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第四部 番外編

一人の方法が分からない(※)

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第三部終了前後。ネフィリムの自〇のお話。挿入まではいきませんが、いちおうR指定です。
自慰/言葉責め/快楽堕ち/兜合わせなどの内容がありますので苦手な方はご注意ください。
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 シグルズの体は変異が進んでいた。

 エインヘリヤルの書物庫にあった禁書の内容によれば、人が変異する方法は2つ。
 この“星”のエネルギーの流れ「動脈」に触れるか、変異した人間と儀式を行うか。

 ネフィリムは変異体であった最初の戦乙女ヴァルキリーブリュンヒルデの孫であり、現在の戦乙女ヴァルキリーでもある。そのネフィリムと儀式を行ったことでシグルズの体が変異しつつあると推測された。
 儀式と表現してはいるものの、つまりは性交、生殖行為である。

 シグルズとは何度も体を重ねた。シグルズのことが好きだし、ネフィリムとしてもそれは幸せな時間だった。


 だが、彼の健康を害してまで体を重ねようとは思わない。



 思わない、のだ   が。



 ネフィリムはカロルスフェルト邸で間借りしている寝室で掛け布を被って丸くなっていた。


「自分は破廉恥なのだろうか……」

 自問自答する。


 性欲は薄いほうだと思っていた。
 強制された儀式以外で誰かと交わるなど、むしろ避けたいと思っていたほどなのに。

 シグルズにその気持ち良さを教えてもらって以来、無性に疼くときがある。

 体の奥が熱くてどうしようもない。
 欲を発散したい。



 先代の戦乙女ヴァルキリーである母親はそれなりに盛んだった。
 先々代、祖母もそれなりだったと母から聞いたことがある。

戦乙女ヴァルキリーは愛に生きる巫女。体が貪欲なのも力を得るために当然なのよ』

 と、蠱惑的に笑いながら話していた。



 だが自分は男性である。厳密に言えば巫女ではない。

 男性と女性で性欲に違いがあるのかもネフィリムにはよく分からない。
 そもそも性に関する知識はネフィリムにはほとんどない。

 全てシグルズに教えてもらったのだ。



 そのシグルズとできない日々が続くと、ネフィリムは体の奥に熱の塊が居座るような、不快な感覚が続くことがあった。

「今日は調子が悪そうだな、どうかしたのか?」

 とシグルズに聞かれても「欲求不満なんです」と言えるわけもない。
 言ったら死ぬ。


 とりあえず寝室に一人、掛け布の中でネフィリムはもぞもぞと動きながら下履きを外し、自身の性器を触ってみた。最低限の知識として、ここを触るということは知っていた。

「ん、……」

 何の快感もない。もっと強くないといけないのだろうか。

 触り方を強め、触る場所も変えてみた。先端を触ったとき、わずかにピリッとした刺激があった。

「んっ」


 ダメだ。これだけじゃ足りない。
 シグルズにされていることを思い出す。前戯のとき、彼はこちらが白旗を上げるまで丹念に愛撫をしてくれる。

 彼の手の動きを再現して、先端を親指でくいと押してから裏筋をなぞる。ゾクゾクとした感覚がせり上がってくる。

「ふ、あ、ぁ」

 片手を乳首に持っていき、もう片方はそのまま性器を扱く。
 恥ずかしい。
 とても恥ずかしいが、この動きを止めることはできなかった。
 もっと、もっと気持ちよくなりたい。


 乳首をぎゅうとつねり、扱く手を早める。気付けば、先端からは透明な蜜が溢れ始めていた。

「ん、ん……」

 快感に促されるまま、手の動きが大胆になってくる。胸の頂きを思い切り引っ張ったり、潰したり。性器の先端の窪みにはわずかに爪を立てた。

「ひあっ!」

 背中をびくびくと震わせ、先端からぴゅるりと白濁が飛んだ。それでもわずかな量だ。

 ダメだ、足りない。
 もっと気持ちよくならないと。
 でも、どうすれば……


「うう……」


 知恵熱でも出そうなほどにネフィリムが悩んでいると、突如掛け布が剥ぎ取られた。

 視界が明るくなる。



「ネフィル? どうしたんだ、声、が ……  …」



 ネフィリムは声の主を見た。
 声の主もネフィリムを見た。


 気まずすぎる時間が流れた。


 普段の動きからは想像もできないほど俊敏にシグルズの手から掛け布を奪い返すと、ネフィリムは無言でそれを被って丸くなった。

 今、何もなかったことにするのだ。そうだ。何もなかった。



「ネフィル」



 シグルズの真面目そうに聞こえるがとはいっても含み笑いを伴っているのを隠すことに失敗した声がする。


「その~~…もしお邪魔だったら退散するが」


 そんなの聞かなくていいから今この瞬間に退散してほしい。


「必要なら……手伝おうか?」


 我慢の限界だった。


「余計なお世話だ! こんなことを手伝ってもらいたいと思う馬鹿がどこにいるというのだ!!! いいからお前は今すぐにこの部屋から出て見たこと聞いたことを忘れ」
「捕まえた」

 掛け布から頭と腕を出して抗議していたネフィリムを、紳士の皮を被った狼がひょいと持ち上げてしまった。

「大丈夫。別に挿れなくても気持ちよくなれる方法があるから心配するな」


 そんなことは聞いてない。一言も発していないのだ。






「ひ、やああ! そん、なっ……あつ……!」
「ふ、きもちいい、だろう? ネフィル……」

 息をするのに必死で答えられない。
 シグルズの性器と自分の性器が合わせられるたびに、ぐちゅぐちゅとやらしい音がして、それがまた2人の体温を高めてしまう。

 シグルズの性器は大きくて、硬い。そしてとても熱い。その熱がネフィリムのそれにも伝わってくる。
 その脈までも、伝播しそうで。

 擦れるたびに視界が白く灼ける。
 2人の荒い息遣いの合間で、普段人に見せない部位を見せつけ合って興奮している背徳感。

 最高に、気持ちがいい。
 ネフィリムは蕩けそうだった。

「シグルズの、あつい、よぉ……火傷しちゃう……」
「大丈夫だよ、ネフィル。それに……熱くて、気持ちいいだろう」
「うん……? いい……きもちいよ、シグぅ」

 口から涎が零れた。それをシグルズが舐めとる。

「まったく、君は……。自慰すらろくに知らんのか。ほんとうに悪い奴に引っかからないようにしてくれよ」
「ふえ……?」
「後で俺が丁寧に指導してやる」
「ん、あぁん! いきなり、ソコっ……強く……!やぁああっ……」


 シグルズの手に包まれて、ネフィリムは達した。


 ネフィリムはそれから数日間かけて丹念に手ほどきをされた。
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