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第50話 僕の雇い主

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 魔導師だと知れて、城の人の僕を見る目はだいぶ変わった。

 ――微妙な気分だけど。

 というのも態度が変わったのは、出世欲満々って感じの人ばっかりだったからだ。

 特にひどいのが例の会計役で、翌日にはなんだか分からない貢物――たぶん――を持って、僕にあいさつに来た。
 自分のお抱え魔導師にならないか、若いから優遇するとか、そんな話までオマケにくっつけて。

 他にもいろいろ、領主に仕官できるよう取り計らうから自分を引き立ててくれとか、魔導師ギルドに自分を紹介してくれとか、ともかく利益を狙うヤツばっかりだ。

 師匠があんな片田舎に引っ込んだ理由が、ちょっとだけ分かる気がする。
 もっとも師匠の場合、人づきあいと性格が悪すぎて、首都にいられなくなっただけの気もするけど。

「たいへんねぇ」

 例のお茶会へ向かう道すがら、話を聞いたイサさんがけらけらと笑う。

「ちっとも大変だと思ってないようにしか、見えないんですけど」
「大変なの、あたしじゃないもの」

 嫌になるくらい、魔導師ってものを理解しようとしない。
 でもおばさんっていうのは、こういうものなんだろう。なら考えるだけ無駄だ。

「そういえば貢物持って、例の会計役も来てたわよね?」
「ええ」

 あんまり楽しい人じゃなかったけど。
 おばさんがさらに訊いてくる。

「なんの話をしたの?」
「大した話じゃないですよ。お抱え魔導師にならないか、って。断りましたけど」
「お抱え? なんで?」
「なんでって言われても……」

 僕に会計役の頭の中なんて、分かるわけがない。けどおばさんはなにか引っかかったらしく、首をかしげてる。

「お抱え魔導師って、宮廷とかで雇うんじゃない?」
「そうですね。たいていはどこかの国王が雇います。領主が雇うこともあるけど、今は少ないかな」
「なら会計役の言う話、変じゃない? それとも、個人で雇うの?」

 言われて考える。

 たしかに個人で雇う、っていうことはある。
 雇い主が何か研究してほしいものがあるとか、そんな場合だ。

 でも、そう多くはない。
 研究するには素材やら施設やらでやたらお金がかかるから、お金がありあまってしょうがない人か、全財産はたいても研究してほしいことがあるお金持ち、くらいだ。

 僕は単純に後者かなと思ってたけど、イサさんは首を振った。
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