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第10話 空(うつほ)なる真実

閑話休題、孤島にて Episode:15

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「最初に、二点あると言いましたが」
「そうだったか……?」

 言われてみれば、そんな気はする。
 だが他の事――なにしろ私の部屋へ押しかけてきたのだ――を考えたりしていて、よく覚えていなかった。

「まったく。上級隊がそれでは、命が幾つあっても足りませんよ。それで、二点目なのですが」

 突っ込んだあと一旦言葉を切って、タシュアがまっすぐ私を見た。

 真剣な紅い瞳に、なぜかどきりとする。
 もしかしたら、そんなことを考える。

「シルファ、私が死んだら、あなたはどうします?」
「――え?」

 予想もしなかった言葉に、すべてが止まった気がした。
 言われていること自体は分かる。だが、理解できない。

 タシュアが――死ぬ?

「そんなこと……」

 あるわけがない。
 私が死ぬならともかく、タシュアが死ぬなんてあり得ない。

「……冗談……だろう?」

 多分私は、笑い飛ばそうとしたのだと思う。
 けれど表情は、意志に反して固まったままだった。

「冗談で済めばよいのですけどね」

 ほんの少し、タシュアが哀しげな顔をする。

「無いとは言えませんよ。なにしろ、傭兵として任務に出る身ですから。予想外のことは、いつでも起こり得ます」

 畳み掛けるように続く言葉。

「そのとき、あなたは立ち直れますか?」
「……」

 答えられるわけがなかった。

 ――タシュアが、居なくなる。

 そうしたら私は、また独りになってしまう。
 やっと見つけた居場所が、なくなってしまう。

「いや、だ……」

 呼び起こされる記憶に、手足が冷たくなってくる。
 血の気が引いていくのが、自分でも分かる。

「独りは、いやだ……」

 ありありと思い出す。
 楽しそうな話し声を、壁越しに聞いていた日々を。

 暗い部屋の中、ひざを抱えて、聞き耳だけを立てていた。
 本当は中に入れてもらって、一緒に話をしたかった。
 手の触れる場所に、誰かに居て欲しかった。

 けれどそれを口にするのは、家から追い出されることを意味していて……。

「置いて……行かないでくれ……」

 怖くて涙がこぼれる。
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