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2:あなたに惑星(ほし)の押し売りを
Episode:07
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「あんまり安いとこだと、手抜き修理されかねないしなぁ。かといって大手は高いし、立会い認めてくれないし」
イノーラからの答えはない。聞こえているはずだが知らんふりだ。
交渉だけはエルヴィラのほうが上なので、口を出して言い負かされるのがイヤなのだろう。
エルヴィラ自身も、別に答えは期待していなかった。
何しろひねくれた姪っ子だ。黙っていてくれるなら、それに越したことはない。
だがいくつか選び出して連絡しようというところで、また通信が入った。
「どこから?」
「星系政府の外交部ですわね」
再び頭をひねる。そんな主要機関に話しかけられるほど、立派な自分たちではない。
「無視します?」
「出来るわけないでしょ。ともかく繋いで」
訝しがりながらも回線を開くと、合成音と合成映像とが現れた。
「そこまで合わせてくれなくても、構わないのに……」
生命体は多種多様だ。だから意思を伝える方法もまた、多岐にわたる。
地球人ならすぐ音や光を思いつくが、これさえ普遍的とは言い難い。
地球上でさえ、生物によって捉えられる波長が異なるのだ。
異星人ならなおさらで、予備知識なしにはコミュニケーションの取りようがない。
ただこのことは、銀河史のごくごく初期から死活問題だったため、今ではある程度のマニュアルが確立している。
それぞれの船や惑星は、自分たちが認識可能な交流手段の報告が義務付けられていて、それを元に交信が行われるのが常だった。
だがそれを考慮に入れても、相手に合わせた合成音声と映像は破格の待遇だ。
こちらは文字で済むのに、それ以上のことをしてくれている。
「よっぽど、お人好しの種族なのかなぁ?」
あっさり許可してくれたことといい、その線が否定できなくなってくる。
「それならそれで、いいのでは?」
「そりゃそうなんだけど」
口ではそう言いつつ、エルヴィラはまだ信じきれずにいた。
あのソドム人ほどでないにしろ、隙を見せたら喰われる厳しい世界が、銀河文明の一面でもあるのだ。
旨い話には裏がある、タダより高いものはない。
これを忘れて、生きていける世界ではない。
通信は挨拶のあと、簡単な自己紹介になった。まさに型どおりだ。
「私たちは地球人です。運良く銀河市民権を取る機会を得て、この通り旅をしています。この星系へは申請どおり、あの星間生物に運ばれてきました」
地球人ふうの合成映像は、黙って聞いているだけだ。そこから表情は読み取れない。
――まぁ実際の相手の映像を流されても、読み取れないだろうが。
何しろこのネメイエス人、雷が荒れ狂う空で生まれた、オーロラのような生き物だ。
どこからどこまでが本人なのかさえ、大抵の異星人には判別出来ない。
イノーラからの答えはない。聞こえているはずだが知らんふりだ。
交渉だけはエルヴィラのほうが上なので、口を出して言い負かされるのがイヤなのだろう。
エルヴィラ自身も、別に答えは期待していなかった。
何しろひねくれた姪っ子だ。黙っていてくれるなら、それに越したことはない。
だがいくつか選び出して連絡しようというところで、また通信が入った。
「どこから?」
「星系政府の外交部ですわね」
再び頭をひねる。そんな主要機関に話しかけられるほど、立派な自分たちではない。
「無視します?」
「出来るわけないでしょ。ともかく繋いで」
訝しがりながらも回線を開くと、合成音と合成映像とが現れた。
「そこまで合わせてくれなくても、構わないのに……」
生命体は多種多様だ。だから意思を伝える方法もまた、多岐にわたる。
地球人ならすぐ音や光を思いつくが、これさえ普遍的とは言い難い。
地球上でさえ、生物によって捉えられる波長が異なるのだ。
異星人ならなおさらで、予備知識なしにはコミュニケーションの取りようがない。
ただこのことは、銀河史のごくごく初期から死活問題だったため、今ではある程度のマニュアルが確立している。
それぞれの船や惑星は、自分たちが認識可能な交流手段の報告が義務付けられていて、それを元に交信が行われるのが常だった。
だがそれを考慮に入れても、相手に合わせた合成音声と映像は破格の待遇だ。
こちらは文字で済むのに、それ以上のことをしてくれている。
「よっぽど、お人好しの種族なのかなぁ?」
あっさり許可してくれたことといい、その線が否定できなくなってくる。
「それならそれで、いいのでは?」
「そりゃそうなんだけど」
口ではそう言いつつ、エルヴィラはまだ信じきれずにいた。
あのソドム人ほどでないにしろ、隙を見せたら喰われる厳しい世界が、銀河文明の一面でもあるのだ。
旨い話には裏がある、タダより高いものはない。
これを忘れて、生きていける世界ではない。
通信は挨拶のあと、簡単な自己紹介になった。まさに型どおりだ。
「私たちは地球人です。運良く銀河市民権を取る機会を得て、この通り旅をしています。この星系へは申請どおり、あの星間生物に運ばれてきました」
地球人ふうの合成映像は、黙って聞いているだけだ。そこから表情は読み取れない。
――まぁ実際の相手の映像を流されても、読み取れないだろうが。
何しろこのネメイエス人、雷が荒れ狂う空で生まれた、オーロラのような生き物だ。
どこからどこまでが本人なのかさえ、大抵の異星人には判別出来ない。
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