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第11話 虚像の護衛
依頼 Episode:07
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「向こうとの交渉ごとや野営の準備は、今回はこちらでするわ。あなたたちにやれといっても、まだムリでしょうしね。
他にこちらから持っていく必要がありそうなものは、ここにリストアップしておいたから、各自チェックして申告なさい」
先輩が言いながら、紙を配る。
ざっと目を通すと、要するに武器弾薬といった、個人差の大きいものだった。
「今日のところは、これで解散よ。
部屋に帰って、必要と思われるものを今のうちに準備しておくこと。何か疑問点があったら、すぐに私に言うのよ。いいわね?」
「はい」
最後に釘を刺されて、おしまいになる。
「それにしても、殿下といっしょか。なんもないといいんだけどね」
「あ、それ言えてるかも」
作戦質を出て廊下を歩きながら、またその話になった。
「つかさ、マジで何なんだよそれ。その殿下っての、よっぽどアレなのか?」
「んー、アレっていうか……上手く言えないなぁ」
言いながらもシーモアとナティエスが、去年のことをかいつまんで、イマドに説明する。
「……それ、すげーヤなヤツって言わねぇか?」
「うん」
あっさりとナティエスが肯定した。
「そんなんと一緒って、なんか冗談じゃねぇな」
「ごめん……」
イマドたちの名前を挙げなければよかったと、心底後悔する。
あたしはこのほうがいいけど……そのせいで、みんなが嫌な思いをするのは間違いない。
「その、あたし……先輩に、断るから……」
「え?」
聞き返される。
たしかに自分でも、これじゃ何を言ってるのか分からないと思った。
頑張って、もっとちゃんと言わないとダメだろう。
「えっと、だからあたし、イオニア先輩に……みんなが、行かないって」
「あはは、ルーフェがまた言い出した~」
なぜか笑われた。
「本気にすることないってば。
そりゃ殿下はアレだけど、言ったでしょ? 行かないなんて言ってないじゃない」
「でも……」
こんなに何度も出るんだから、かなりイヤなんじゃないだろうか。
そんなあたしへシーモアが、やっぱり笑いながら説明してくれた。
「そりゃ、殿下はね。そもそもあたしらと違う世界の住人だから、どうやったって合わないさ。
でもまぁ、それはそれ。任務に行くこと自体は面白いし、だいいちこんな機会、逃す手はないよ」
「そうそう。傭兵隊にも入ってないのに任務とか、ぜったいって言っていいくらいないもの」
「あ……」
そういうことかと、やっと納得する。たしかにあたしたちの学年で任務なんて、ふつうはあり得ない。
他にこちらから持っていく必要がありそうなものは、ここにリストアップしておいたから、各自チェックして申告なさい」
先輩が言いながら、紙を配る。
ざっと目を通すと、要するに武器弾薬といった、個人差の大きいものだった。
「今日のところは、これで解散よ。
部屋に帰って、必要と思われるものを今のうちに準備しておくこと。何か疑問点があったら、すぐに私に言うのよ。いいわね?」
「はい」
最後に釘を刺されて、おしまいになる。
「それにしても、殿下といっしょか。なんもないといいんだけどね」
「あ、それ言えてるかも」
作戦質を出て廊下を歩きながら、またその話になった。
「つかさ、マジで何なんだよそれ。その殿下っての、よっぽどアレなのか?」
「んー、アレっていうか……上手く言えないなぁ」
言いながらもシーモアとナティエスが、去年のことをかいつまんで、イマドに説明する。
「……それ、すげーヤなヤツって言わねぇか?」
「うん」
あっさりとナティエスが肯定した。
「そんなんと一緒って、なんか冗談じゃねぇな」
「ごめん……」
イマドたちの名前を挙げなければよかったと、心底後悔する。
あたしはこのほうがいいけど……そのせいで、みんなが嫌な思いをするのは間違いない。
「その、あたし……先輩に、断るから……」
「え?」
聞き返される。
たしかに自分でも、これじゃ何を言ってるのか分からないと思った。
頑張って、もっとちゃんと言わないとダメだろう。
「えっと、だからあたし、イオニア先輩に……みんなが、行かないって」
「あはは、ルーフェがまた言い出した~」
なぜか笑われた。
「本気にすることないってば。
そりゃ殿下はアレだけど、言ったでしょ? 行かないなんて言ってないじゃない」
「でも……」
こんなに何度も出るんだから、かなりイヤなんじゃないだろうか。
そんなあたしへシーモアが、やっぱり笑いながら説明してくれた。
「そりゃ、殿下はね。そもそもあたしらと違う世界の住人だから、どうやったって合わないさ。
でもまぁ、それはそれ。任務に行くこと自体は面白いし、だいいちこんな機会、逃す手はないよ」
「そうそう。傭兵隊にも入ってないのに任務とか、ぜったいって言っていいくらいないもの」
「あ……」
そういうことかと、やっと納得する。たしかにあたしたちの学年で任務なんて、ふつうはあり得ない。
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