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2:あなたに惑星(ほし)の押し売りを

Episode:16

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「さすがに個人で商売をされてきただけありますね。しっかりしていらっしゃる」

 向こうが苦笑――分かりづらいが、たぶんそうだろう――しながら続けた。

「私たち自身のためにも、防御はしなければなりません。そこに地球を含めるのは、もちろん構いませんよ」

 内心やったと思ったが、声には出さない。だがこれで、地球の壊滅は回避できるだろう。
 さらにしれっと、エルヴィラは言った。

「ご好意、感謝します。この内容で地球側に交渉します。それで、お願いがあるのですが……」
「何でしょう?」

 向こうが緊張を見せる。思う壺だ。
 エルヴィラは「やった」と想う気持ちを押し殺し、平静を装って言った。

「以前も言いましたが、私たちに特使の肩書きをいただけますか? さすがにこれがないと、いくら地球出身でも取り合ってもらえませんから」

 何か吹っかけられるかと警戒していたところへ当たり前すぎる要求を出されて、こんどこそ向こうが笑い出す。

「もちろんですよ。もう準備は出来ていますから、すぐにでも可能です」

 過信は禁物だが、なんとなく信頼関係が出来た気がする。これなら上手くやっていけそうだ。
 内心にこにこしているエルヴィラに、ネメイエス人が訊いてきた。

「ところで、そちらは報酬はよろしいのですか?」
「え?」

 予想外の言葉に、思わずおかしな声が出る。

「報酬って……でもまだ、成功してませんし」

 お人好しと言われそうだが、エルヴィラは仲介料をもらうつもりはなかった。

 例え結果がどうなるにせよ、尽力したという事実は残る。
 そしてそれがあれば、ネメイエスとは良好な関係が保てるから、商売もやり易い。

 それを仲介の報酬とするつもりだったのだ。
 だがネメイエス側は首を振った。

「それは我々の間では、許されざることです。悪意も善意も相応に返す、これがネメイエスの文化です。
 ですから何も返さず善意のみ受けたとあっては、政府の立場が危うくなってしまいます」

「なるほど……」

 これから大変なときなのに政府が国民の信頼を得ていなかったら、とんでもないことになる。

「地球の文化は違うのかもしれませんが、我々を助けると思って、何か要求してください」

 何にしよう、そう考えたとき、とあることが思いついた。

「あの、でしたら、第四惑星への着陸許可と調査権を!」

 宇宙蝶に連れられて来た、あの地球に似た惑星。
 地上に遺跡のあるあの星へ、降りてみたかった。

 とはいえ降りたくても、勝手には出来ない。
 ここは発生星系だから、管轄政府にお金を払って許可をもらわなくてはダメだ。

 それを、対価に欲しいと思った。

「あそこへですか? さすがですね」
「……へ?」

 またまた予想外の言葉に、エルヴィラは首をかしげる。
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