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2:あなたに惑星(ほし)の押し売りを
Episode:27
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「ありがとうございました……」
「いえいえ、こちらこそ。なにしろ移住先を見つけていただいたのです、あなたはネメイエスの恩人ですよ」
向こうも少しほっとしたのか、聞こえてくる声に、面白がるような雰囲気が混ざる。
「何より、あなたに感心しました。異星の政府相手に渡り合う度胸。状況を最大限に利用する機転。なかなか大したものです」
「え……」
それがほめ言葉だと気づいて、なぜかエルヴィラは恥ずかしくなった。
「その、あたし夢中で……」
相手側が笑い出す。
「なるほど、弱い立場ゆえの強さですか。羨ましい」
「そんな、たいしたものじゃないです」
言いながらエルヴィラは思う。こういう異星人と組めたなら、地球の将来も少しは上向くだろうと。
ネメイエス側が満足気に付け加えた。
「あなたへの報酬としての、第四惑星への着陸権と調査権は、既に許可を出してありますよ。いつでもどうぞただ……」
「ただ?」
この期に及んで言いよどむ相手に、エルヴィラは思わず訊き返した。
「何かあるんですか?」
「はい」
そう言って、ネメイエス人が言葉を続けた。
「実はあの惑星は、他星系の者は入れないのです」
「確かにそう伺いましたけど……?」
ネメイエス人でも入れない惑星。ましてや他星系人が、入れるわけがない。
ただ彼の言う〝入れない〟は、何か違う気がした。
「騙すようで申し訳ないのですが、他星系人が入ろうとすると、あの惑星は素通りしてしまうのです」
「え、じゃぁ……?!」
入れない、ということだろうか?
もしそうなら、契約の報酬はナシということになる。だがエルヴィラには、そうは思えなかった。対等を重んじるネメイエス人が、そんな騙し討ちをこの状況で、するとは思えないのだ。
そんなエルヴィラの感情を読み取ったのか、一拍置いて、ネメイエス人が話し始めた。
「これも予言になるのですが」
そう言い置いて話を続ける。例の予言には続きがあって、その者に代々伝えられた宝珠とともに口伝の場所を伝えよ、となっているのだと。
そうすれば、その者は宝珠を掲げて惑星へと降り、さらに仲間とともに飛んで謎を解き、閉ざされた道は開けるだろう、と。
「場所は座標ですので、今そちらへデータをお送りします。宝珠も今運ばせています」
なんだかややこしいことになってきた、そうエルヴィラは思ったが、口にはもちろん出さなかった。
「――おばさま、座標をいただきました。第四惑星上空と、ここから200光年ほど離れた場所の2つです」
イノーラの言葉を聞きながら、どっちもそんなに遠くないな、と思う。ただ行って帰ってくるだけなら、遠い方でさえ日帰りできる距離だ。
「ここへ、行けばいいんですね?」
画面の向こうのネメイエス人に問いかける。
「そのはずです。我々に伝えられてる予言は、外れたことがありません。ですから、大丈夫です」
何が大丈夫なのかは分からないが、エルヴィラは頭を下げた。
「ありがとうございます、落ち着いたら行ってみます」
「どうぞ、ご幸運を」
その言葉を最後に、通信は終わった。
「いえいえ、こちらこそ。なにしろ移住先を見つけていただいたのです、あなたはネメイエスの恩人ですよ」
向こうも少しほっとしたのか、聞こえてくる声に、面白がるような雰囲気が混ざる。
「何より、あなたに感心しました。異星の政府相手に渡り合う度胸。状況を最大限に利用する機転。なかなか大したものです」
「え……」
それがほめ言葉だと気づいて、なぜかエルヴィラは恥ずかしくなった。
「その、あたし夢中で……」
相手側が笑い出す。
「なるほど、弱い立場ゆえの強さですか。羨ましい」
「そんな、たいしたものじゃないです」
言いながらエルヴィラは思う。こういう異星人と組めたなら、地球の将来も少しは上向くだろうと。
ネメイエス側が満足気に付け加えた。
「あなたへの報酬としての、第四惑星への着陸権と調査権は、既に許可を出してありますよ。いつでもどうぞただ……」
「ただ?」
この期に及んで言いよどむ相手に、エルヴィラは思わず訊き返した。
「何かあるんですか?」
「はい」
そう言って、ネメイエス人が言葉を続けた。
「実はあの惑星は、他星系の者は入れないのです」
「確かにそう伺いましたけど……?」
ネメイエス人でも入れない惑星。ましてや他星系人が、入れるわけがない。
ただ彼の言う〝入れない〟は、何か違う気がした。
「騙すようで申し訳ないのですが、他星系人が入ろうとすると、あの惑星は素通りしてしまうのです」
「え、じゃぁ……?!」
入れない、ということだろうか?
もしそうなら、契約の報酬はナシということになる。だがエルヴィラには、そうは思えなかった。対等を重んじるネメイエス人が、そんな騙し討ちをこの状況で、するとは思えないのだ。
そんなエルヴィラの感情を読み取ったのか、一拍置いて、ネメイエス人が話し始めた。
「これも予言になるのですが」
そう言い置いて話を続ける。例の予言には続きがあって、その者に代々伝えられた宝珠とともに口伝の場所を伝えよ、となっているのだと。
そうすれば、その者は宝珠を掲げて惑星へと降り、さらに仲間とともに飛んで謎を解き、閉ざされた道は開けるだろう、と。
「場所は座標ですので、今そちらへデータをお送りします。宝珠も今運ばせています」
なんだかややこしいことになってきた、そうエルヴィラは思ったが、口にはもちろん出さなかった。
「――おばさま、座標をいただきました。第四惑星上空と、ここから200光年ほど離れた場所の2つです」
イノーラの言葉を聞きながら、どっちもそんなに遠くないな、と思う。ただ行って帰ってくるだけなら、遠い方でさえ日帰りできる距離だ。
「ここへ、行けばいいんですね?」
画面の向こうのネメイエス人に問いかける。
「そのはずです。我々に伝えられてる予言は、外れたことがありません。ですから、大丈夫です」
何が大丈夫なのかは分からないが、エルヴィラは頭を下げた。
「ありがとうございます、落ち着いたら行ってみます」
「どうぞ、ご幸運を」
その言葉を最後に、通信は終わった。
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