38 / 51
2:あなたに惑星(ほし)の押し売りを
Episode:21
しおりを挟む
エルヴィラはペット時代もその後も、地球の情報を必死に集めてきたが、どれも最後はその結論だった。ならば、興味を示さないわけがない。
「ネメイエス側は、今言った条件で喜んで引き受けるとのことです。どうでしょうか?」
相手が考え込む。何かまた騙されるのではないかと、警戒しているのかもしれない。
「木星一つを850年間、でしたか。それで教育と技術……たしかに魅力ですが、見合うかどうか……」
要するに『それでは安い』と言いたいのだろう。
この辺がやはり地球人だな、とエルヴィラは思う。
銀河文明に直に接していないから仕方ないのかもしれないが、文明力の差を甘く見すぎだ。
しかも地球は、次代を担う優秀な子が次々と流出していて、発展どころか衰退の一途なのだ。
「私は、悪くないと思うんです。だってほら、あのソドム人ですよ?」
地球人なら、必ず反応する言葉を投げる。
案の定、相手も反応した。
「彼らが何か? 今回の相手は、ネメイエスという星では?」
訝しがるところを捕らえて、すかさず言う。
「ソドム人が地球に居座ってるのは、地球人が売れるからですよね?」
「ええ、それはもちろん」
相手が苦々しげに言う。地球人なら誰もがそうだろう。
だが今は、交渉をまとめるのが先だ。取り合っているヒマはない。
「ソドム人は地球人なら誰でも知るとおり、とんでもない守銭奴です。その彼らが、地球が発展して独り立ちするようなことを、許すと思いますか?」
相手がはっとした表情になった。
たぶん地球人は、気づかなかったのだろう。
ソドム人が未来永劫可能な限り、地球から奪い続けるつもりなことに。
宇宙へ出て交渉の場につけば、すぐに分かる。彼らがどれほどがめつく悪辣か。
何しろ些細な手違いから、最後は星を丸ごとソドム人の支配下にされた例は、そんなに珍しくないのだ。
けれど地球は、今まで奴隷だ人種差別だといろいろありながらも、少しずつ前へ進んできた。
だから遠い未来にはいつか、何とか出来ると思っていたのだろう。
「木星をネメイエスに貸し出すなら、これからの異星人との交渉はすべて、彼らに任せられます。さらに教育と技術が手に入るのなら、むしろお釣りがくるかと」
「そうですね……」
地球側が思案顔になる。この取引のメリットを、認識し始めたのだろう。
あと一押しと感じたエルヴィラは、最後のカードを切った。
「それから先ほど『オマケで地球の防御』と言ったのですが、意味はお分かりになりますか?」
説明していないのだから、分かるわけがない。だが動揺を誘うために、あえてこういう言い方をする。
「ネメイエス側は、今言った条件で喜んで引き受けるとのことです。どうでしょうか?」
相手が考え込む。何かまた騙されるのではないかと、警戒しているのかもしれない。
「木星一つを850年間、でしたか。それで教育と技術……たしかに魅力ですが、見合うかどうか……」
要するに『それでは安い』と言いたいのだろう。
この辺がやはり地球人だな、とエルヴィラは思う。
銀河文明に直に接していないから仕方ないのかもしれないが、文明力の差を甘く見すぎだ。
しかも地球は、次代を担う優秀な子が次々と流出していて、発展どころか衰退の一途なのだ。
「私は、悪くないと思うんです。だってほら、あのソドム人ですよ?」
地球人なら、必ず反応する言葉を投げる。
案の定、相手も反応した。
「彼らが何か? 今回の相手は、ネメイエスという星では?」
訝しがるところを捕らえて、すかさず言う。
「ソドム人が地球に居座ってるのは、地球人が売れるからですよね?」
「ええ、それはもちろん」
相手が苦々しげに言う。地球人なら誰もがそうだろう。
だが今は、交渉をまとめるのが先だ。取り合っているヒマはない。
「ソドム人は地球人なら誰でも知るとおり、とんでもない守銭奴です。その彼らが、地球が発展して独り立ちするようなことを、許すと思いますか?」
相手がはっとした表情になった。
たぶん地球人は、気づかなかったのだろう。
ソドム人が未来永劫可能な限り、地球から奪い続けるつもりなことに。
宇宙へ出て交渉の場につけば、すぐに分かる。彼らがどれほどがめつく悪辣か。
何しろ些細な手違いから、最後は星を丸ごとソドム人の支配下にされた例は、そんなに珍しくないのだ。
けれど地球は、今まで奴隷だ人種差別だといろいろありながらも、少しずつ前へ進んできた。
だから遠い未来にはいつか、何とか出来ると思っていたのだろう。
「木星をネメイエスに貸し出すなら、これからの異星人との交渉はすべて、彼らに任せられます。さらに教育と技術が手に入るのなら、むしろお釣りがくるかと」
「そうですね……」
地球側が思案顔になる。この取引のメリットを、認識し始めたのだろう。
あと一押しと感じたエルヴィラは、最後のカードを切った。
「それから先ほど『オマケで地球の防御』と言ったのですが、意味はお分かりになりますか?」
説明していないのだから、分かるわけがない。だが動揺を誘うために、あえてこういう言い方をする。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる