洋一
歴史・時代
※猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~という作品の外伝です。猿の内政官の息子の続編です。全十話です。
猿の内政官の息子、雨竜秀晴はある日、豊臣家から出兵命令を受けた。出陣先は関東。惣無事令を破った北条家討伐のための戦である。秀晴はこの戦で父である雲之介を超えられると信じていた。その戦の中でいろいろな『親子』の関係を知る。これは『親子の絆』の物語であり、『固執からの解放』の物語である。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる