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第11話 虚像の護衛

依頼 Episode:01

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 ◇Rufeir

「えっと、ここまでなんだ……」

 メモを片手に、教科書をひとつづつ見ていく。

 確かめていたのは、試験の範囲だ。
 最初来た頃は想像もしなかったけど、シエラは思ってたより試験が多い。年に五回もやってる。

 ともかくこの準備がけっこう大変で、時間がとられてしかたがなかった。
 時計を気にしながら、急いでやっていく。早くしないと、自主訓練に行く時間がなくなりそうだ。

 そのとき。

『ルーフェイア=グレイス、至急作戦室へ。すぐに来られない場合は、理由を即刻連絡してください』
「え、あ、はい、すぐ行きます!」

 通話石から聞こえた声に、慌てて答えて教科書を閉じる。

 ――今日は訓練、ダメかも。

 ただでさえ試験範囲の確認でもたもたしていたのに、そこへ呼び出しまでされたら、訓練島へ行く時間はなさそうだ。
 同室のナティエス――ロア先輩は上級隊に入って個室へ移った――に書き置きをして、部屋を出る。

 何で呼ばれたのかは、見当もつかなかった。
 そもそも作戦室に、あたしの学年で呼ばれること自体が珍しい。

 作戦室はその名のとおり傭兵隊、特に上級隊の先輩たちと教官が使うところで、任務の作戦立案をしたり指揮を取ったりする部屋だ。

 だからあたしなんて、入るどころか近寄ることさえない。
 それどころか傭兵隊の先輩だって、しょっちゅうは行かないだろう。

 シエラの上級隊は、軍で言う士官の役もこなす。
 この間の病院テロはその典型で、上級隊の指揮で、一般兵に当たる傭兵隊が動いた。

 といってもふだんの派遣は人数が少ないことが多いから、上級でなくても学院からの指名で行くのだけど……。

 寮からしばらく歩いて、ちょうど反対側の管理棟まで行く。作戦室はここの一階だ。
 おそるおそるドアをノックすると、中から声がした。

「誰なの? ちゃんと名乗りなさい」
「す、すみません! あの、ルーフェイア=グレイスです……」
「あら、あなただったの。入っていいわよ」

 促されて、入る。中に居たのは、春のテロ騒ぎのときのイオニア先輩と、ロア先輩だった。

「えっと、あの……」

 イオニア先輩は、ちょっと苦手だった。いつも抱きしめてくれて優しいのだけど……独特の威圧感がある。
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