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第11話 虚像の護衛
儀式 Episode:02
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「なら、その国がどうやって出来たかは知っているか?」
「え……?」
ナティエスが答えに詰まる。
答えたのは、イマドだった。
「お告げもらったメルヒオル公が立ち上がって、そこにあった前の国を滅ぼして作った、ってやつですよね。
ついでに親に監禁されてた、前の国の姫さん助け出して妃にして」
「ほう、よく知ってるな」
殿下の声に、驚きが混ざる。
「俺、アヴァンに親戚いるんで」
「なるほど、いちおう我が国の者だったのか」
殿下のイマドへの視線が、目に見えて変わった。
同じ国の人間っていうのは、かなり大事なことらしい。シュマーにはない感覚だ。
「お告げで国作ったり滅ぼしたりって、どうかと思うけどなぁ」
ナティエスの歯に衣着せぬ感想に、殿下が苦笑する。
「まぁその辺の是非はさておいて、その開祖のメルヒオル公だが、竜を従えていたと伝えられていてな」
「あ、それで……」
やっと儀式の意味が分かる。
アヴァンの建国王がそうだったから、子孫も継承権を主張するために、それに倣ったんだろう。
「先祖のせいで迷惑だとも思うが、まぁ仕方あるまい。本当に竜と戦って死者が出ていた昔を思えば、格段に楽な話だしな」
なんだかよく分からないけど、伝統というのは、いろいろ難しいらしい。
そんな話をしてるうちに、車が速度を落とした。
ところどころに黄色くなった木々の混じった、山と谷とが迫ってくる。
頂上のほうはもう、雪が降ってるみたいだ。
「この先揺れますので、お気をつけください」
「あ、はい」
運転手さんが忠告してくれる。
その言葉通り川の見える谷間の道を、かなり揺られながら行く。ヘタに喋ると、舌を噛みそうだ。
そして少し開けた場所で、車が止まった。
「殿下、お送りできるのはここまでになりますが」
「分かっている」
どうやらここから、例の「儀式」とやらになるみたいだ。
谷の奥に視線をやると、少し先に一対の、竜の石像が乗った柱があった。あそこが入り口になるらしい。
「荷物を降ろしますので、今しばらくお待ちを」
「分かった、待とう」
そうやっている殿下の姿が、写影に収められる。きっと公式の何かに使うんだろう。
「あぁ、そこの者たちは写すなよ。何かと面倒だ」
これはありがたかった。殿下いつの間にか、こういうことにも考えが及ぶようになったらしい。
「え……?」
ナティエスが答えに詰まる。
答えたのは、イマドだった。
「お告げもらったメルヒオル公が立ち上がって、そこにあった前の国を滅ぼして作った、ってやつですよね。
ついでに親に監禁されてた、前の国の姫さん助け出して妃にして」
「ほう、よく知ってるな」
殿下の声に、驚きが混ざる。
「俺、アヴァンに親戚いるんで」
「なるほど、いちおう我が国の者だったのか」
殿下のイマドへの視線が、目に見えて変わった。
同じ国の人間っていうのは、かなり大事なことらしい。シュマーにはない感覚だ。
「お告げで国作ったり滅ぼしたりって、どうかと思うけどなぁ」
ナティエスの歯に衣着せぬ感想に、殿下が苦笑する。
「まぁその辺の是非はさておいて、その開祖のメルヒオル公だが、竜を従えていたと伝えられていてな」
「あ、それで……」
やっと儀式の意味が分かる。
アヴァンの建国王がそうだったから、子孫も継承権を主張するために、それに倣ったんだろう。
「先祖のせいで迷惑だとも思うが、まぁ仕方あるまい。本当に竜と戦って死者が出ていた昔を思えば、格段に楽な話だしな」
なんだかよく分からないけど、伝統というのは、いろいろ難しいらしい。
そんな話をしてるうちに、車が速度を落とした。
ところどころに黄色くなった木々の混じった、山と谷とが迫ってくる。
頂上のほうはもう、雪が降ってるみたいだ。
「この先揺れますので、お気をつけください」
「あ、はい」
運転手さんが忠告してくれる。
その言葉通り川の見える谷間の道を、かなり揺られながら行く。ヘタに喋ると、舌を噛みそうだ。
そして少し開けた場所で、車が止まった。
「殿下、お送りできるのはここまでになりますが」
「分かっている」
どうやらここから、例の「儀式」とやらになるみたいだ。
谷の奥に視線をやると、少し先に一対の、竜の石像が乗った柱があった。あそこが入り口になるらしい。
「荷物を降ろしますので、今しばらくお待ちを」
「分かった、待とう」
そうやっている殿下の姿が、写影に収められる。きっと公式の何かに使うんだろう。
「あぁ、そこの者たちは写すなよ。何かと面倒だ」
これはありがたかった。殿下いつの間にか、こういうことにも考えが及ぶようになったらしい。
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