714 / 743
第10話 空(うつほ)なる真実
そして、学院にて Episode:01
しおりを挟む
◇Tasha side
学院に戻ってから、すでに10日近く。
タシュアは連日、旅先から集めてきた資料を元に、調査に没頭する日々だった。
とはいえ授業その他は通常通りあるし、自主訓練も手を抜くわけには行かない。
そのため睡眠時間を削って、時間を作り出している状態だ。
今日は新学期が始まってから初めての休日で、タシュアは少しでも調査を進めようと、朝からかかりきりだった。
だがずっと徹夜に近いせいだろう、どうにも進まず一旦切り上げる。
昼には少し早い食堂は、まだ空いていた。
さっさと食事を取ってきて、適当な席に座る。
いつもと同じ、高級料理店のようには手が込んでいないが、素朴で温かみのある味。
だがデザートは、物足りなかった。
食堂のものも十分美味しいのだが、シルファの作ったもののほうが、タシュアには好みだ。
シルファはまだ、帰ってきていなかった。
先日ルーフェイアから聞いた話では、状態もあまり思わしくないようだ。
恐らくは精神的なものが原因だろうが……ともかく、帰れるような状況ではないらしい。
(何も言わず、待つべきだったのですかね)
最初出会った頃は何に怯えているのかと思うほど、自信がなさそうだったシルファ。
けれどいつの間にか、それは薄れていった。
実力をつけるにつれ、自信もつけたのだろう。
だとすれば、何も言う必要などなかったのかもしれない。
あのまま待っていれば、そのうちトラウマも克服できたのかもしれない。
ただ、自分の性格からすると、言わずに済ますことができたかどうか。
(無理でしょうね……)
最後に残った飲み物に口をつけながら、思う。
そもそもが、居る学校が学校だ。
何が起こるか分からない。そして危険が分かっていながら対処しないのは、自分にはできない相談だった。
空になった皿を所定の位置に片付け、食堂を後にする。
午後からは、少し身体を動かすつもりだった。
自主訓練は日課だし、何より全く動かないと、かえって身体が辛い。
校舎を抜け、島内の森へと足を向ける。
訓練施設へ行くつもりはなかった。
あそこに居る敵は弱いものばかりで、タシュアほどのレベルになると全く相手にならない。
しかも狭うえに他の生徒も多くて、存分に訓練など無理だった。
学院に戻ってから、すでに10日近く。
タシュアは連日、旅先から集めてきた資料を元に、調査に没頭する日々だった。
とはいえ授業その他は通常通りあるし、自主訓練も手を抜くわけには行かない。
そのため睡眠時間を削って、時間を作り出している状態だ。
今日は新学期が始まってから初めての休日で、タシュアは少しでも調査を進めようと、朝からかかりきりだった。
だがずっと徹夜に近いせいだろう、どうにも進まず一旦切り上げる。
昼には少し早い食堂は、まだ空いていた。
さっさと食事を取ってきて、適当な席に座る。
いつもと同じ、高級料理店のようには手が込んでいないが、素朴で温かみのある味。
だがデザートは、物足りなかった。
食堂のものも十分美味しいのだが、シルファの作ったもののほうが、タシュアには好みだ。
シルファはまだ、帰ってきていなかった。
先日ルーフェイアから聞いた話では、状態もあまり思わしくないようだ。
恐らくは精神的なものが原因だろうが……ともかく、帰れるような状況ではないらしい。
(何も言わず、待つべきだったのですかね)
最初出会った頃は何に怯えているのかと思うほど、自信がなさそうだったシルファ。
けれどいつの間にか、それは薄れていった。
実力をつけるにつれ、自信もつけたのだろう。
だとすれば、何も言う必要などなかったのかもしれない。
あのまま待っていれば、そのうちトラウマも克服できたのかもしれない。
ただ、自分の性格からすると、言わずに済ますことができたかどうか。
(無理でしょうね……)
最後に残った飲み物に口をつけながら、思う。
そもそもが、居る学校が学校だ。
何が起こるか分からない。そして危険が分かっていながら対処しないのは、自分にはできない相談だった。
空になった皿を所定の位置に片付け、食堂を後にする。
午後からは、少し身体を動かすつもりだった。
自主訓練は日課だし、何より全く動かないと、かえって身体が辛い。
校舎を抜け、島内の森へと足を向ける。
訓練施設へ行くつもりはなかった。
あそこに居る敵は弱いものばかりで、タシュアほどのレベルになると全く相手にならない。
しかも狭うえに他の生徒も多くて、存分に訓練など無理だった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!
naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』
シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。
そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─
「うふふ、計画通りですわ♪」
いなかった。
これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である!
最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる