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1:世話焼き飛行は損の元?!

Episode:16

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 近づいてきた宇宙蝶たちは、最初は複雑な明滅を繰り返していた。
 おそらく、会話できると思ったのだろう。

 だがすぐ、こちらが例の二パターンしか返せないことに気づいたようだ。
 何度か片方のパターンを微妙に変えて発した後、船の周囲を取り囲んだ。次いで全方位モニターに線が描かれる。

「これ、何?」
「このくらい、ご自分で判別できるようになってくださいな。モニターが精神波を視覚化したものですわ」

 なるほどと思いながら、周囲に視線をめぐらす。

 どうやら精神波は、宇宙蝶同士をつないでいるようだ。
 それがさらに複雑に伸びていって、網の目のようになったところで、蝶たちが光り始めた。

「この生物は、こうやって一斉に超光速飛行をするんですわね」

 感慨深げに言う姪っ子の隣で、エルヴィラは慌てて操作する。

「大変、カメラカメラっ!」

 観測用カメラはまだ外へ出したままだから、急いで回収しないと置き去りになってしまう。
 いくら中古とはいえ、安くははないのだ。
 ボロ船をやっと買った身分には、余計な出費は辛い。

 どうにかカメラを回収したところで、宇宙蝶たちが光を増した。

「次元波を確認、瞬間移動します」

 イノーラの言葉と同時に、軽いめまいを覚える。が、それだけだった。

「ホントに移動、したの?」
「現在確認中……座標出ました。先程の場所よりおよそ四万五千光年移動、ネメイエス星系第四惑星軌道上です」
「よ、四万五千光年?」

 驚いて銀河系図を見ると正反対とまでは言わないが、相当離れた位置へ来てしまっている。

「帰り、どうしよう……」

 思わず口を突いて出たのは、そんな言葉だった。

 いくら超高速飛行が当たり前とはいえ、超長距離となれば時間も費用もバカにならないのだ。
 慣れたベニト星系まで、これではいつ帰れるか見当もつかなかった。

 イノーラのほうは、全く別のことに気を取られているようだ。

「なぜこの星系なんでしょう……? もっと近い場所に、似たような惑星は幾らでもあったはずですのに」

 わざわざこんな遠くへ連れてきたことに、納得が行かないらしい。

 当の宇宙蝶たちはまだこの船を運んでいる。
 どうも目の前の第四惑星に船を降ろす気らしい。

(ちょっとそれは困るなぁ……)

 大気圏突入は出来ないことはないが、何かと面倒だ。
 ましてやこんな形で強引にだと、船が破損しかねない。

「ごめんね、せっかく連れて来てくれたのに」

 謝りながら反物質エンジンを点火し、逆方向へほんの少し加速する。

 無重力で暮らすがゆえに、力の変動には敏感なのだろう。
 宇宙蝶たちが驚いたように瞬き停止した。
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