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2:あなたに惑星(ほし)の押し売りを

Episode:21

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 エルヴィラはペット時代もその後も、地球の情報を必死に集めてきたが、どれも最後はその結論だった。ならば、興味を示さないわけがない。

「ネメイエス側は、今言った条件で喜んで引き受けるとのことです。どうでしょうか?」

 相手が考え込む。何かまた騙されるのではないかと、警戒しているのかもしれない。

「木星一つを850年間、でしたか。それで教育と技術……たしかに魅力ですが、見合うかどうか……」

 要するに『それでは安い』と言いたいのだろう。

 この辺がやはり地球人だな、とエルヴィラは思う。
 銀河文明に直に接していないから仕方ないのかもしれないが、文明力の差を甘く見すぎだ。

 しかも地球は、次代を担う優秀な子が次々と流出していて、発展どころか衰退の一途なのだ。

「私は、悪くないと思うんです。だってほら、あのソドム人ですよ?」

 地球人なら、必ず反応する言葉を投げる。
 案の定、相手も反応した。

「彼らが何か? 今回の相手は、ネメイエスという星では?」

 訝しがるところを捕らえて、すかさず言う。

「ソドム人が地球に居座ってるのは、地球人が売れるからですよね?」
「ええ、それはもちろん」

 相手が苦々しげに言う。地球人なら誰もがそうだろう。
 だが今は、交渉をまとめるのが先だ。取り合っているヒマはない。

「ソドム人は地球人なら誰でも知るとおり、とんでもない守銭奴です。その彼らが、地球が発展して独り立ちするようなことを、許すと思いますか?」

 相手がはっとした表情になった。

 たぶん地球人は、気づかなかったのだろう。
 ソドム人が未来永劫可能な限り、地球から奪い続けるつもりなことに。

 宇宙へ出て交渉の場につけば、すぐに分かる。彼らがどれほどがめつく悪辣か。
 何しろ些細な手違いから、最後は星を丸ごとソドム人の支配下にされた例は、そんなに珍しくないのだ。

 けれど地球は、今まで奴隷だ人種差別だといろいろありながらも、少しずつ前へ進んできた。
 だから遠い未来にはいつか、何とか出来ると思っていたのだろう。

「木星をネメイエスに貸し出すなら、これからの異星人との交渉はすべて、彼らに任せられます。さらに教育と技術が手に入るのなら、むしろお釣りがくるかと」

「そうですね……」

 地球側が思案顔になる。この取引のメリットを、認識し始めたのだろう。
 あと一押しと感じたエルヴィラは、最後のカードを切った。

「それから先ほど『オマケで地球の防御』と言ったのですが、意味はお分かりになりますか?」

 説明していないのだから、分かるわけがない。だが動揺を誘うために、あえてこういう言い方をする。
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