上 下
17 / 51
1:世話焼き飛行は損の元?!

Episode:17

しおりを挟む
 目の前の惑星へ連れて行きたい彼らと、ありがた迷惑な自分たち。
 どちらも悪意はないだけに、伝わらないことがもどかしい。

 なにか少しでも……そう必死に考えるうち、思い至った。

 宇宙蝶は、銀河文明の標準的な救助信号によく反応する。
 これはつまり、信号の意味が分かっているということだろう。

 ――だとしたら。

 ダメ元で、信号を出してみる。
 ごく短い、単純な信号。銀河系では救助信号以上によく使われるもので、意味は「ありがとう」だ。「おばさま?」

 不審に思ったらしいイノーラが訊いてきたが、エルヴィラは答えなかった。
 宇宙蝶たちに、目を奪われていたのだ。

 瞬きながら乱舞を始める、宇宙蝶たち。
 漆黒の闇の中、地球に良く似た蒼い星を背景に踊るさまは、幻想的で神秘的だ。

 その彼らが、口々に答えている。
 たくさんの光が、たくさんの「ありがとう」を形作る。

「通じた……」

 やはり彼らは以前、銀河文明のどこかの星と交流があったのだ。
 だがそれはいつの間にか忘れ去られてしまい、たまに出会う見知らぬ存在同士でしかなくなってしまったのだろう。

「……あの惑星、もしかすると昔、彼らと交流があったのかもしれませんわね」

 目の前の蒼い星に、姪っ子がそんなことを言う。

 ああそうか、とエルヴィラも思った。
 だから彼らは、ここへ自分たちを連れてきたのだ。

 データを見るかぎり、惑星は今は無人だ。
 だがかつて文明があったようで、数々の遺跡があるとなっている。

「あとで降りてみようか」
「ええ」

 珍しく毒舌応酬なしに、エルヴィラとイノーラの意見が一致した。
 外ではまだ、宇宙蝶たちが乱舞している。

「これも……通じるかな?」

 そんなことをつい口にしながら、エルヴィラは別の信号を送った。

 銀河系で「ありがとう」と並んでもっともよく使われるもので、意味は「幸運を」。
 危険な宇宙を旅する者たちの、標準的な別れの挨拶だ。

 宇宙蝶たちも、すぐに返してきた。
「ありがとう」「幸運を」それが何度も何度も続く。

 やがて気が済んだのか、彼らは一ヶ所に集まり……輪を描いてから消えた。どこかへ跳んだのだろう。
 あとには何事もなかったかのように、暗い宇宙が広がるばかりだ。

「……ここの管轄政府に、手続きしなくちゃね」
「そうですわね」

 しばらく虚空を見つめたあと、二人は中継ステーションに向かうため、船を動かした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...