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2:あなたに惑星(ほし)の押し売りを

Episode:10

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「おばさま、この超新星爆発……洒落になりませんわ」

 よほど驚いたのか、銀河共通語ではなく地球の言葉になっている。

「そりゃそうでしょ。規模が規模だし、最大級の災害だもん」

 返すと、姪っ子は首を振った。

(どうしたんだろ?)

 いつもならここで盛大な毒舌が返ってくるはずなのに、それがない。

「どうかしたの、珍しい」
「珍しいとか言ってる場合じゃありません。この超新星爆発、地球にも影響が出ますよ!」
「――え?」

 慌ててデータを見直す。
 隣で姪っ子が、解説を始めた。

「爆発した星ですけど、地球でベテルギウスと称されている星です。距離はおよそ六百四十光年。この意味、お分かりになります?」
「分かったかも……」

 まだ地球に居たころ、学校で習った記憶がある。

 三ツ星で有名なオリオン座の右肩にある赤い星、ベテルギウス。
 何でも相当な年寄り星で、いつ爆発してもおかしくないと教科書には載っていた。

 それがついに、終わりを迎えたのだ。

「でもたしか、六百光年も離れてたら、ほとんど被害はないって教わったけど……」

 クラスでも騒ぎが起きたが、すぐに先生がそう説明してくれて、静まったのを覚えている。

「それはあくまでも、通常のガンマ線や爆風です。問題は、地球がガンマ線バーストの照射範囲内に入ってることですわ」
「なるほど……って、マジっ?! ガンマ線バーストじゃ、黒コゲじゃないっ!」

 超新星爆発のガンマ線バーストとなったら、核兵器どころではない量の放射線を、地球規模で浴びることになる。

 僅か十秒の照射でオゾン層をズタズタにする力があり、三葉虫などが大量死した原因も、数千光年離れた星からのガンマ線バーストだと言われている。

 そのときは地球上の七割だか八割だかの生物が滅びたらしいから、発生源がもっと近い今回は、当たった側の生物は即死かそれに近い状態、裏側でも放射線障害で数ヶ月のうちには死ぬという大災害になりそうだった。

「ヤバイよそれ、絶対ヤバイ」
「ええ。ただ到達するのは六百四十年先ですから、技術革新で防げるかもしれません。今から準備して、移住するという選択肢もありますし」

 淡々と姪っ子は言うが、その顔は沈んでいる。

 地球は自分たちを売ったとはいえ、ただ一つの故郷だ。
 それが壊滅的な被害を受けるとなれば、心穏やかでは居られないだろう。

 子供の頃見た、太陽系の図を思い出す。

 青い地球、赤い火星、縞模様の木星、巨大な輪を持つ土星。よく綺麗な円が並ぶ太陽系図を見ては、夜空を見上げていたものだ。

(……あれ?)

 一瞬、何かが引っかかった。
 円の並ぶ星系図。円を描く軌道。さっき話に出なかっただろうか。
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