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第10話 空(うつほ)なる真実

そして、学院にて Episode:02

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 いつも使っている、森の奥に着く。
 ここは丘の影になっていることもあって、ほとんど人は来ない。

 ――イマドが授業をサボって、寝ていたことがあったが。

 とはいえそのくらいで、滅多に人は見かけなかった。

(さて……)

 一旦身長ほどの両手剣を置いて、身体をほぐしにかかる。
 が、その動きが途中で止まった。

 ともかく眠い。
 元から訓練を終えたら仮眠するつもりだったが、逆にしたほうが良さそうだ。

 まだ暑い日差しを避け、木陰へ座り込む。
 またシルファのことが、脳裏をよぎった。

(帰ってこないかもしれませんね……)

 トラウマにあえて触った結果、あの取り乱しようだ。
 かなりのショックを受けたのだろう。

 用意していたシルファへのプレゼント――もう誕生日は過ぎた――も、無駄になりそうだ。

 ただ彼女の行く末は、心配していなかった。

 シュマーの象徴的存在で、まさに君臨する立場のルーフェイア。
 そしてその母で、実質的な統治者のカレアナ。

 シルファはその二人がバックに着いた状態で、シュマーの施設に居るのだ。
 逆らって手を出す輩がいるとは思えない。ある意味、学院に居るより安全だろう。

 加えてカレアナは、あのとおりのおせっかいだ。
 シルファに何かあれば、全力で面倒を見るに違いない。

(まぁあのシュマーの総領も、利用されていることには気づいているでしょうが)

 それでもなお面倒を見る姿勢には、呆れるしかなかった。
 とはいえ有用なのは確かだし、だからこそあれほどのことを言えたのだ。

 この件を機に、シルファが学院から離れた道を選ぶのも、いいだろうと思う。
 その場合、シルファとはこれきりになるかもしれないが、それも構わなかった。

 だがそういった思いの奥に、もっと昏く歪んだものがあることにも、タシュアは気づいていた。

 ――これで潰れるなら、その程度のこと、と。

 こちらが常軌を逸した状態にあるのは、シルファも分かっているのだ。

 それでもなお、自身のトラウマを埋める代償行為として関わり続けるのは、自滅の道でしかない。
 なにしろこちらは、傷つけ、壊し、滅ぼすことしか出来ないのだから。

 恐れ、慄き、怯え。

 学院に入学してから、自分に向けられた視線。
 誰もが自分に向けて、同じ言葉を言った。

「狂っている」と。
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